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休職283日目 正月十一日、鏡殺し

歌野晶午の「正月十一日、鏡殺し」を読んだ。
歌野晶午の初期の作品をまとめた短編集で、さくさく読み進めることができた。眩暈のせいで長い時間の読書がキビシイため、短編集は重宝している。

歌野晶午は「長い家の殺人」、「葉桜の季節に君を想うということ」、「世界の終わり、あるいは始まり」、「絶望ノート」しか読んだことが無いけれど、好きな作家のひとり。ストーリーが緻密で、伏線を綺麗に回収してくれるので安心して読める。
この短編集も例に漏れず面白かったけれど、表題作「正月十一日、鏡殺し」はあまり好みではなかった。子を持つ親としては、オチが受け入れ難いというか、「思いついても作品に書くなよ」と言いたくなってしまった。映画「ミスト」を観た時のため息に近い。

本書の中で好きな作品は「盗聴」。ミステリの造詣があまり深くないのでどう表現すればいいか分からないけれど、こういう正統派のミステリというか、シャーロック・ホームズが安楽椅子に座りながら謎解きしてくれるような短編は大好き。

学生の頃は、純文学に比べてミステリはレベルが低いと思っていた。純文学に比べるとミステリは人物描写が希薄だし、物足りないと思っていた。しかし、学生時代のミステリ好きの友達の言葉で考えが変わった。
彼は言った。「ミステリは伏線の文学なんだよ」。
目から鱗が落ちたし、自分の浅はかさを恥じた。本当に恥ずかしい。

これからもミステリは出来るだけ読んでいきたい。

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