がんばる恋愛のその先は?アラサー世代に響く、心がほぐれる一冊
いまものすごく恋をしたい。仕事から解放され、ゆっくりする時間ももういいかな…ってなったときに芽生えてきた気持ち。
そんなタイミングで手に取ったのが、尾形真理子著「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」。
ただの恋愛小説だと侮るなかれ。繊細な女心を丁寧に綴り、優しく励ましてくれる恋物語。恋をしたい方におすすめの一冊です。
この本を読んだきっかけは、ブックライターの佐藤友美さんが毎週一冊本を紹介するコラムでした。
直木賞作家・島本理生さんの作品を紹介していたのですが、どうしても気になったのが文末の一節です。
最近読んで「30代の頃に読んでおきたかったな」と思った本は、ルミネの広告でもおなじみのコピーライター、尾形真理子さんの 『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』です。まだ間に合うみなさんは是非。
「まだ間に合う…」は、30代独身女性に向けたメッセージだと解釈し、ドンピシャ世代なので早速チェック。
コピーライターである尾形真理子さんのデビュー作「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」。5つの短編物語で、自身による新宿ルミネの広告コピーを元に作られています。(ちなみに広告の写真は蜷川実花さん)
正直、この時点でタイトルの意味は全く分かりませんでした。
舞台は路地裏のセレクトショップ。訪れるお客さんは、不思議な魅力があるオーナーと一緒に、自分を変える一着を探すうちに強がりや諦めを捨て、次第に自分の素直な気持ちと向き合うようになります。
年下に片思いする文系女子、不倫に悩む美容マニア、元彼の披露宴スピーチを頼まれる化粧品会社勤務のOL……。1話ごとに恋愛事情も年齢も異なる女性が登場します。
ちゃんと欲しがる女ほど、欲しがられる女になる
一話だけネタバレしつつご紹介します。
「悪い女ほど、清楚な服が、よく似合う。」の主人公クミは、21の時から妻子ある男、永瀬と付き合って11年。
9年前、「娘がハタチになるまで待ってほしい」と言われ、若さを保つことに力を注いでいました。ところがある晩、奥さんが「娘が結婚するまで離婚はしない条件」を出していたと聞かされます。
「永瀬が出て行った部屋で、クミの中に怒りがふつふつと沸いてきた。
(中略)自分のふがいなさに怒った。わたしの主導権なんて、どこにもないじゃないか。」
その夜白いパンツにワインをこぼしてしまったクミは、翌日新しい服を買いに行きます。
そこで店員の何気ない言葉によって、自分が「白いパンツが似合うわたし」に固執し、無理をしていたことに気づきます。
わたしにも、「耐える」と「身をひく」以外の選択肢があってもいい
我慢ばかりする良い子になるのではなく、欲しいものは欲しいと伝える。
相手を困らせるようなわがままを言うのではなく、「ちゃんと」欲しがるのは難しい。だからこそ、「ちゃんと欲しがる女ほど、欲しがられる女」になるんだと思います。
誰かに合わせるだけの人生でなく。自分の人生を歩く。
読み始めたきっかけこそ「さとゆみさんのおすすめ」でしたが、言葉の使い方がまるで毛布にくるまれてるみたいな柔らかさで、読後には優しい気持ちになれました。
恋人に夢中な時って、周りの人のアドバイスが右から左に流れるくらい「私が良ければそれでいいのっ」って、目先の良いことばかりに目が行きがち。
でもその恋人と別れた時に初めて、相手に合わせすぎて自分を押し殺して苦しかったなぁ……と、友人たちのアドバイスの意味が分かったり。
タイトルの「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う」と言うキャッチコピーもピンと来ていなかったのは前途の通り。試着室で思い出す?本気?みたいな(笑)
けれど、その意味が最後の数ページで「そっか!そういう意味だったのね!」と、読後に結末の行方が気になることは無く、すっきり読めます。
絶妙なオンナゴコロに触れるキャッチコピー
特に印象に残ったの3つの言葉をご紹介します。
「あなたといたい、ひとりで平気、をいったりきたり。」
「運勢は生まれた日より、選んだ服で変わると思う。」
「恋の終わりと恋のはじめで 女の子はキレイになれる。」
恋をしたことがあるならば誰もが「あるある」と共感するキャッチコピーばかりです。
恋をすると良いことも悪いことも色々ある。だけど、恋をする前よりは確実に自分自身は成長しているんですよね。
過去の恋人たちが今のわたしを作ってくれていることは間違いなく、無駄な恋なんて一つもないと思います。
アラサーになって、勢いだけの恋愛より、穏やかな気持ちで過ごすことのできる恋愛に魅力を感じる今日この頃。
「恋したいなぁ」と思うときにおすすめの一冊です。
編集:円(えん)
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