監督の"男気"が引き起こす弱点同士の激突【川崎vs仙台プレビュー】

今回は私サッカーアナライザーが主宰するFIゼミに所属しており、川崎フロンターレの試合を毎試合欠かさず観戦・分析しているお2人、せこさんpolestarさんに、5/3(金)に開催される川崎フロンターレvsベガルタ仙台のプレビュー記事を書いてもらった。
川崎に詳しい2人だからこそ見える景色があるはず。今回、川崎ファンにも、普段川崎の試合を見ていない方にも、より面白く観戦できる視点を提供してくれた。ぜひ本記事を読み、実際の試合を見て楽しんでもらえればと思う。
サッカーアナライザー

1.怪我と戦う川崎、もがき戦う仙台

2019年5月2日現在、両チームの近況は図の通り。
シーズン全34節のうち、9節まで終えた段階でベガルタ仙台は勝ち点7と低調なシーズン序盤となっている。
また川崎フロンターレも、J1を2連覇中ということを考慮すると、スロースタート。直近の5試合でようやく右肩上がりになってきた印象だ。

前節時点の怪我人

川崎フロンターレは怪我人が非常に多い。
中村、阿部、脇坂、守田、奈良、車屋、カイオ。
守田は30日に全体練習復帰、ただし奈良は長期離脱という報道がある。

ベガルタ仙台は、兵藤が怪我から復帰している模様だ。


2.渡邉監督の"男気"が、鬼木監督に"鬼門"を突きつける【試合の展望】

予想スタメン、フォーメーション

展開を左右するベガルタ渡邊監督の”男気”

ホームの川崎は国内であれば、基本的にボール保持で相手を押し込み、そこから崩すスタイルを貫いている。

※参考データ
川崎の第9節までの平均ボール支配率55.3%はリーグ3位。
引用:Football LAB

前節の神戸戦は相手より低いボール保持率(39%)を記録した。
ただし負傷者が多発してしまったこと、また相手にボール保持のマエストロであるイニエスタなどがいることを踏まえた例外的なものと考えていいだろう。

仙台戦は、あくまで今節ではボールを保持して、相手を押し込むことを念頭にプランを組むと考えられる。

ではそんな川崎に対し、渡邊監督がどう挑むか?

自陣に5バックを敷き、川崎が広く使ってくる横幅への対応、そして裏のスペースのケアに力を入れる選択もあり得るだろう。

そして川崎に押し込まれたとしても、ハモン・ロペスとジャーメイン良という自慢の2トップがいる。

彼ら2人のスピードと個人技で、裏に大きなスペースを空けた川崎のDF陣を苦しめる可能性も大いにある。

しかし仙台は、開幕時からの5バックをベースとしたシステムを捨て、先週のルヴァンカップ鳥栖戦から4-4-2に取り組み始めている。

この4-4-2の狙いを踏まえると、単なるプランBとしての取り組みではないようだ。

というのも、仙台の渡邊監督は元々、ボールを保持し試合を能動的にコントロールしたい指揮官である。
しかし5バックによる試合運びは、勝利した鳥栖戦を除けばやや不安定なものに終始していた。

※参考データ
仙台の4バック採用前8試合の平均ボール支配率:42.9%はリーグ17位
引用:Football LAB

そこで、ボール保持の安定性を高めるため、4-4-2に取り組んだと考えられる。4-4-2を採用した際のビルドアップにおける特徴は「3バック化により相手に狙いを絞らせないこと」である。

具体的にはSB(主に永戸)かCH(主に松下)が最終ラインに降りる。

例えばこのように3バック化すること、さらに誰が降りるかを流動的にすることにより、川崎の2トップに判断の負荷、迷いを与える。
プレッシングの的を絞らせず、3バックが時間とスペースを確保でき、ビルドアップを安定させる狙いだ。

そこから仙台は、前線の2トップや、相手のライン間でパスを受ける技術に長けた吉尾海夏にボール預けることで、全体を押し上げる時間を創出する。
またサイドで多角形を作り、次にMFライン、DFラインを突破していくアプローチだ。

また非保持局面においても、5バックではケアしづらかった相手のSBの上がりをSHにチェックさせやすくなる。したがって、今までに比べて高い位置で相手の進撃を止めることができるというメリットが発生する。

つまり、この4-4-2への変化はあくまでボールを保持し、相手陣地に押し込むという、渡邊監督の標榜するサッカーにより近いシフトチェンジであると言える。

このシステムをリーグで試したのは、前節のG大阪戦のみ。長いシーズンを見据え、川崎相手にこの発展させたシステムがどこまで通用するのか。
それを見ておきたい気持ちがあるはずだ。

