【20年の軌跡-Vol.03】勤続19年の"バリキャリ女子"はなぜNPOでセカンドキャリアを歩み始めたのか #SDN20
育て上げネットの歩みを紹介する企画「20年の軌跡」。
3回目は、若者の無業化予防を目的としたキャリア教育プログラムを担当する執行役員の深谷友美子。
育て上げネットにきた経緯や団体内で携わったプログラムについて語ります。
育て上げネットをご存知の方はもちろん、若者支援やNPOについて理解を深めてみたい方もぜひご覧ください!
これまでの記事はこちら
【大企業からNPOに来た理由】
育て上げネットに来るまで
――育て上げに来る前のキャリアを教えてください
大手の旅行会社で約19 年働いていました。
新卒の総合職で入社し、旅行手配や企画、羽振りの良い時代だったので添乗員として年に数回は海外へ行っていました。
社長の戦略秘書に携わる機会も経て、最後の数年間は人事にいました。終身雇用の世代なので定年まで働くことに疑いはありませんでした。
――大企業の総合職からなぜNPOに・・・?
入社志望の若者と話していて、画一的で自信がなさそうに見えたんです。生き生きと旅行を楽しむシニアと対照的な若者を目の当たりにして、未来を支えていく人たちを応援できないかと考え始めました。
そんなとき、父の介護のため1ヶ月ほど休職することになったのですが、自分がいなくても会社はまわるという事実を身をもって体験して…これも契機です。
――大手企業にこだわる必要がないと思ったのですね
休職期間中に「介護のことばかりだと自分がつぶれてしまう」と周囲からアドバイスを受けて、ならば、とキャリアコンサルタント(キャリコン)のコースに通い、資格を取得しました。
――エネルギッシュの極みです。
思ったより早く父の結果が出てしまい、このまま会社に戻ったらもう定年まで骨を埋めるなと思いました。休職前に仕事も引き継いだし、資格も取得したので、会社には戻らずそのまま退職しました。
――キャリコンを活かせる職場を探したのでしょうか?
退職後は自分探しの旅のような感じでした。(笑)
テーマは“キャリコン”と“若者”とハッキリあったんですけどね。
セミナーに行ったり、母校で国際交流のアシスタントをしたり…
単発のバイトをしたり若者と一緒。将来を模索するステップになっていて。
ハローワークでは、人事部長や総務課長みたいな仕事ばかり紹介されました。人材派遣に登録したら「うちで働きませんか?」みたいな(苦笑)
――20年前にセカンドキャリアを考えていたのですね
ちょうど今年還暦なので終身雇用ど真ん中の世代。
周りを見渡しても自分みたいな人はあまりいませんでした。
でも、じゃあ何がやりたいか?というと言語化できなくて。
11 ヶ月まるまるフリーターで、仕事見つからないかな…とさすがにハラハラしていたときに、育て上げと出会ってしまいました(笑)
”工藤 啓って知ってる?”-育て上げネットとの出会い
――最初のきっかけは?
たまたまキャリコンの同期から「工藤 啓って知ってる?」と聞かれ、受託していた「ヤングジョブコーナー」の存在を教えてもらいました。
“工藤 啓”のことはもちろん知りませんでした。(笑)
ヤングジョブコーナーはまさに我が家のすぐそば。何ができるかわからないけど、ものすごく興味のスイッチが押された感覚を覚えています。
すぐに「ボランティアは受け入れてますか?」とメールをしましたが、「うちはボランティアという責任が曖昧な働き方は受け入れてません」と“工藤 啓”からお返事をいただいて。
――では実際にはボランティアやってない?
結局押しかけたので、週に2,3回行ってました(笑)
――"工藤 啓"が押しに負けたのかも(笑)
しっかり言語化できないモヤモヤしたことでも、あきらめずに発信し続ければ誰かが拾ってくれるのだなと思います!
本当に人とのつながりは大事です。
――実際にボランティアをしてみてどうでしたか?
当時は42歳。自分が知っていた社会はすごく狭かったと実感しました。
耳が千切れないのかしら?と思うほどピアスをたくさんしている方や、リストカットの痕がある方もいて、今まで出会ったことのない外見の方もいっぱいいました。
就活相談でも、私が安全だと思ってきたものを選択肢として見せるけど、そういう働き方が価値観に合わない方も多かった。
私には厳しく思えるものも、その人にとってはベストの働き方だったり。これまでの自分の価値観が覆されるような感覚でした。
――旅行会社の若者とは全く違ったのですね
ここは生活保護世帯が多くて課題も先行していたので、ギャップが激しかったと思います。私が知っている”若者”とは、タイプがまったく違いました。
今までTVのニュースや新聞で見聞きしてきた世界が、想像以上に身近に転がっているという事実を思い知らされました。
NPOにきた理由
――いつから働くようになったのですか?
