ネットで再会した旧友が気持ち悪い善意押しつけ男になっていたという話

1. A君とは

 引っ越し族という程ではないが、私は幼少時そこそこ多く引っ越しを経験したほうの人間だと思う。最大の理由は、この世で最もクズな人間の一人である実の父親から逃げるためというのが大きかったが、終始逃げていることもできず、父親もいる状態で五年か六年くらい過ごしたのが、K県K市。今では割と住み心地の良い場所とされているようだが、今や東京に慣れた私としては、同じ学校に通っているガキたちが、同じ団地に住んでいて、学校にいようが学童にいようが外で遊んでいようが関わる人間は、(個々人の人間性については良し悪しこそあるけれども)概ね同じという閉塞的な暮らしで、思い出すとゾッとするほど肌に合わないので、よくいじめ関連などでかの地の名前が挙がると、今住んでいる人には申し訳ないけれども、「まあ、ああいう土地だからね」とつい偏見たっぷりな考えがよぎってしまう。東京に来てからは、誰もがバラバラ、色々な暮らしがあり、人の家の事情はそれぞれ複雑、過干渉なしというのが大変過ごしよく、都会でしか私は生きていけない!と確信したので、うんたらグリーンタウンなんて過ごせやしない!と今も断言できる(あれ、だいぶ場所バレそう?)。いや、そこでハッピーに生きてる人はいいんですよ?私がダメなだけだから。でも、父親が外国人というだけで異物扱い、近所のガキどもに蹴られまくったこともあるし、やっぱりそういう土地柄だと思う。つまり、そこで出会った人間とも、そこで多少かかわった人間にも、申し訳ないが悪い思い出と直結しているので、そんなに深くかかわりたくないというのが私の今の正直な感情である。そして、遠回りになったが、A君はそういう中の一人だった。

 A君とは、実は当時、ほんの一年程度ではあるが、小学生なりにすごく仲が良くて、多分お互いにほんのり異性として好きだった。うちにお泊りにきたこともあるし、兎に角仲が良かったのだが、クラス替えであったり、あちらが男の子同士でつるみたくなったのかわからないが、いつしか疎遠になった。それから特に思い出すこともなかったのだが、ひょんなことから、やはり同じ小学校のI君(性格の良いイケメンに成長していた)と私が再会し、短い間ではあったが交際したことから、A君からも連絡がくるようになった。I君とは、決して悪くはないお付き合いをしたと思うのだが、恋愛とは理屈ではなく、十分に気持ちが燃え上がらずに別れてしまった。素敵な人だったのになんだか申し訳なかったと今でも感じているが、やはりあの町絡みの人間というだけで私は心に壁を作らざるを得なかったのもあるかも知れない。I君は懐かし気に当時のことを語ったりもしたが、私はその都度、聞きたくないなー、懐かしくないなー、と思っていたのだから。ただ、I君は実直な人だったし、彼の方には悪いことはなかったので、飽く迄もそれは私の問題であることは強調しておきたい。ともあれ、結局I君とお別れし(I君は、しつこくなく、ちゃんと理解してくれた。モテる男は違う)、A君からFB経由で連絡がきて、それから今や懐かしのmixiで多少の交流を持つようになったというのが事の始まりだった。

2. 下心

 実のところ、そもそも交流の再開に気のりはしなかったのだが、向こうは懐かしいと思って連絡したのであろうし、子供の時は仲が良かったし、私は色々と無精で人付き合いがすぐになくなってしまう悪い傾向を持っていて、旧交を温める機会は大切にするべきかと思い、心の中にひっかかりを覚えながらもやり取りを開始した。しかし、それはあくまでも私のほうの気持ちの話であり、向こうにとっては、多少違ったのである。

 実のところ、男女の友情が成立するのか否かという問いについては、「人による」というのが私の見解だが、成立しないという人間も多いし、実際なかなか難しいのかもしれない。A君がどういう人なのかは知らないが、ある時、A君から、会いたい、直接話したいと言われ、私はそれだけは固辞した。はっきり言ってしまえば、好きではない土地で過ごした時代の自分のことを冴えないと思っていたし、どこに出しても恥ずかしい父親のことも知っている相手だし、兎に角私自身には責任はないが嫌で仕方がない時代の象徴である土地の馴染みである。あまり深く付き合いたくはなく、当たり障りなくやっておきたかった。さらにいうと、ネットの面白みというか弊害というか、mixiでもツイッター等に倣い「つぶやき」なるものが登場していた当時、そういうところでのニュースへの反応などを見て、相いれないものを感じていた(若干、ネトウヨとまではいかないが、「女の子は子供産んで」発言の中学校校長を擁護するために、私の批判的呟きにしつこく絡んできたりとか、こじれた家父長的価値観の持主と思しき傾向があった)。とにかく会いたくはないので、K県時代がつらかったことを説明し、丁寧に断ったつもりだが、その時に彼はこんなことを言った。

