井創灯

中年の遅筆な戯言。 主に地元である宮城県仙台市を舞台とした自作小説を小分けに投稿してい…

井創灯

中年の遅筆な戯言。 主に地元である宮城県仙台市を舞台とした自作小説を小分けに投稿しています。 更新は不定期ですが、文がお気に召した方はフォローを是非、よろしくお願いいたします。

マガジン

  • タンブルウィード

    ーあらすじー これは道草の物語。露木陽菜(ツユキヒナ)は地元山形を離れ、仙台に引っ越してきて三年目。自宅とアルバイト先を行き来するだけの淡々とした日々を過ごしていた。ある日、誤って自宅に届いた一通の手紙。陽菜を取り巻く少し面倒で不思議な人々との小さな出来事が、やがて陽菜の心の奥底にある光を呼び覚ましていく。  ○主な登場人物○ ■露木陽菜(ツユキ ヒナ) ■久保桃子(クボ トウコ) ■橘俊(タチバナ シュン) ■小峰まゆ

  • スケッチ

    仙台でカメラマンを夢見る男性、北多川悠(キタガワユウ)は彼女の江美と二人暮らしをしている。 ある日原因不明の病で北多川は視力を失う。 彼が辿る運命とは。 とある楽曲をベースに紡がれたオリジナル小説 ー主な登場人物ー ■北多川悠(キタガワ ユウ) ■江美(エミ) ■神谷修平(カミヤ シュウヘイ)

最近の記事

  • 固定された記事

物語を書くということ。

31歳になる年の春、僕は小説を書くことを試みた。 理由は無く、単なる興味だ。 感覚のままに書き進める自分。 物語に登場する人物を想う。 そうか。自由だ。 当たり前の事だが、実際に作品を書くなかで感覚を認知する。 これは。楽しい。 いま僕は世界を構築している。 果てしない喜びを感じる一方 しかしこれは前途多難だ。 僕は今、世界を、構築、している。 部屋に響くタイピング音。 喜びは此処に在る。

    • 出会い

      最近の事を書こうと思う。 もっぱら自分語りになってしまい、なんのことなし。 ツイッターのつぶやきを長くしただけに他ならないが。 あぁ、、そうか。今はもうツイッターっていうのも死んだ言葉か。。 僕はバンドサウンドを聴かない。 おい、なんだ、急に。急に宣言か。 嫌いとかネガティヴな意味ではなくて、なんとなく聴かないのだ。 とはいえ、中学時代に初めて購入したCDは175Rさんだったし はじめて覚えた歌はくずさんのムーンライトだったし 僕の部屋には今、再販だけどはっぴぃえんどさ

      • 29

        言葉がでないという感覚。目の前の風景に陽菜は茫然としていた。 変色した立ち入り禁止の立て札が隆起した泥の上に突き刺されている。 変わり果てたコラフは朽ち果てたままで目の前に立っていた。 記憶の中で最後に観た時よりも何処となく小さく縮んでしまったように思う。 小さく深呼吸をすると燃えた木々の匂いが未だに漂ってくるようだった。 通りを歩く人々の中、陽菜以外立ち止まる人は誰もいない。この場所にこの風景は当たり前になっていた。 ここに来る道中、取り壊しが進んで真っ更になった跡地を頭の

        • 未完

          先日、Twitterを眺めていると、あるツイートが目についた。 ※ 社会人として日々生活をしていて、文化的な感性や表現における熱意が徐々に削がれていく気がする。 なにか作品として残したくとも一日を終えて疲れて帰宅すると、もうスマホゲームをするくらいしか意識が向かない。 我々は給料と引き換えにそうしたものも犠牲にしている。 ※ 当人のツイートを引用して載せる事は控えるが、内容としては確かこんな感じだったと思う。個人的解釈からの歪曲あるかもですが。。 うーん、、確かに。

        • 固定された記事

        物語を書くということ。

        マガジン

        • タンブルウィード
          31本
        • スケッチ
          16本

        記事

          28

          地下鉄を降りて地上へ出る。 陽の落ちかけた歩道が一面茜色に染まっている。 通りを歩く人々の顔をなんとなく眺めて歩きながら、陽菜はあの雪の日の出来事を回想していた。 かじかんで真っ赤になった指先。 頭や肩に薄く積もって溶けた冷ややかな雪の感触。 白い息。夜の闇。 書き上げていた小説は、クボさんとミカミネさんの一件ですっかり頭から抜けてしまい結局お店に置いたまま、あの火事で焼けてしまった。 コラフを最後に出て帰りに立ち寄ったデビさんのコンビニで 一個だけ残っていた大きな豚まん

          どうしようもなく惹かれる その理由を探そうとしている ぼくは きみのことを まだなにもしらないのに どうしてなのだろう

          どうしようもなく惹かれる その理由を探そうとしている ぼくは きみのことを まだなにもしらないのに どうしてなのだろう

          仙台では、いよいよ青葉祭りの準備が始まったようです。 仙台は勿論、青葉祭りも自小説にて描かせていただいております。 夏の仙台、今年は久しぶりの景色が見れます。。 https://note.com/sobayu_nomanai/n/n0e55b47f453c

          仙台では、いよいよ青葉祭りの準備が始まったようです。 仙台は勿論、青葉祭りも自小説にて描かせていただいております。 夏の仙台、今年は久しぶりの景色が見れます。。 https://note.com/sobayu_nomanai/n/n0e55b47f453c

