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サンタクロースは本当にいる その①【鉄道少年コウノスケ】

 目指せスーパースター。蕎麦宗です。

 ハロウィン全盛となった令和であっても、クリスマスが近づいてきてウキウキするのは子供だけでないだろう。むしろバブル期を過ごした大人たちの方が、未だにあの浮かれ気分のノスタルジーに浸る日なのかもしれない。JR東海のCMのように、新幹線と深津絵里の笑顔とともに山下達郎のあの名曲が流れれば、誰しもが恋する季節にタイムスリップするに違いない。

 が、しかし、そんな商業的な匂いを纏わない、もっと家庭的でファンタジックな行事ですら、随分と前から

「今時の子はサンタなんて信じてないし正体は親だって知ってるよ」

ってほとんどの人は言うだろうし、僕もそう思っていた。しかし、だ。

『…サンタクロースは本当にいる』。

正確には『サンタクロースは在る』と行った方が良いかもしれない。不惑を過ぎて半ばになった僕はその真実に気付き、サンタクロースの存在を知ってしまったのが2015年の12月25日。その想い出を綴りたいと思い、まず手始めに紹介しておきたいのが若き友人の《コウノスケ》だ。

 コウノスケは友人の芸術家姉妹のお姉さんの方の長男で、子供時分より時折東京から母子で帰省した際に、よく蕎麦宗に立ち寄ってくれていた。

「お前いくつの時から電車好きなの?」

と聞くと「産まれた時から」と答えるくらいな『鉄っちゃん』つまり鉄道オタクだ。

 僕も鉄道はかなり好きなので、彼が幼少期の頃には自分が知っている僅かな『鉄』の知識をひけらかして、おかげで彼からは鉄道の先生として尊敬されていた。しかしながら*鉄分の違いから、コウノスケの鉄道に関する見識に、追いつかれ追い抜かれるのは時間の問題で、あっという間だった。
 一例を挙げれば、彼が幼稚園児だった頃、*山手線の全部の駅名を覚えただけでなく漢字で全てを書けたことだ。《鶯谷》なんて今だって大人だって書けないし、素面(しらふ)で山手線ゲームをやったとしても、一般人なら答えに窮する固有名詞を、僅か5歳の子供が全て暗記しているという事実。驚く他ないが、好きこそものの…という格言は全ての事に当てはまるのだろう。

 そんなコウノスケの鉄道愛も、残念なことに彼の父親には伝わっていなかったようだった。仕事に忙しく、たまにしか家にいない父親に対し子供ながらに気を遣い、そして大人しく引っ込み思案な彼からすれば、

『鉄道が好きだ』

と声を大にして語ることは迷惑だと考えていたのだと思う。どこかの蕎麦屋の誰かさんとは大違いな、思慮深さに溢れたそんな話を不憫に思った僕は、余計なお世話だと承知しつつも、コウノスケと、とある約束をした。つづく

*鉄分…鉄道好きの度合いを表す

*山手線…品川駅を起点に環状運転を行うJR東日本の路線。高輪ゲートウェイ駅がが新設されたことで全30駅あり、その駅名を使って遊ぶ山手線ゲームは有名。

#サンタクロースはいる #鉄っちゃん #クリスマス  #鉄道模型




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