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神里綾人のモチーフ考察[原神]

今回は神里綾人のモチーフ考察をしました。
綾人は、全体的に貴族の要素と武士の要素がバランスよく合わさっています。
また、『水と花』がテーマとなったキャラです。

命の星座①

命の星座『神守柏座』

綾人の命の星座は、結び上り藤と、細抱き柏を意識したようなデザインになっています。
画像出典https://irohakamon.com/

結び上り藤
細抱き柏

柏の葉は古代から神に供物を捧げる際の食器としてよく使われていました。
この話は綾人のキャラクターストーリーにも書かれています。

また、神里綾人は全体的に柏だけではなく、藤の要素が強いです。(色、紋様など)
藤原氏のような貴族の名門の流れがよく藤の家紋にしています。

命の星座②

命の星座の凸効果

1 鏡華風姿
世阿弥の能の理論書『風姿花伝』と『花鏡』を合わせ、

水月鏡花(鏡花水月)という水にうつった花や、水にうつった月を表す言葉を意識して花と鏡の位置を入れ替えているようです。

綾人のチュートリアル動画名が「水月鏡花」になっていたので、ほぼ間違いないと思います。

能はかなり源氏物語とも縁が深いですが、詳しくは放浪者の考察で解説しています。

稲妻は源氏物語と縁があるキャラが多いです。

2 世に源泉ありて
源氏物語の注釈書である岷江入楚(6凸の別名)は、宋の黄庭堅の漢詩に基づいて名付けられました。

長江の源泉である岷江が、下流の楚に入って大河となるように、始まりの簡単な注釈が、後世に至って膨大なものになったことを意味します。

その漢詩の中に、如世有源水という記載があるので、そこから連れてきた名前のようです。

3 無意弄花
源氏物語の注釈書に弄花抄というものがあり、それを意識しつつ、

無意は、「意思がないこと、故意ではないこと。」
弄花は「花を弄ぶ(もてあそぶ)こと。」を意味するため、
「無意識に花を弄ぶ」という意味を込めたのだと思います。

恐らく人が花を弄んでいるのではなく、水のように意思を持たないものが花を弄ぶ=水が流れてユラユラ揺れる、という意味だと思います。

4 細流厭わず
源氏物語の注釈書である「細流抄」と、「河海抄」を意識した名前です。

河海抄の影響を受けたものが細流抄だと言われています。

特に河海抄の書名は、「河海は細流を厭わず、故に其の深きことを成す」という、『史記』の李斯列伝に基づいており、そこから連れてきたようです。

「黄河や海はどんな小さな川の水(=細流)も厭わずに受け入れるので、あれだけの深いのだ」という意味になります。

5万水一露
万水一露も源氏物語の注釈書です。

万水は、『多くの川や海』
一露は、『1つの露とか水滴』。
恐らく多くの川や海の合体を意味しています。

6 濫觴無底
こちらは2凸でも紹介した、源氏物語の注釈書である岷江入楚の別名です。

この注釈書の名前は、北宋の詩人黄山谷の『岷江初濫觴、入楚乃無底』という言葉が由来です。

濫觴=物事の初め。觴(さかずき)を濫(うか)べるほどの細流(=細い川)のこと。

岷江(長江の支流)も初めは濫觴(細流)であり、楚に入って底なき河となったという意味。

これを注釈書に置き換えると、
藤原定家の源氏物語の注釈書である『奥入』が初めであれば、岷江入楚の注釈書の時代には膨大なものとなっているという意味。

濫觴無底も岷江入楚も、初めは細い川だったがやがて大河となったという意味なんです。

1凸から6凸までまとめます。

1鏡華風姿は、水に花がうつるという意味だと思います。ほとんど動きのない水です。

2 世に源泉ありては、川や海に繋がる全ての水に源泉があるという意味だと思います。

3 無意弄花は、初めは緩やかな水(川)が花をゆらゆら揺らすという意味だと思います。

4 細流厭わずは、川が少しずつ合体するという意味だと思います。

5 万水一露は、川が合体して大きなものとして1つになるという意味だと思います。

6 濫觴無底は、初めは小さな川だったものが、大河となったという意味だと思います。

つまり水が大河となるまでの流れを示した命の星座だと思います。

天賦

綾人の天賦

○神里流・鏡花
先述したとおり、恐らく世阿弥の『花鏡』と水月鏡花から。

水面に映った花のこと。
綾人の場合は水元素の椿の花を技で出している。

ちなみに天賦の説明にある『滝廻鑑花』は鑑花(=鏡花)と、滝廻に分けられます。

滝廻りは、葛飾北斎が水(滝)の形を描くことに拘った、『諸国瀧(滝)廻り』が由来かも…?