06年に正式に入職しました。ちょうどその時期に地域若者サポートステーション(サポステ)が開所され、副統括になりました。
ボランティア期間に石山さん(現事務局長)から「これからどうするの?よかったら…」と声をかけていただきました。
当時の育て上げは人事制度もなく、他の制度も揃ってない面が多々あって。メンバーも10名未満、創業初期の濃いメンツばかりでした(笑)
――賭けでしたね
親にはNPOとは言わなかったです。
とりあえず仕事が決まって給料はもらえて生活もしていくよ、と伝えました(笑)
――大手企業からNPOへの選択は相当珍しかったのでは?
NPOで腹がくくれたのは、理由があります。
前職の直属の上司は社長で、旅行業界のパイオニアで色んなビジネスモデルを作ってこられた方。90年代に米国に視察に行き、社会貢献の世界を見てきて、後にご自身も旅行関係のNPOを創設しました。
民間企業ではビジョナリーカンパニーという言葉が認知され始めていて。とはいえ株式会社という構造はビジョナリーカンパニーの思想にプラスの面と、なかなか身動きが取りづらい面がありました。
上司はそういう面をずっと見ていて、「深谷さん、これからは NPOの時代だ。NPOはロビー活動もしていて、その国のいろんな仕組みを変えていく」といつも仰っていました。その言葉が漠然と頭に残っていました。
――NPOへの垣根が低かったのですね
私自身、また民間で働くのは違うなと思っていました。
例えば車がたくさん売れたから景気が良くなるといった表面的な資本主義の価値観が、少子高齢化や人材不足など、日本が抱える課題を鑑みると疑問に思えました。
社会主義でなく資本主義でなく、新しい仕組みって何だろう・・となんとなく思っていたときに、「NPO」 という言葉が耳に残り、面白そう!とピンときました。
――それで17年間NPOに・・
私は若者にも興味があるし、現場も好き。
だけど挫折せずにここまで続けてきたのは、若者支援の団体だというのもあるけど、7 割ぐらいはNPOだから。しかも寄付型のNPOでなく現場も持っている事業型のNPOだから。
社会貢献というだけではなくて、仕事のスキームとしての面白さがあります。NPOにこなかったら何が安全かは分からないけども、平凡な日々だったかもしれないな、と思います。
【NPOでの活躍・ポピュレーションアプローチ へ】
入職後の仕事
――その後の活動を教えてください
東京都から受託したワークスタートという事業の責任者を経て、前職の上司が立ち上げたNPOを手伝ってもらえないかと声がかかり、そちらに行ったんです。そこでもまた約1年、見通しを立てるお手伝いをして卒業。
再び戻ってきました。
この辺りから、基本的には高校生への無業化予防を目的としたキャリア教育プログラムの運営をメインにしながら、ワークスタートや川口と川崎のサポステにも行ったり、いろいろですね。
広域担当部長という肩書きをもらって、大阪を中心に全国飛び回ってました。あとは管理職の部課長制みたいなものの導入にも携わりました。
――部課長制はいわゆる人事制度?
組織が大きくなっていくうち「民間企業はどうなってるの?」と聞かれて。
最初は20人弱ぐらいの組織だったので、阿吽の呼吸で仕事ができていた。その良さはすごくあったと思います。
サポートステーションを始め委託事業がグッと増えて職員も一気に増えまして、法人の考え方をきちんと現場に浸透させていくことが課題になっていました。
やはり各現場に課長職を置いて、責任をもって管理してもらって伝えてもらうということをやっていくために部課長制の導入を、自分の経験値から伝えていきました。
――現在の人事制度の基礎を作ったのですね
運がいいことに創業期に近い時期に合流できたので、「これから」を話し合うメンバーの中に加えていただけました。
マネーコネクション®
――メインに担当していた高校生へのキャリア教育。マネーコネクション®の存在はインパクトが大きいですね
マネーコネクション®は、高校生を対象にした金銭基礎教育プログラム。SBI新生銀行グループと協働して全国の高校へ提供しており、のべ1,424校で実施しています。
ひとり暮らしに必要な生活コストを考えたり、お金の稼ぎ方をシミュレーションしたりしながら、自分の価値観を見つめ直すワークで構成されています。
――対象はなぜ高校生?
