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甘雨のモチーフ考察[原神]

今回は甘雨のモチーフ考察を行いました。
仏教や易経の影響が強いように思います。
また、為政者(鍾離)のために生み出されたキャラだと言えると思います。

麒麟の末裔

甘雨の仙麟座という命の星座から分かる通り、人間と「麒麟」の血を引いたキャラです。

甘雨の言葉
「仙獣の末裔でありながら、私には人間の血も流れています。」

麒麟は中国の瑞獣で、書籍によって記載が異なりますが、鹿や羊、牛や龍を混ぜたような見た目だと言われています。 

非常に慈悲深い獣で、草も虫も踏まないと言われています。
甘雨の名刺の説明もそうした伝説に合わせているようです。

また、甘雨のご先祖様らしき人がどうやって麒麟と結ばれたのかわかるような書籍があります。

直接的なことは書いてありませんが、麒麟はとある薬採りと結ばれ、生んだ赤ん坊を薬採りに託していきました。

もしかしたらこの赤ん坊の末裔が甘雨かもしれません。

あと、Ver2.1 月逐い祭で、
過去の璃月のシーンに、甘雨の名刺と同じ仙獣(麒麟)が出ていましたので、ご先祖さまか、もしくは甘雨本人の可能性があります。(年齢や鍾離に召喚された時期を考えると、多分本人?)

背中に人が乗っていますが、大きいですね。

PVによれば、最初は仙人として生きていたそうですが、その後人間として街で暮らすようになりました。

天賦

①流天射術
中国における「流天」とは、天を走るという表現から転じて、詩において「月」を表す事が多いです。

六朝時代の宋の詩人・謝荘が『月賦』に「白露曖空,素月流天」と書いていたり、
南宋の詩人・石孝友が『旅中中秋』で「明星著地月流天」という詩を残したりしています。

つまり、空に流れる月を射るという意味の天賦です。
中国には太陽を射落としたことで有名な羿(げい)の伝説があります。空の天体を射落とす=弓の名手を意味することがあるので、甘雨は月を射落としそうなほどの弓の使い手…ということでしょうか。

②山沢麟跡(スキル)
山間の沢に残された麒麟のいた跡という意味。

スキルに関する名前であり、スキルで出す花は「氷蓮」だと天賦説明で書かれています。

氷蓮

山の高いところの間に沢(少し低い位置)があり、そこに水が溜まって蓮が咲くという意味だと思います。
実際に璃月は山間の沢に蓮が咲いていますので…。
そして天賦名によれば、それは麒麟がいた跡…なのだとか。

また、スキル時に霜寒化生と言いますが、化生は仏教用語で、形を変えて現れることを意味します。

大気中の冷気を花として化生しているようです。

さらに、この山沢はもう一つ易経(中国古代の占い)の意味も込められていそうですが、その話は後でまとめてします。

③降衆天華(元素爆発)
降衆という言葉があるわけではないので、降と衆に分けられると思います。
衆は普通に民衆(人の集まり)を意味します。
そこに降りる、もしくは降る(ふる)という意味だと思います。

天華とは天界(極楽)に咲く花、一般的には仏様の蓮の華を意味します。
甘雨は元素爆発で「瑠璃のように落ちなさい」というので、瑠璃百合の可能性もありますが、中国の文化的に考えるなら蓮のことだと思います。

まとめると、
天界の蓮の花(甘雨)が雪として降ってくることを意味するのだと思います。

④天地安泰
元素爆発のエリアにおける氷元素ダメージ+20%という効果がついた天賦です。

これは易経からつれてきた要素なので、あとでまとめて解説します。

甘雨の名前の意味

天賦(元素爆発)の説明文
「甘雨は甘い雨を降らすことができる。だが、邪魔者や外道にとってその甘い雨は、寒苦の雨でもある。」

甘雨の好きな物に関する説明文
「甘露を飲み、嘉禾を食す。それが私のポリシーです。」

中国には「甘露」=甘い雨の伝説があります。

天地陰陽の気が調和すると、天から「甘露」(=甘い雨)が降ってくるそうです。
天上の神々の飲む甘い霊液(不老不死の薬)でもありました。

甘雨が甘露を飲む話は神の目説明文にも、命の星座にも出てきます。

命の星座

1凸 飲露
中国の神仙思想において、仙人は断食し露を飲むと言われていることから来ています。
甘雨は甘露を飲むとあちこちに書かれているので、それを表しているのだと思います。

2凸 獲麟・4凸 西狩
孔子が著書『春秋』の終わりに、「西に狩りして麟を獲たり」(春西狩獲麟)と書き残して死んだことから引用された言葉。

本来麒麟が現れるのは、為政者が良い政治をしている証であるはずなのに、春秋戦国時代のような荒れた世の中に麒麟が現れるのはなぜなのか、と思いながら書いたとされています。

