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「モダンサッカーの教科書Ⅱ」~を読みまして。

僕が普段から愛読している欧州専門サッカー誌。

footballista

初めて読んだ時はまだ週刊誌で、フリーペーパーよりは分厚いかなーぐらいのボリュームで、それまでのサッカー誌とは一線を画す存在でした。

高校サッカーで燃え尽きていた頃に出会ったfootballistaですが、僕はそれ以来見慣れない欧州専門誌に夢中になりました。

サッカー雑誌あるあるみたいな記事ってよくあると思うんですが

・移籍特集!
・スター選手のインタビュー(嘘のやつよくあるとか)
・シーズン半ばの通信簿!

みたいな。もうなんか飽きてきたなと
その頃よく思ってて。

それに対してfootballistaの記事はと言うと


詳細な戦術分析やサッカークラブの経営、データ分析などなどめっちゃクセの強い(褒めてます笑)
特集が多く、サッカーオタクにはヨダレが出るようなものばかり。

最近ではこれ

※横向きすみません(笑)

「ポスト・コロナの欧州サッカー新勢力図」

コロナ禍で欧州のサッカークラブが経営的にどういう影響を受けたか、放映権収入やコストカットなんかの話をしながら詳しく解説してくれます。(笑)

なかなか渋い雑誌ですよね。

昨年に入ってからは刊行が2ヶ月に1回に変更+サブスクリプションサービス開始とリニューアルされ、1冊がかなりボリューミーになってより差別化が進んだサッカー誌になりました。

スマホやインターネットの普及が進んだ現代において、紙媒体に求められるものを突き詰めた内容にしていきたいと編集長が語ってます。
https://www.footballista.jp/special/77315

ネット全盛の時代にネットにはない情報を提供してくれるスーパーなサッカー誌です。

でまぁ、やっと本題(笑)
そのfootballistaで活躍しているライターさんがたまに単行本を出版してくれる時があります。この前紹介した書籍もfootballistaにも寄稿されてるサッカーコーチが書いたモノです。

今回はそのfootballista系書籍の中でも特にお気に入りの

「モダンサッカーの教科書」シリーズ

の二作目をレビューしていきます。
このシリーズは日本のサッカージャーナリストの片野道郎さんと、現ボローニャ(セリエA)テクニカルコーチのレナート・バルディさんの対談形式で、最近の欧州サッカーの戦術トレンドやレナートさんのクラブでの取り組みなどについて詳細に語ってくれてる内容の書籍です。

今回はミハイロビッチ監督率いるボローニャスタッフ陣のゲームモデル導入、トレーニングおよびデータ分析や、フィジカル・リハビリスタッフの役割について、

あと、レナートさんによる日本代表の分析なんかも掲載されてて、なかなか鋭いコメントで日本サッカーを切ってて興味深い内容でした。

最先端すぎるデータ分析

なかでも僕が衝撃を受けたのが、ピッチ上で起きた様々な事象を正確に数値化するデータ分析。

よく見るサッカーのデータと言えば、、

ボール支配率
パス成功率
シュート本数
パス本数

などなど。

レナートさんが普段から活用しているデータとして紹介されていたのが、

・IE(プレー効果指数)

AIを使って一つ一つのプレーがどれだけ効果的だったか評価し、数値化する仕組み。

パスの種類、距離、スピード、成功or失敗
ピッチ上の位置、パスを受けた時の体の向き、
敵味方との距離、プレー選択

などから数値を算出するそう。

AIえぐ。笑

しかも契約しているデータ会社に、

チームのプレー原則


(簡単に言うとチーム戦術を実現するための細かいルール設定みたいなもの)

に対して各選手がどれだけコミットできているか4つのデータを用いたレポートまでもらっているとか。

1.プレー選択(パスかドリブルか)
2.パス選択(誰にパスを出すか)
3.パスの精度
4.ボールコントロール
5.IE

※ショートパスを素早く正確に繋いで攻撃をビルドアップするというプレー原則に合わせて算出されるデータ

このレポートを見て、各選手の個別トレーニングメニューを作成しているとのこと。

ここまで根拠を持ったデータで評価される選手が
幸せというかかわいそうというか(笑)

言い逃れは絶対できませんね(笑)

データ×データでさらに分析

さらに驚かされたのが、各データ会社が算出するデータを掛け合わせて、より自分のチームの評価に適した指標として利用しているということ。

PPDA:敵ゴールラインから60mのゾーン
で許したパス本数
(低いほどプレッシングが効果的)