ひきこもって孤立してしまうと社会から見えづらくなるし、本人が自発的に外につながろうとしないと、支援できないという課題があります。
だから無業などの理由で、社会から孤立する前の段階、学校という所属があるうちにアプローチすることが大事。なぜ中学生ではないのか?とよく問われますが、高校は進路の枝別れが多いんです。
高校進学率は98%なので、中学生は次の進路はだいたい高校。
高校は長期欠席、中退、進路未決定、就職、進学と進路がバラバラになってくるので、対象を高校生に決めたということがあります。
――対象の高校はどんなところ?
いわゆる進路が多様な学校です。定時制高校とか、大阪のエンパワーメントスクールや東京のチャレンジスクールと呼ばれる学校などですね。
――進学校は対象外?
優先順位をつけるならやはり無業化のリスクが高い進路多様校が先です。といっても進学校からもリクエストがあればうかがいます。
ーー先生方の評価は?
生徒たちが最後まで前のめりになって楽しそうに参加している様子を喜んでいただけることが多いです。先生方が伝えづらいリアルなお金や仕事の話を取り上げていることもよかったといっていただきますね。時には先生ご自身が、生活コストに関する情報は勉強になりました!とか、働き方の特徴の説明に関心を示してくださることもあります。
――深谷さんとマネーコネクション®との出会いは?
育て上げネットは若者支援が中心ですがある意味、対症療法なんです。立ち止まってからではなく、立ち止まる前に予防的な、川上にさかのぼって何かできないかということを考えていたと聞いています。
私が入職したころに開発が進んでいて、みなさん夜も徹してプログラムを作っていたのを見て、プロジェクトの進行を背中で感じていました。
実は、私がボランティアだったとき、定時制高校でマネーコネクション®の講師デビューをしたんです。5人前後しか生徒はいなくて、けど、誰も私の方を向いてくれませんでした。
45分間、マスカラでまつ毛を上げ続けてた子、ずっと漫画を読んでた子が…一応あきらめないで最後までその場にはいたけど、打ちのめされました。
――今の深谷さんがそういう子と接したらどんな感じですか?
必ずしもうまくいくとは思わないけど、そういう生徒にどうやってアプローチするのかということを研究し続けているので、今だったらとりあえずワークに参加してもらえるかな。
進路多様校にいる生徒は繊細で、大人が取り繕う感じを一瞬にして感じ取ります。生徒に合わせようと思えばそれも見透かされるし、とても敏感です。
企業連携
――育て上げネットの企業協働1号案件ですね
協働が始まった当初のパートナーは外資系グループでした。
世界各国で社会貢献をしているけれど日本では取り組みがなく、何か取り上げるべき社会課題はという中で「ニート」という概念がでてきたそうです。ニート対策の第一人者は誰なのか?
と探していたところ、育て上げネットに行き着いたと聞いています。
――今はSBI新生銀行グループですが、当初は違ったのですね
社名は変わりましたが、関係が変わったわけではなく、17年間の長期にわたり協働体制を維持しています。
先方は金融業界で浮き沈みが激しいのに、グループ内での譲渡はあったとしても、マネーコネクション®を手放さないでいてくれるのはすごく大きい。
これまでの協働パートナーのすべてに感謝を言い続けたいなと思っています。
――担当者の方の想いが踏襲され続けているのですね
一般的に企業の社会貢献って経営難になれば即座にメスが入ることが多いし、株主視点ではトレンドに左右する部分もあると思う。そんな中、会社体制が変わることがあっても、17年間もマネーコネクション®を手放さないでいてくださったことはすごいことだと思います。本当にありがたいです。
それだけに育て上げネットとしても、寄せてくださる信頼、期待に応えられるようこのプログラムをしっかりと誠実に続けていかなければと思っています。
――学校現場全体としては、企業の冠のついたプログラム(寄付)を使うことをどう感じているのでしょう?
公教育には「公正・平等」の概念がありますよね。そうすると特定の企業の協賛がついているものを取り入れることに慎重になられることも以前はよくありました。
最近は文科省が新しい学習指導要領の中で“社会に開かれた教育課程”という考え方を掲げていたり、総合的な探求の時間を推進していたり、外部人材を受け入れる環境も時代とともに変化しています。
プログラムを積極的に採用してくださる機会が増えてきたと感じています。
――プログラムは改良されていますか?
