J2第2節:岡山vs徳島~両者輝く好ゲーム~
開幕戦に続き、徳島のゲームをレビューします。
地元徳島と、高校3年間を過ごした岡山とのゲーム。開幕戦なかなか渋い試合をした徳島に対し、岡山はチアゴのスーペルゴラッソも飛び出し、4ゴールの大暴れで開幕戦を飾っています。
前回のレビューで少し名前を出した元徳島のヨルディ・バイスや、今シーズン岡山から徳島に移籍した白井、阿部などなかなか双方の関係者が多いこのゲーム。
一言で言うと、両者の良さが出た好ゲームでした。
1.スターティングメンバー
お互いに4−1−2−3の布陣。徳島はRSBの川上のみ前回のゲームから変更。岡山は最前線に現役オーストラリア代表デュークを起用。
徳島の前節からの修正ポイントは
・金沢のマンマークで機能しなかった中盤3枚とWG
・プレッシャーが少ない割に優位性を持てなかったCB
・ボールを収められなかった藤尾
このあたりに注目してゲームを見ていました。
2.徳島のビルドアップと岡山のプレッシング
〜いきなりのプレゼント〜
徳島はいつものごとく、開始からボールを繋ぎに行きますが開始3分で手痛いミスが出ました。
スリートップが積極的にプレッシングを行う岡山。
前節同様にアンカーの櫻井を消される徳島。CFデュークが櫻井を背中で消しながらCBへ寄せる。
徳島はSB、IH、WGもしっかりマンマーク気味に付かれていたのでうまく前進できず。
開始から3分で、下がりながらバックパスを受けた阿部が横パスをかっさらわれてチアゴに先制ゴールを許しました。ファーストタッチでスペースにスピードを落とさずに持っていったチアゴも素晴らしかったです。
開始直後の時間帯は、岡山は逆サイドのWGもSBのパスコースを消しながらCBへ寄せていく外切りプレスを敢行していました。
ただこれをボールを繋ぐのがうまい徳島に90分続けることは非現実的。
試合が落ち着かない時間帯に限定して、猛然とプレスを掛けることはサッカーではしばしば見られます。その結果先制点が取れて岡山としては最高の形で試合に入れました。
基本的には4−1−4−1でセットして守っていました。
先制点を取られ、ビルドアップをしっかり阻害され、前節の渋い試合も頭によぎる徳島。笑
しかしこの試合は、徳島がボール保持で格の違いを見せます。
3.運べるCBと左ユニットで岡山をいなす徳島
前節の修正点として挙げたCBの立振舞。この試合は両CBが積極的にドリブルでボールを運び前進。
特に阿部選手はそこから岡山の守備ラインを超えるパスを多く配給していました。
加え、受け手となる左サイドのユニット(WG西谷、IH渡井、SB新井)の連携もこの試合は素晴らしいものがありました。
前節はIHやWGがマンマークに付かれたままで試合が膠着してしまったのですが、
この試合では西谷、渡井、新井が流動的にレーンの交換をしながら、岡山の守備をいなしていきます。
渡井が引いて受けに行ったところの背後に、大外の西谷がレーンを移動して侵入。もちろんここまで移動すると、マークのSB河野もついていきません。
前節のレビューでもマンマークへの打開策としてレーンの移動について書きましたが、やっぱりDFは持ち場を離れることを躊躇う生き物だと思うので有効だと思います。笑
くさびのパスを受けた西谷はアンカーの櫻井へ。
前節ケアされたままほとんど使えなかったアンカーの櫻井を、左サイドのユニットがうまく連携することでフリーにしました。
前節はボールが来なかったので目立ちませんでしたが、やっぱり櫻井のポテンシャルはヤバそうです。笑
新井が偽SB的に中に絞り、西谷は大外でドリブルを仕掛けるパターンもありますし、左サイドは今後も徳島の崩しの生命線になりそうです。
右サイドは、スピードを活かして大外を駆け上がる川上と、ハーフスペースで小気味良く仕掛ける浜下。左サイドのような流動性は少ないですが、
選手の特徴を考えるとこれは正解。
実際に同点ゴールはハーフスペースでボールを持った浜下のアシストから生まれました。
4.ハーフスペース発、ハーフスペース着クロス
徳島の同点ゴールのシーンも左サイドの崩しから。
徳島のCBにボールを運ばれるのを嫌がった岡山は、
IHの一枚を押し出し、4−4−2のような形でプレッシングをかけるようになりました。