というチームの守備(プレッシング)を評価するデータに、

・ボール奪取位置の平均値
・総ボール奪取数に対する敵陣での
ボール奪取の比率

を加えて分析することで、より正確にチームのプレッシングを評価することを実現しているとのこと。

PPDAだけでは、守備側のチームがベタ引きになって、攻撃側が短いパス本数で前進した場合にも低い数値が出てしまい正しく評価が出来ないからこのような方法で分析を行っていると。

マジでやべぇ。(笑)守備がんばってる風のアピールプレーは直ぐに丸裸にされてしまいます(笑)ほんとに逃げ場はない。テクニカルコーチの執念恐るべし。

膨大なデータに没頭するだけでなく、チームを正しく評価するために「データを選ぶ」「データを掛け合わせる」作業をしている点が興味深いです。

加えてフィジカルコーチや理学療法士も、テクニカルコーチと同じようにデータを積極的に利用して、リハビリやコンディショニングをしているそう。
このnoteの中の人は一応理学療法士なのでとても読んでて面白かったです。(笑)

レナートさんの日本代表バッサリ分析

最後の章では世界基準の分析として、日本代表について語られていました。

ロシアW杯(西野監督)~アジアカップ(森保監督)
ぐらいの時期の分析が紹介されていますが、

レナートさんが一貫して日本代表の欠点として語っていたのが、

常に同じリズムで平板にプレーしている。

難易度は高いけれど決定的なチャンスに繋がるプレーを避ける傾向があり、ゴール前で違いを作ることが出来ないと。

確かに代表戦はいつもゴールデンタイムにやってても眠くなることが多い(笑)
印象論としてこーゆーコメントは結構あるけれど、

レナートは、日本の攻撃がゴール前で手詰まりになることが多い原因として、

ハーフスペースやライン間での仕掛けを狙いとして持っているが、単調にそこにボールを運び続けるが故に、

味方も敵も狙いたいスペースに密集して、より難しくしていると。

狭い局面を打開できるクオリティの選手がいないのにも関わらず、どんどん狭くしちゃうと(笑)

幅を取ったり、裏のスペースをアタックして、敵のDFラインの秩序を乱す選手がいない。

激しく納得。(笑)

さらに守備に関しても、全員が献身的に走り、スペースを埋めている割にプレッシャーがかかってないと。

規律正しく、用意した戦術に忠実に戦える。

が、

故に意外性がなく平板なチーム。

レナートさん、日本サッカー協会に直接言ってやってくれませんかねー(笑)

日本人の長所であり短所である特性を未だに我々は消化できてないのではなかろうか。

最近は欧州(特にドイツ)において日本人プレーヤーは、チームへの献身性と、従順さを評価されてきた成功体験があるので、短所にもなりうると捉えるのは難しいのかなーと個人的に思います。

ヨーロッパのビッグクラブのタレントがいる中では、そーゆー選手が1人、2人いるのはバランスを取る上で良いのかなと思いますが、それが全員になっちゃうと困るよなと、それが日本代表なのかなと(笑)

原口元気選手なんかは、ドイツに行ってからめっちゃ走って守備するようになったし、それが評価されて日の丸を背負い続けてるわけですが、

あの浦和レッズユース時代のチャラさが懐かしい(笑)

レナートさんの素晴らしい分析で、我らが日本代表が鋭い指摘を受けていました。
もちろん良いところも語ってくれてます(笑)

僕が感銘を受けたのが、レナートさんはサッカー選手としてのキャリアが全くなく、地元のアマチュアチームのコーチからの叩き上げであるということ。

グアルディオラのサッカーに魅せられて、好きが興じて始めた分析でセリエAまで上り詰めたレナートさんのキャリアかっこよすぎますよね。

これはイタリアでも珍しいケースらしいですが、日本でも元プロ選手を優遇する環境が当たり前です。

footballistaで執筆しているライターの中にも、SNSやアマチュアサッカーチームなどで活動している人が多いです。

日本でもグラスルーツパワーがサッカー界に大きなムーブメントを起こせるような日が来るといいなと強く思いました。

モダンサッカーの教科書は今月に第3弾も発売されるみたいです!予約済みです!(笑)

サッカーオタクのみなさんぜひ1度読んでみてはどうでしょうか。

あくまでも、個人の意見です!

ではまた!

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