プログラム自体は最初のメンバーの方々が開発した内容からほとんど変わっていません。ワークシートに線がついたとかその程度。それだけ最初のメンバーの企画力が高かったのでしょう。
対象と目的を明確にしていたのが良かったのだと思います。“高校生”というだけではなく、進路が多様な学校に通う生徒が将来無業になることを予防することに絞って。
基礎学力が十分ではないだろう、複雑な家庭環境を抱えているだろう、など対象像がはっきりするのでとことんそれに対応できる教材をつくった。なので改訂のしようがなかったんだと思います。
とはいえ、そろそろ見直しが必要かなという感じはしてます。
Youtuberやギグワークなど…新しい職種が増え、逆に無くなったものもあります。
働き方も多様化してますね。今はフリーター、派遣社員、正社員という働き方の話をしているけど、フリーランスや雇われない働き方もあります。
月収も今は15万、30万、100万円の設定だけど、給料としてみると
15万円は明らかに最低賃金を下回っていますし・・。
その代わり、ファシリテーター(講師)のファシリテーションの仕方や、育成の仕組みや運営制度は現場の変化に合わせて手を加えてきました。
――ファシリテーターへの働きかけを変えることで、生徒への影響も変わる?
そうですね。
生徒たちをまず理解するという、心構えが大切です。
講師然としないとか大人の価値観を押し付けないとか言葉の使い方とか。先ほども出ましたけど、子どもたちは敏感で、理想論を振りかざしたり、逆にとり入ろうとするとすぐに気づかれてシャットアウトされちゃいますから。
認定ファシリテーター制度
――担い手である、認定ファシリテーターについてお聞かせください。
コネクションズシリーズの担い手には、認定ファシリテーターというメンバーシップ制を取り入れています。有料の養成講座を受講いただき、年間登録料を納めてメンバーになっていただく、というしくみです。
マネーコネクション®の運営が軌道に乗り、もっと多くの学校でとなったとき、その先に現れたのが人手不足、という壁でした。
そんなとき浮かんだのが、顧客参加とコミュニティーづくり、というビジネスポリシーです。社会的欲求や承認欲求に根ざしている考え方で…。顧客参加を“社会貢献活動への市民参加”に読み替えてみれば、ぴたりとはまる。
具体的には、若者のために役に立ちたい、学校教育のサポートがしたい、でも自ら活躍の機会を開拓するのは難しい。そんな方たちに活動の場やプログラムの活用機会、若者支援のノウハウを提供する。かわりに会費をくださいね、という発想です。実際、いくらか学校がオープンになってきても、単独で営業をかけてキャリア教育を行うというのはハードルが高いですし。
いまの経営メンバーにこんな感じでやれると思う、って手書きの企画書みせたら、うーん、って感じで(笑)。今でこそ、事業型のNPOを標ぼうしていますが、そのころはまだそこまでではなく、事業に協力してくださるかたからお金をいただく、って懐疑的だったと思います。
ちなみに認定ファシリテーターはボランティアではありません。
授業を担当いただいたら謝金をお支払いしています。そのかわり、定期的に研修を受けていただいたり、細かなリクエストに応えていただいたり、生徒のみなさんに安心・安全で楽しい授業をお届けできるよう真剣勝負です。
それでもファシリテーターのみなさんはこちらの期待を大きく超えるレベルで時間を割いて準備してくださったり、勉強会を楽しみにしてくださったり。みんなで力を合わせて、っていう感じで。中には私たち以上に育て上げネットの活動を理解し、応援してくださる方もいらっしゃいます。もうほんとに頭が下がります。ファシリテーターのみなさんがいらしてこそ、のコネクションシリーズです。感謝してもしきれません。
このメンバーシップ制度があるおかげで、年間約100校~150校、年間のべ受講者数10,000名~15,000名くらいの高校生に対してアプローチを実現しています。
――認定ファシリテーターの方はどんな方が多いのでしょう?
企業勤めの方もいますし、フリーのキャリアコンサルタントという方もいます。マネーコネクション®だとファイナンシャルプランナーの資格をお持ちのかたもいらっしゃいますね。「キャリア教育」とか「今どきの子ども・若者」に関心がある方が多いという印象です。
現場で
――長く現場を見ていて、生徒たちに変化は感じますか?
玄関入ると窓ガラスが割れてたりとか、焼け焦げがあったりする“荒れてる学校”は見なくなりました。
いわゆるやんちゃな生徒が少なくなり、真面目でおとなしい子が増えているように感じます。不登校歴があって基礎学力が不十分で学習に苦労する子や、人間関係にしんどさを抱えたり。見た目にはまったくわからないけど、生活環境が厳しい生徒の割合が増えていると聞きます。
――現場に出て嬉しかったエピソードあれば教えてください
学校の先生に教えていただいたエピソードで、「今日授業でこんな生活コストの勉強をしたと」と家で話題にあげてくれたそうなんです。
するとお母さんが家計簿を出してきて、うちはこんな風になってるよって見せられたそうです。「その家計簿が、マネコネでやったワークのものと傾向が似てました!」と生徒さんが先生に感想を伝えてくれたそうです。
家に帰っても話したい授業だったこと、保護者とのコミュニケーションのひとつになったというのが嬉しかったです。
―― 一期一会になりがちな50分のつながりは、短く感じがちだけどどう捉えてますか?