          27

          おつかれさまぁー。 ノックをすることなく事務所へ入ってきた女性は、溜息の入り混じった声で挨拶をする。 背後の気配に反射的に顔を向けると、先に休憩を始めていた陽菜は、テーブル上におもむろに広げていた荷物を手早く目の前にまとめた。 おふかれふぁまれふ・・・ 残り一口にしては大きすぎたサンドイッチを咄嗟に口へ詰め込んだために、不恰好な挨拶を返してしまった。 両腕をぶらぶらとさせて気だるげに歩く彼女は陽菜の隣のパイプ椅子を引きずり寄せ、乱暴な音を立てながらドカッと腰を降ろした。 着

          26

          「昔から、、姉さんは俺達みたいな出来損ないを気にかけてくれていたんです。」 大男は喉の奥からしぼりだすような声で、低く丁寧な速度で言った。 「…ミカミネ!!」 途端に黙っていたクボが口を開き、目を見開いて隣の大男を睨み付ける。 突飛な声に陽菜とタチバナくんは一瞬体を強張らせた。 ミカミネ。。男はそういう名前らしかった。 彼は一度軽くクボと目を合わせてから小さく頭を下げて見せた。 鉄砲を構えられて命乞いをする熊みたいな潤んだ目をしていた。 そこからなにかの意思を汲み取ったのか、

          +1

          明日はどんな日になるだろう。 十数年前、あなたと同じ年頃だった僕は、漠然としたそんな想いと共にこの年齢から一歩先へ踏み出した事を覚えている。 あなたがこの世に産まれた事を祝福すると同時に、様々な偶然が織りなす奇跡の、悪戯な巡り合わせのその先に、出逢いがあって、知り合えた事に改めて感謝をしています。 ありがとうございます。 あなたの生きるこの時代は本当に受難の(不適切な使い方だったらすみません)連続だと思います。 震災が僕にとってこれまでの人生での最大の出来事だったけれ

          25

          陽菜は雪のついた前髪を指先で払った。 「クボさん、なんでここにいるんだろう。」 路地での予想外の状況に思わず口から言葉がこぼれる。 陽菜にとってコラフの前でクボを見かける状況というのは実に珍しかった。仕事の時以外、つまりここでは陽菜の様に何かしら別の用があった場合、クボはコラフにプライベートで立ち寄る事は一度も無かったからだ。 自らがシフトに組まれていない時に野暮で立ち寄ったという話も店長やタチバナ君から聴いた事が無かったし、陽菜自身が目にした事が無いだけかもしれないが、いず

          遠く、山の向こうで鳥の鳴き声が聴こえた気がした。 阿久津は、閉じていた瞼を開き、眼前に広がる広大な夜の闇を見つめる。 「ほんまに、、勿体ない場所やな。」 陽の出ている時間であれば、ここからはきっと素晴らしい眺望なのだろう。 黒一色の中で濃淡が別れた境界線をなぞると、雑木林の隙間からなだらかな丘陵がぼんやりと見えてくる。 「この場所にこんなもん作ったんが間違いや。」 目の前の風景と自分とを隔てているもの。 遮音性と防寒断熱に優れた高性能な巨大ガラスに向けて阿久津は冷ややかな声で

          24

          「広瀬通り、広瀬通り。お出口は、右側です。」 座席から腰をあげた陽菜はポケットの中の切符を確認し、列車を後にした。 地下鉄の駅構内は、外から持ち込まれた雪のせいでぐったりとした湿り気を帯びていた。 往来する人々の靴底から溶けた雪がそこら中でワックスを撒いたように通路一面で光沢を放っている。 小走りに陽菜の横をすり抜けて行った男性は足元をすくわれ転びそうになっている。 スケートリンクを歩く様な慎重な歩みで足元を気遣いながら進む陽菜は、地上への階段を一段ずつ踏みしめて上り、夜の

          DOT.

          その一瞬が、その一言が、これからの何もかもを変えてしまう。 そんな冗談めいたことが本当にあるなんてこと、信じていなかった。 あの日、あの場所で、全てが悪戯に、偶然みたいな素ぶりしてさ。 僕はいつもどおりに自分のわがままだけで飛び出しただけなのに。 あなたはずっと笑っていたね。澄んだ瞳の向こうに夢見る強さ感じてた。 永遠なんて言葉は嘘だって知っていたのに、見えない事実が寂しくて。 大声で笑い合えた大切な時間も、生絲みたいな儚さで切れて消えた。 明日は必ず来るなんて素朴な蒼

          スケッチ⑯

          午前9時25分。 白杖を前に出し、新幹線から駅のホームに降り立った俺は、土地の風土を確認するようにその場で一つ深呼吸をした。 朝の東京。まだ少し冷えた空気が体の中に満ちていく。 仙台からおよそ二時間。 自分にとって久々となる遠出は、思いのほか体にくるものがあった。 俺は電車やバスなどの乗り物に長時間腰掛けているのが苦手だ。 仙台で生活をしていて地下鉄やタクシーに乗る事はあっても乗車時間は数分程度。 カメラマンをしていた頃は時折県内を電車移動することはあったが、それもだいぶ前

          スケッチ⑯

          パスタ

          パスタは繊細な料理だと思うんです。 書いてみて自分で思う。いかにもうるさく語りだしそうな一文だな、と。 他人のうんちく話というのは好きな人は刺激とか学べるとか純粋に盛り上がるとかで楽しめるが、こと料理や食事にまつわる細々としたことは、食事の時間をひどく険悪にしかねない。 すき焼きを卵につけて食べる、食べないとか。 白滝を肉に近付けるなとか、そうした事々だ。 からあげに勝手にレモンをしぼって怒られた人って本当にいるのかな。。 話を戻しましょう パスタについてですね 日本人