CB阿部に対し、岡山のIH河井が前に出て寄せます。そこから阿部は左足で縦パスを供給。先程図で紹介した形と同様に、下りてきた渡井の背後に入った西谷へ。
そのまま落としを受けて前向きでボールを受けた渡井が逆サイドの浜下へ。
川上が大外をオーバーラップ。斜めのドリブルでハーフスペースに侵入した浜下はそのまま逆サイドのハーフスペースで待つ藤尾へピンポイントクロス。
このクロスはマジで120点の最上級クロスでした。笑
ヘディングで押し込んだ藤尾が今季のチーム初得点を決めました。
この浜下がハーフスペースから放り込んだ、逆サイドのハーフスペースへのクロス。
ペップシティの必殺技でもあるこのクロスは、普通に大外から折り返すクロスと比較して幾つか良い点があります。
・敵がボールホルダーに引きつけられやすい
ハーフスペースでボールを持つということは、そこからペナルティーエリアに侵入され、シュートを打たれるリスクもあるため、DFの視線や重心がボールをホルダーに偏りやすくなります。
・クロスの滞空時間が短い
単純に大外からのクロスよりもターゲットへの距離が短く、滞空時間の短い速く低い弾道のクロスが供給されるので、DFは難しい対応を強いられます。マークを同一視野に入れながらこのクロスに対応するのはかなり難儀です。
・高さの無いチームでも得点が狙える
でっかいFWめがけて蹴るクロスゲーなんて揶揄されますが、ボールホルダーに注意が向きやすく(マークが外れやすい)、滞空時間の短い、速い低めのボールが送れるハーフスペースからハーフスペースへのクロスは、高さで利がないアタッカーも十分にチャンスがあります。
実際にこの得点シーンでも、藤尾は最初からハーフスペースで待ち構える形でしたが、CBの柳選手は付ききれていませんでした。(ちなみに去年J2でDFながら8得点を決めている屈強なエアバトラーらしい。)
加えてこのシーンは白井が岡山の両CBの間に飛び込んできていたので、余計に難しい対応を強いられていたと思います。
前半終了間際のいい時間帯に同点に追いつくことができた徳島。
5.両者決め手を欠きドロー
守備時に4−4−2の形に変更し、徳島CBの運ぶドリブルに対応していた岡山ですが、ライン間のスペースが空くようになり、肝心のアンカー櫻井選手にボールが届いてしまうシーンが増えてしまいました。
後半はその点を修正して、より守備ラインをコンパクトにできていたので、ズカズカと中盤に通されることも少なくなりました。
徳島は即時奪回を狙ってプレスを掛けますが、岡山のCBバイス・柳はともにロングフィードが秀逸。
バイスは徳島にいた頃ほどのキレではないですが、キックの種類もやはり豊富ですし、金沢戦同様に前線に高さのあるターゲット(デューク)がいたので徳島はプレスを交わされて苦戦しました。
お互いに後半は決定機が作れず同点で試合終了となりました。
6.最後に
徳島はCBが運ぶ〜左ユニットで崩す
というパターンで見事に岡山の統率された守備をいなしました。前節悔しい思いをした藤尾は同点ゴールを決める活躍。
やはり背負ってポストプレーというよりは、前向きで仕掛ける方が特徴を活かせるのかもしれません。バケンガ、一美とのレギュラー争いにも注目が集まります。
岡山も、チアゴとデュークは質で殴れる貴重な戦力で、J2では間違いなく驚異となる選手です。
開始5分ぐらいはあのままボコられるかと思いました。笑
アンカーの本山もかなりタフでビビりました。西谷や渡井のドリブルに普通についていっていたのはやばかったです。(来年は是非徳島へ。笑)
デュークがPKでやらかさなければ試合は終わっていたかもしれないですね。
PKストップといい、その前のデュークの決定機といい徳島は長谷川に救われました。
去年は出場機会が少ない中でもそこそこのパフォーマンスをしていましたし、今年は守護神としての活躍を期待しましょう。
次節徳島はホームで東京ヴェルディとの対戦。
そろそろ勝たないとサポーターも不安になるので頑張ってください!笑
それでは今回はこの辺で。あくまでも個人の意見です。
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