授業価値の評価の仕方で「忘れ残り」という言葉があるそうです。
正確に記憶や記録をさせるとかではなくて、嫌でも思い出してしまったり、忘れようとしても忘れられない記憶。その忘れ残り度が高いというのは、それだけ授業の印象やインパクトが高いという評価らしいです。
とある進学校で「忘れ残り」を調査したそうです。
先生が1年間の授業で、「何を教わったか?」ではなく「記憶に残っている授業は何か?」と聞くと、マネーコネクションが一番に上がってきたそうです。
それ以来、私は「忘れ残り」という言葉をよく使います。一期一会ではありますが、たまに 1,2,3年生と学年ごとに機会をいただける学校もあります。
「こんにちは。私たち来るの 2度目なんだ」と言ってもポカンとしてる。
「1年生のときにやったお金の授業、覚えてない?」と言うと、そこで急に「あー!あれ、俺フリーターだった!」「自分は正社員だった!」とか「楽しかった!」という子が出てきて、パンとその記憶が蘇えってくれる。それを聞くと結構励みになります。そんな感じをどうやって積み上げていけるかなと思ってます。
この先々、なんかうまくいかなくて、なんかつまずいちゃってしんどいときに「そういえば昔なんとかって言われた気がする。あれなんだったっけ?」みたいなところから繋がれたらいいなと思っています。
地味なんですけどね。
私はいつもみんなに「地味に地道に」と言ってます。(笑)
――最後に誰かに頼るというメッセージは意味がありますね
「ポピュレーションアプローチ」という概念を取り入れてチーム名もかわりました。言葉自体は医療や看護の領域で使われてきた用語のようです。
集団全体に早い段階からアプローチして、全体として潜在的なのリスクを軽減しようという取り組み。ワクチンみたいなものかな。
プログラムの最後に「進路は慎重に考えよう」と言うけど、「迷ったり困ったりしたら自分一人じゃなくって誰かを相談するっていう方法もあるよ。」と話して若者支援への橋渡しをしようとしています。転ばぬ先の杖を 1本持ってもらうイメージです。
ポピュレーションアプローチ へ
――「予防」の観点でアプローチするのですね
そうです。支援は若者が手を伸ばしてくれて初めてスタートできる。ただ支援開始が遅れると抱える困難や課題が複雑になるケースが多く、望ましい支援結果に到達することが難しくなったり、時間がかかったりするようになる。だから少しでも早くに出会う機会を設けていきたい。コネクションズシリーズという出張授業はポピュレーションアプローチを実現するための手段。当初とは立ち位置がかわってきました。
――これからのポピュレーションアプローチチームの展望は?
まずは育て上げネットの若者支援の中に“ポピュレーションアプローチ”の必要性、有用性をしっかり根付かせたいですね。ハイリスクアプローチとの違いも合わせて。それぞれの支援の現場と若者たちをつなぐきっかけとしての存在感をもっと明確にしていくことだなと思ってます。
それから、生徒だけではなく、この活動を通じて、学校の先生に若者支援の存在を知っていただくこと、さらには、そこで働く私たち支援者への信頼を集めること。これも大きな役割だと考えています。
――生徒達とつながれているのは先生ですものね
そうですね。先生にとって生徒は守るべき存在です。私たちの”支援”を知ってもらいたい、何か困ったことがあれば頼りにしてほしいと提案をしても、そこにいる支援者や支援サービスが信頼に足るものであると確信いただけなければ、なかなか選択肢に加えていただけません。
なので、私たちがどのように生徒と向き合い、どのような関わり方を大切にしているかを、マネーコネクション®をはじめとする出張授業を通して見ていただく機会を設けること。
恐らく先生方もそこに成功体験があれば、信頼してくれるのではないかと思うのです。
今回はここまで!
読んでいただきありがとうございました。
次回は本人不在で始められる保護者向けの支援事業について振り返ります。
8月中旬公開予定です!
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・活動内容や就労支援にまつわる疑問
(8050問題って何?、最近話題の****ってなに?など・・・)
・noteで取り上げてほしいこと
・理事長の工藤や支援スタッフに聞いてみたいこと
・育て上げへの声援などなど、どんな小さなことでも募集しています!
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いただいた情報は、育て上げネットが行う企画のための参考とさせていただきます。
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