ボール保持に長けた川崎に対し、この4-4-2を等々力で試す男気が渡邊監督にあるのか。それがこの試合の展開を予想する際に、最も重要なポイントとなるだろう。

我々は渡邊監督がこの4-4-2を等々力で試すと予想している。

川崎の"鬼門"突破が勝敗を決める

仙台が4-4-2で臨むと仮定した場合、川崎には2つの狙い目が存在する。

狙い目1:川崎のCF、知念
直近の試合と同じく、川崎が2トップで臨む場合、相手の2CBと同数でのマッチアップとなる。そして川崎が特に活かしたいのは、絶好調の知念慶だろう。

※参考データ
知念は直近リーグ戦5試合で4ゴール。

対人にも強く、スペース感覚に優れている知念が仙台のCBに対して、独力で突破口を生み出すことが見込める。鳥栖戦でも、知念の個人技で均衡を破って勝利に大きく貢献した。

また知念が作ったスペースを、阿部浩之や小林悠が活用することで決定機が生まれるという副次的な効果も大きい。

そんな知念を活かすために必須なのが、なんといっても大島僚太だろう。
知念の前線での動き出しに対して、ワンタッチでピンポイントのパスを送り込める大島は、紛れもなく川崎のコンダクターである。

川崎がリーグで連勝を重ねているのは、知念の健闘、その動き出しを見逃さない大島が復帰したことが大きな要因だと考えている。
したがって、直近の勢いを活かしたアプローチとしては、知念と大島のホットラインから決定機とスペースを作り出すことがあげられる。

狙い目2:今季の鬼門、サイド攻略
仙台の4-4-2に対し、もう1つの狙いとして挙げられるのは川崎にとって「序盤戦の課題」として大きく立ちふさがった部分だ。

仙台の4-4-2の弱点がある。それは、DFラインの横の距離感が悪いことだ。

具体的には、相手がサイドでボールを保持した時、ボールサイド側のCB-SB間のスペースが空いてしまうのだ。
川崎はこのスペースに人を送り込めれば、相手の最終ラインを下げることができる。

対する仙台は、ボールサイドのボランチがついていき、中央へのパスコースが空く。ここにボールを通されると、逆サイドのボランチが埋めるためにスライドするものの遅れることも多い。
このバイタルエリアを川崎が活用できる。

サイドからの崩しにより、仙台のDF陣の弱点を突くことができるのだ。しかし、実はサイドの崩しについては川崎にとって序盤戦に立ちはだかった鬼門だ。

というのも、仙台と同じく4-4-2を引っ提げて等々力にやってきた鹿島、FC東京、G大阪は、川崎に対してサイドにボールを誘導する守備を行った。
そして川崎はサイドを崩せず、3試合とも流れの中から得点を奪えないまま勝利を逃す、という苦い経験をしている。

左サイドについては車屋のコンディション不良。右サイドはエウシーニョが移籍したことで、獲得した馬渡やマギーニョなど新戦力との連携が高まっていなかった。実際スタメンが定まらない状況が続いていた。

仙台側もリサーチしているであろう、この「対4-4-2のサイド崩し」は、序盤戦の川崎停滞の最大要因とも言っていい部分だ。
しかし、中央で崩せなかった場合は、必然的にサイドからの攻略が求められる展開になる。

相手がリードを奪い、陣形を下げたときにも、サイド攻撃が必要となる場面もあるはず。川崎が気を付けなければいけないのは、必ず大外に1人選手を置き、仙台の陣形を外に引っ張る意識を持つこと。
そうすれば最終ラインの距離感にギャップが生まれ、より攻略が容易になるだろう。

実際データ面からも、仙台の13失点のうち7失点がクロスからだ。サイド深く侵入しマイナスのグラウンダークロスに弱い傾向も見てとれる。
一方川崎は、クロスからの得点は1ゴールのみ。

渡邊監督が男気を見せるかどうか、川崎は序盤戦の課題であるサイド攻略という鬼門をクリアするか。試合の展開を左右するのはこういったポイントではないだろうか。

3.筆者2人が注目する試合のポイントと勝敗予想

川崎の注目ポイントは大島のパスだ。復帰後リーグ戦3試合で、チームの5得点中3得点で起点として絡むパスを出している。それに加え、的確な状況判断から左足やダイレクトパスも駆使し、精度の高い縦パスを前線に届けてチームの攻撃を牽引している。

仙台が採用したばかりの4-4-2の守備の完成度の隙を突き、わずかなパスコースをも逃さない大島の縦パスが川崎の攻撃のスイッチとなるだろう。

仙台の注目ポイントは、永戸の高いキック精度だ。前節のG大阪戦ではミドルシュートでゴールを奪うのみならず、精度の高いクロスをゴール前に何本も上げていた。
川崎に押し込まれて攻める機会が少ないとしても、セットプレーでのクロスでも脅威を見せることができるだろう。