○神里流・水囿
池や庭園の囲いを意味する。
綾人の場合、元素爆発で清浄之園囿という水元素のフィールドを展開し、そこに花を咲かせている。
つまりあのフィールドは綾人の池や庭であり、そこに花を浮かべて「鏡花」(水に花がうつること)を楽しんでいるという意味なんだろうと思います。

ちなみにこうした水面に浮かぶ花を楽しむ文化は特に平安時代の貴族がよくやっていました。

○ 神里流・峰を纏いし清滝
出処があるような気がしますが、分かりませんでした。峰(山)の間から下に向かって落ちる滝を意味する天賦です。もしかしたら鏡花の滝廻鑑花と関係させたのかも。

○満ちゆく破月
破月は弦月の別名で、いわゆる上弦の月(半分だけ明るい月)のこと。そこから満ちていく(満月に向かう)。
水月鏡花の水月(水にうつる月を楽しむこと)と関係させていそうですね。

柏、藤、椿、桜など様々な植物の要素を持つ綾人ですが、特に貴族に好まれるような植物を中心にデザインしたようです。

彼の元素爆発は水に桜が映っており、さらに水でできた椿を浮かび上がらせます。

元素爆発の水面に薄らとうつる桜
椿の花が浮かぶ水面

椿は花ごとぼとりと落ち、首が落ちることを連想させるため、武士にはあまり好まれていませんでした。

綾人は武士的な要素を持ちつつ、
貴族的な要素もしっかりあるということでしょうか。

衣装

神里綾人の衣装は、

源氏物語に出てくるような平安貴族の要素と、
稲妻のモチーフとなっている武士の要素と、
開国へと向かう明治の要素が混ざっていると思います。

まず、神里綾人の服は恐らく直垂です。狩衣の可能性も考えましたが…。

「和漢三才図会」(1702)より

狩衣は貴族の着物です。
直垂は武士の着物です。(貴族も類似のものを着ていました)

振袖と勘違いされやすい

前から見たとき、どちらかと言えば、直垂の方が近いように感じられました。
狩衣は全面が開いておらず、衿(えり)が見えませんし、もっと前面が長いですから、腰紐も見えません。
対して、直垂は衿も腰紐も見えます。

直垂は綾人の服のように上下に腰元で分かれますし、直垂の袖の下側にも露紐はついています。

コトバンク「直垂」より

画像出典
「和漢三才図会」(1702)より
コトバンク「直垂」より

綾人の首元に、リボンのようなものがあります。
これは武士の兜に付けていた忍び緒と呼ばれる組紐で、忍び緒はよく総角(あげまき)という結び方をされます。

総角結び

総角結びは平安時代から伝わる縁起の良い結び方でもあり、源氏物語には『総角』という巻もあるほどです。

武士の甲冑は背中に総角付の鐶という結びを括り付ける部位があり、そこに総角結びが施される場合があります。
綾人の背中にもそれらしきものがあり、上部には椿の花の紋があります。


神里綾人の名刺にしっかりと椿の花と書かれていますので、椿で確定です。

ただ、紫の花の飾りや、スーツの襟(ラペル)は藤のように見えます。

また、燕尾服の内側には、水に流れる椿と、藤の模様が見えます。

左に椿、水の紋様、上側に藤がある。

まず右腕についているのは「大袖」という武士の甲冑の腕の部位です。

綾人の大袖の上部は、兜のようなデザインになっていますね。

袖の下には、よく見ると防御のための篭手のようなものをつけています。

神里綾人は全体的に体にフィットさせた燕尾服のような形をしています。
スーツの上が後ろに長く、2つに割れているのが燕尾服の特徴です。


明治時代に礼服に指定されました。
また燕尾服とセットで内側に着ることが多いベスト(黒色)もきちんと着ています。

綾人のセリフ

①「昨日の淵は今日の瀬」

平安時代の古今和歌集から
『世の中は何か常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日は瀬になる』

▶︎この世に常となるものはあるだろうか。飛鳥川のように、昨日は深い淵だったものが、今日は瀬となることがあるのだから。


②「花に百日の紅なし…」

中国の諺から
『人に千日の好無く、花に百日の紅なし』

▶︎人が千日(いつも)幸せであることは無く、花が百日(いつも)も紅(美しく)でいることはない。


③ 千慮の一失

「史記」淮陰侯伝から

▶︎千慮する賢者であっても、失敗がひとつはある。


④ 三尺の秋水

中国の漢書から

▶︎澄み切った秋の水のような研ぎ澄まされた刀(=3尺)

水と花に関係することを連れてきています。

まとめ

源氏物語をはじめとして、水に関する歴史的な言い伝えをモチーフにしているようです。特に命の星座は思った以上に流れがはっきりしていて、解釈がしやすかったです。

貴族のような優雅さ、武士のような鋭さを兼ね備えたキャラだと思います。

これからも皆さんに神里綾人が愛されますように。

※今回の考察はXにて先行公開していたものです。普段モチーフ考察はXにて投稿していますが、これからnoteにもまとめていこうと思います。(Hanaの🔗Xアカウント)

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