「I君が付き合ったときいて、俺もいい感じになれたらなんて思ったりもしたけど」

 えーーーー?!……と思ったが、敢えてそこはスルーした。I君はさわやかイケメン枠だからそこは勘違いするなとか色々あるのだが、スルーした。とにかく、向こうの主張をまとめると、概ね以下のようなものだった。

・こちらが会いたいと思っているのに、会いたくないなんてひどい。

・当時、仲が良かったのに、後々男の子同士でつるんでからかうのに加担してしまったりして、可哀そうに思っていた。なんとかしてあげたい。

・頑なな心をなんとかしてあげたい。

・お前は俺を傷つけた(承太郎風にあらず)。

 なんというか、そもそも下心があった癖に、すごくすごく押しつけがましかったのだ。彼に何とかしていただく謂れはないし、からかわれたりしたことなんてもう記憶になく、懐かしい話とか一切出来ない状態なのに何言ってるんだ?という混乱状態。若い女の子には、悪いことは言わないから、~~してあげたい男とは、金を払ってでも関わるんじゃないと教えたい。絶対に下心があるのだから。
 兎に角、何が怖いのかといえば、彼の主張の中から読み取れるものの全てが、私に好意を向けている自分が善で、それを拒否する私が悪であるという図式に基づいていたことだ。そんなバカなと思うが、ストーカー殺人などの多さを鑑みても珍しい拗らせ方ではない。
 言っておくが、人を好きになることは偉いことでもなんでもないし、好きになったからと言って迷惑をかけていいはずはない。

 多分、これを読む中に、そういう人が紛れ込んでいることはあまりないと思うけれども、万一、今自分が誰かを一方的に好きで、頑なに思いを拒まれていて、自分が傷ついているという意識の方がいたら、はっきり言いたい。

    お前の愛はお前の行動を正当化しません。

3. おそらくはモラハラ男だった?


 結局、深くかかわらずに済んだので彼の人格について綿密な分析は出来ないけれども、モラハラホイホイな私は、思い出すとモラセンサーがビービー鳴る。元彼もそうだったが、兎に角「~~してあげる」という押しつけがましさが凄いし、お前ら、自分のことそんなに大層で有難いものだと思ってんのか?と思う。

 誰だって、思い込みというのはしてしまうものだ。私も思い込みのせいで色々やらかしてきた。だが、モラ系の人の思い込みというのはかなり厄介で、普通は、誰かに何かしてあげたいと思った時に「それが相手にとって本当に有難いかどうか」と立ち止まる瞬間があるはずだが、彼らには、ない。自分の善意は、絶対に有難がられると信じている。ある意味純粋だが、そこが怖い。

 A君の場合、私と彼の間の昔話をすると私にとっても懐かしく良い思い出を誘うと思っていたようなのだが、私にとっては懐かしくないどころか思い出したくもないし、なんなら、「その話は聞きたくねーっていってんだろーが●すぞボケ」と言いたいのを我慢して穏やかにそれとなくやんわりと距離を保っていただけの優しさに、こっちこそ感謝してもらっても良いのではと思う程だ。

 そんなモラハラ男だったっぽいA君との決別は、存外すぐに訪れた。留学中のことだったが、例のmixiの呟きが発端で、他の人のコメントも巻き込む言い合いになり、その後は私と彼でメッセージ上で喧嘩になったのだ。その際に言われたことは、既に本文中に書いた彼の主張であるのだが、そのやり取りの経過もなかなか今となっては味わい深い()ものだった。彼の言い草に腹が立ち、それまでやんわりと穏健派で通していた私はズケズケと言いたいことを言い、彼のメッセージを目に入れるとすぐに反撃に出た。しかし、時は留学中。時差があり、リアルタイムでのやり取りはそんなになかったのだが、とあるメッセージの後、彼からこんな返信がきたのだ(でも、うろ覚え)。

 「もう、こんな時間にメッセージされて、起きちゃったじゃないか!」

 え、いや。メッセージで起きるとか知らんがな。通知でもくるのか?マジキモいんですけど。因みにこれをネット上の別の友人に話すと、「地獄のミサ●じゃんwww」と爆笑された。当時それを知らなかったので検索してみたら、確かにちょっと近かったので私も爆笑した。

 そんな名物じみた彼とは、これを機に絶交したのだが、今もきっと、彼の中で、私はひねくれた冷酷な拗らせ女として嫌な影を落としているのかも知れないのだがまあなんでもいい。
 善意を押し付ける男は例外なくキモいということが、この記事の大雑把な主張だと捉えて貰って、問題ない。

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