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平等と公平の間に苛まれる自治体運営

 自治体で新たなサービスが開始されると、後々議会で「このサービスは、平等ではないのではないか?」、「公平ではないのではないか?」といった質問を浴びせられている場面を目にすることがあります。例えばマイナンバーカードを活用した新たな給付サービスを開始する段階になっても、「カードを持たない市民の皆さんと平等・公平にしなければなりませんので、給付開始は同日になるよう調整させてください」みたいなことを、自治体職員の方々から言われることがあります。
 本来、平等と公平は同じ場面で同時には実行できないもののはずです。例えば仲間と食事に行って会計をする場面で言うと、以下のようになります。
 平等・・・割り勘にする。
 公平・・・食べた分、飲んだ分を各個人が負担する。
 これって、同時に行なうことは絶対に無理ですよね?

 そこで、行政職員の方々にいつも話していることは「行政機関が担保すべき平等とは、機会損失を作らないことであり、我々は出自や性別、年齢、財力等によって与えられる機会が左右されることを無くすようなサービスデザインを行なわなければならない」ということと、「住民が相応の負担をした場合には、相応のメリットを提供することが、公平性の観点からも必要である」ということです。
 これを先程のマイナンバーカードの活用による新たな給付サービスに当てはめますと…
<平等の担保>
 ・マイナンバーカードを保有しているか否かに関わらず、対象者全員に給付の機会があることで、平等性を担保する。
<公平の担保>
 ・マイナンバーカードを取得するという作業コストを負担した住民は、オンラインで受取口座を登録することができ、郵送による通知を受け取ってから、郵送や窓口での手続きを行なう住民よりも、給付を早く受けることができる。
 ・事前に公金受取口座を登録していた住民は、即日給付を受けることができる。
 ・マイナンバーカードを保有していない住民には、郵送による通知費用、行政職員の手作業による登録費用の負担を求める。
 というような形へと移行しなければ、業務プロセスを見直したとは言えません。それはおおよそDXと呼べるものではないのです。

 手法や技術に着目して、採択をして、先端的なデジタル化をやった気になっている自治体には注意が必要です。新しい技術を採択して、それで住民や訪問者が少し便利になって、そのようなことを成果として「やった感」を演出する。そんな花火職人のような首長さんには、ホトホト失望してしまいます。花火師的首長認定制度でも作って、公開してしまいたいぐらいですね。時代変革の中求められているのは、リーダーシップであってマネージメント能力ではないということを理解していただいたら、新たな価値創造というものがムーブメントになると思うんですけどね。

 話を本題に戻しますと、平等と公平の間に苛まれている行政職員の方々にお伝えしておきたいことは「臆することなかれ」ということです。行政機関が担保すべき平等と公平というものを正しく理解していれば、それが運営のプリンシパルであり、毅然とした姿勢で臨んでいきましょう。

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