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オペラ座のクリスティーヌの成長録

10月23日、劇団四季の浜松町最寄りの秋劇場がリニューアルオープン!先日、新しい劇場のこけら落とし公演「オペラ座の怪人」を観劇してきた。

●私の怪人歴
映画版何度か視聴(何度も)
ロンドン公演観劇(2019年)
城田優「ファントム」(2019年)
宝塚版「ファントム」(オペラと違うけど過去全公演映像視聴済)

今回の劇団四季版の怪人とは、初めての対面だった。
歌の実力者が集う印象があった四季カンパニーは、さすがの歌のうまさで、しびれました。そのせいだろうか、ストーリーも歌も、頭に入っているはずなのに、観劇後にいつも湧き上がってくる複雑な感情は、いつにも増して強く。いつもなら、怪人の気持ちに入り込んで涙崩壊で終わっていたが、今回はクリスティーヌの変化にも視点が追加され、自分の中の「オペラ座の怪人」の作品により深さが増しました。

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父親に憧れる「少女」

序盤、クリスティーヌは少女だ。
物語が大きく進展開始するのは、オペラ座のコーラガールに過ぎなかった クリスティーヌが、主役の代役に抜擢されて、ステージを大成功させるところから。(詳しくは☞四季版あらすじ)その後、実は自分に音楽を教えてくれていた、怪人ファントムと初めて対面する。仮面をつけた謎の男に、手と気持ちをひかれながら、地下室へとたどり着く。意外と行動派の女の子なのだ。

好奇心旺盛で、なんでもついていってしまう
恐れも知らず、他人の仮面をガバッととっちゃう
そんな行動に、無垢な少女らしさを感じた。

素顔も名前も分からないが、歌は上手いし、教えてくれるし、ステージに立つことを無条件に応援してくれる、そんな怪人ファントムに心が惹かれていくのは、どこかに庇護愛を求めていたからだと思う。幼くして、父親を亡くしたクリスティーヌは、愛する=誰かに庇護される という意識があったんじゃないか。

クリスティーヌは、幼いころに父親を亡くしている。「私が死んだら、音楽の天使をそばにおくる」という父の言葉を信じ、怪人ファントムを「音楽の天使」と親しみ呼ぶことからも、父への愛の深さをなんとなく知れる。


「人を愛する」自立した女性へ

劇中、クリスティーヌは、幼馴染のラウルと恋に落ちる。その様子を見た怪人ファントムは激高し、物語終盤へ。

騒ぎを起こして、ラウルが自分を選ぶように攻め寄るファントム。「母にも嫌いぬかれて、マスクで醜さ隠され・・・」同情を誘うファントムに対して、クリスティーヌは「醜さは顔にはないわ。汚れは心の中よ。」と言ってキスをする。

父がおくってくれた「音楽の天使」と信じきっていて、慕っていたファントムに対して、真っ向から「NO」を突き付けるのである。クリスティーヌにはきっとどこかに、庇護されたい、守られたい―と心のどこかにそんな思いがあった中に出会ったファントム。だからこそ盲目に「音楽の天使」と言っていたのかもしれないな、なんて思うのです。そんなクリスティーヌが、ラウルから恋人としての愛情を知って、彼女は変わった。

最後の彼女のキスには、自分がラウルから知った感情を知らない、身勝手な愛しか知らないファントムへの同情と、クリスティーヌなりの愛が含まれていた。ちょっと大げさかもしれないが、物語の一連の事件を通して、クリスティーヌは少女から大人の女性に近づいたのではないだろうか、と私は思う。

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知っている作品も、演者や自分自身の状況によって、自分の中に生まれる感情は異なる。だから何度も見たくなるんだよな、面白いんだよなと実感しました。劇団四季のオペラ座の怪人も、別キャストでまた観ようかな―と思ったらちょうど、今週からファントムが役替わりタイミングだった。しばらく公演するようなので、時期をみてまた必ず観劇したい。

クリスティーヌも怪人も、とびきり歌が上手くないと物語が成立しない、ミュージカル。ほんとうに劇団四季のオペラ座の怪人は凄いんだよ。


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