甘雨が魔神戦争中、鍾離に召喚された仙獣だという設定は、この伝説がモチーフとなっているように思います。

3凸 雲行
天の雲は万事恙無く(つつがなく)運行している。万物を潤す雨が降る(=政治が上手くいく)
という易経由来の言葉です。

甘雨のお陰で万事つつがなく進むという意味だと思います。

5凸 折草・6凸 履虫
これも先述した通り、中国の伝説において麒麟は草を踏んで折ることもなく、虫を踏んで殺すこともなかったと言われていたことを表すと思います。

魔神戦争中に虫や草のこと気にしていられたとは思えないので、5・6凸は平穏になってからでしょうか。

荒れた魔神戦争中に甘雨が召喚されて、人々を甘露(甘雨の慈悲)で潤し、平和になったという意味が込められたのが、甘雨の命の星座かもしれません。

易経の影響

璃月キャラの多くは、易経(古代中国の占い)の影響を受けています。今回の甘雨もしっかり易経の要素があります。

○山沢麟跡(スキル)
→山沢損のこと。山の間の低い沢=損だという考えから来ています。

山沢損は易経において仕事によって自身の心身をすり減らす(=損)ことを意味します。
ただしこの損は後に良いこととして返ってくると言われています。

PVや伝説任務でもありましたが、甘雨はかなり働き者で、心身すり減らしている感じがするので、この要素が入れられたのだと思います。

○天地安泰(天賦)
胡桃とお揃いの易経の卦(占い結果)です。易経の地天泰のこと。

天地交わるは泰なり。地は下がり、天は上がる。
→陰陽の気が調和のとれた状態にあるという意味です。先程名前解説にも書きましたが、陰陽の気のバランスが取れて安泰となっていると、甘露(甘い雨)が降るという中国の伝説と繋げていると思います。

○雲行(3凸)
雲行雨施という言葉から連れてこられた、易経における乾為天(けんいてん)を表す言葉です。

天(雲や雨)は問題なく運行し、これまで損した者も、正しい道を進み、利を得られる。願い事が叶うという意味。

全てが陽となっている卦です。
先述した通り、甘雨のおかげで万事上手くいっているという意味だと思います。

易経ってそもそも何?という方は、胡桃考察のスクショをご確認ください。

易経は璃月のほとんどのキャラに関わるため、詳しく知りたい方は、岩波文庫が出している『易経』の上下巻を読むと分かるかもしれません。
私はよく参考にさせていただいています。

デザイン

申鶴と甘雨はどちらも「鶴」や「麒麟」のような獣を意識したデザインです。

各国のキャラはその国の人々の文化を引き継いだ衣装の時と、
ある特徴的な生き物の要素を引き継いだ衣装に分かれていて、
甘雨と申鶴は後者となります。

申鶴の時も話をしましたが、璃月キャラに見られる赤紐の結びが甘雨にも施されています。
※赤い紐は邪気を払うものでした。

甘雨は申鶴と少し違う結び方になっています(腰と足)
これは恐らく吉祥結びと呼ばれるものをアレンジした結び方です。

麒麟が吉祥の獣であることからこうした結び方が採用されているのだと思います。

甘雨の服の様々なところに、瑞雲の模様が見られます。瑞雲柄は神仙思想の影響を受けた柄で、吉祥が訪れる時に空にかかる雲だと言われています。

瑞雲

また、原神の麒麟は瑞雲と同じ毛質を持っていたようなので、甘雨の衣装は角以外に、模様でも麒麟を表現していると思います。

そして袖口は氷の蓮の花のような形になっています。

実は甘雨のチャージをよーく見ると蓮の形をしています。

また、甘雨は首に鈴をしており、歩くと少し音がなります。

この鈴は2つの要素が混ざってるのかと思います。

①中国古代、春秋戦国時代から使用され始めた編鐘。祭礼や演奏に使われた打楽器だった。
②羊鈴(日本では一般的にカウベルと呼ぶ)のように、放牧動物を追跡するためのもの。

この2つをかけあわせたのかもしれません。特に、麒麟は羊や牛など放牧系の動物が元となって生まれた瑞獣ですので…。

まとめ

これは想像でしかないですが、
良い統治者の元に現れる、中国では特に有名な瑞獣…ということで、
鍾離を創り出した時期にほぼセットで甘雨の構想もあったんじゃないかと思いました。

荒れた世を平定し、人々に恵みをもたらす…瑞兆の存在。
これからも多くの方に甘雨が愛されますように。

※今回の考察はXにて先行公開していたものです。普段モチーフ考察はXにて投稿していますが、これからnoteにもまとめていこうと思います。(HanaのXアカウント)

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