勝敗予想は川崎が2-1で勝利。

ゴール前に引かずにDFラインを一定の高さに保とうとする仙台に対し、CB裏のスペースへタイミング良く走り込む知念に大島からピンポイントの浮き球パス。そして知念がペナルティエリア内でボレーシュートによりゴールネットを揺らす。

追いかける仙台は、攻め込まれながらもカウンターで川崎の右SB馬渡が上がった裏のスペースにハモン・ロペスが走り込んでボールを受け、中央へのクロスにジャーメインがヘディングで合わせて同点。

ホームで勝利したい川崎は、後半ロスタイムに家長が右サイド深くまでドリブルで突破し、中へのグラウンダーのクロスにニアサイドで小林が合わせてゴールキーパーの足元を抜く。エースの一発でゴールデンウィークに等々力劇場をプレゼント、という展開を期待したい。

共に相手陣でプレーをしたい両チームの激突という前提に立てば、互いに前線からのプレッシングをどうかわすか、が大事なポイントとなるだろう。
ただし仙台のプレスを阻害する川崎の前プレ隊は人選が不透明だ。

プレッシングの判断が優れているのは中村憲剛と阿部浩之だが、彼らの出場は現段階では不透明だ。家長昭博、齋藤学、長谷川竜也などSHとして前プレ隊に加わる可能性がある選手は、守備においてはやや不安が残る。

特に今回、仙台の3バック変化に対応する川崎の前プレ隊はいつも以上に判断力が問われるはずだ。彼らのうちの誰が起用されるのか、また先発した選手のパフォーマンスはどうなのかが注目ポイントである。

そしてもう1人注目すべきは前節、やっと今季リーグ戦で初めてゴールを決めた小林悠。彼は川崎×仙台の対戦で最も多くのゴール(6)を挙げている選手である。
チームと同じくスロースターターなキャプテンは、ここからチームを連勝に導く起爆剤となれるだろうか。

一方で仙台から見て厄介なのは運動量豊富な川崎のCHの存在だろう。前節イニエスタとのマッチアップを勤め上げたことで、一段と自信をつけた田中碧は、仙台が川崎のプレスを回避した後に面倒になりうる存在だ。

そこの局面で仙台が対抗できるタレントといえば椎橋慧也だろう。今季は負傷で出遅れてしまい、リーグ戦の先発は未だにない。しかしルヴァンカップの鳥栖戦では先発を務め、前節のG大阪戦でも途中出場を果たしている。

G大阪戦で先発した富田晋伍と松下佳貴のコンビもいいパフォーマンスではあったが、頼れる司令塔が今季初のスタメン復帰を飾るならば、川崎のプレス包囲網をかいくぐるための大いなる手助けになるだろう。

気がかりなのは等々力との相性。リーグ戦での勝利は2011年のみ。20回対戦してわずか1勝しか挙げておらず、クリーンシートを達成したことは未だ一度もないという相性の悪さ。

スタンドの緩衝帯が排除されているなど、ピッチの外では友好的な関係を築いている両チーム。ただしピッチの中では仙台にとって、川崎は勝ち点をくれないありがたくない存在なのだ。

勝敗予想は川崎の2-0。

より相手のプレスを避ける術に長けた川崎が相手を押し込む展開になると読む。中央の崩しから知念が1ゴール、サイドの崩しからクロスに合わせた小林悠が1ゴールずつ。
両ストライカーがそろい踏みし、等々力が燃え上がるような展開を予想する。


筆者

せこ(@seko_gunners)

 2006年、高校球児時代にドイツワールドカップを見てサッカー観戦にハマる。大会後に見たアンリのプレーの影響で、アーセナルとプレミアリーグを追いかけるように。国内では川崎フロンターレ(2012~)のファン。推しの両チームについてはnoteでレビュー更新中。「なんかいい感じ!」や「なんかうまくいかない。。」を言語化する。乃木坂46の推しメンは西野七瀬(→高山一実)。
【Twitter】せこ
【blog】https://note.mu/seko_gunners

polestar(@lovefootball216)

1998年W杯での中田英寿の活躍に魅了されてサッカー観戦好きに。以降、2002年頃からアーセナル、2016年から川崎フロンターレのファンになる。現在はアーセナルと川崎フロンターレ含め、プレミアリーグとJリーグを主にチェックしている。2017年始めから自身のブログでマッチレビューや戦術考察の記事を書いており、さらに最近ではデータ分析やインフォグラフィックへの関心も高めている。
【Twitter】polestar
【blog】Love football 〜I Love Pass&Move〜

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