20年以上好きだったアーティストのファンを続けられなくなった話

 唐突だったともいえるし、少しずつ歯車が狂っていった末の必然だったともいえる気がしている。
 私は彼の最初のバンドの曲に関する記事をしばらく前にちょろっと記念的な意味で書いていて、元PIERROT、現在Angeloのボーカル・キリトは私にとってのカリスマ、宗教的憧憬の対象だった。
 中高生くらいまでは、遠いものに対するあこがれと恋愛的な気持ちが入り混じっていて、理想の異性は間違いなくキリトだったが、だんだん宗教的憧憬が勝っていって、気が付けば、別に彼が誰と付き合っていようが実は隠し子がいようがどうでもいいと考えるようになっていた。ただ、キリトとして「うちの子が」「かみさんが」とか所帯じみて非日常をブチ壊すようなことを言い出さなければ、見えないところでどんな風に個人的生活を送っていようと構わない、ただ、ずっとスターでいてくれればよいと思っていたのだが、そうはいっても、高みにいるアーティストのちょっとしたプライバシーが当人によって開示されると面白いし、距離が縮まったような気がしてしまうのも事実だ。
 きっかけはコロナ禍。彼が、ライブに行けず寂しいファンを思って始めたyoutubeだったのだろう。すぐ飽きたみたいだが、ゲーム実況とか色々やっていた。今思えば、それを見なければ良かったと後悔せずにはいられない反面、それがきっかけで、私が勝手に自分の中のキリト像に被せていた鍍金がはがれだしたのなら、必要なことだったのかも知れない。良い悪いというより、いつかは偶像崇拝をやめる時が訪れるのであれば、それが今だったということだろうか。
 誤解のないように書いておくと、私はこれまでキリト大好きだった自分を否定はしない。彼に出会った時、つまりPIERROTと出会った時の感動は本物だった。作曲はアイジや潤と三人で手掛けていて、そのことによって、キャッチ―で耳に残りやすい曲、癖になる曲、神秘的な曲……といったようにバラエティーに富んだ楽曲が揃っていたが、世界観は主にキリトが構築していた。どこか神話的なものとSF的なプロットがあって、その中で引き離される運命的な二人のロマンスや非業の死を迎える孤高の存在の物語が緻密に描かれ、あるいは(多分)北朝鮮の脱北者であったり、自殺する人物の心情を繊細かつ美しく描き出した曲……どれもこれも、テレビでよく流れていた浅はかで刹那的な曲の数々とは全然違ったのだ。こんな世界があるのだと、私は一気にその道にのめり込んだ。その流れから、Plastic TreeやRaphaelとも出会った。(後者は解散してしまったけれど今も愛しているし、前者は現役でファンである。キリトに対する熱狂だけが、多少常軌を逸していた側面のあることは認める)ライブに行かなかった年は、多分、受験の頃くらいだろうか。兎に角好きで好きでたまらなかったが、ある時PIERROTが解散して、もう生きているの辛い、この世が終わったというくらいの気持ちにもなった。そもそも、私は割と家庭環境がソフトではなかったのもあり、中高生の頃はすぐに死にたいと考えるほうだったけれども、キリトは存在することを祝福してくれるような歌を書いていたし、彼らと出会うために生まれてきたのだと私自身思うようになっていった。今や反出生主義気味の私なのに奇妙な話だが、キリトの描く世界には、子供が望んで生まれてくるような視点があって、若い時の私にはそのことが支えになっていたのも事実なので、母親と喧嘩をするときに「キリトがいなかったら私はとっくに自殺してる!!」と本気で言ったことが何度かあるほどだ。(そのせいか、母親はキリトに変な反発を覚えるようになってしまったが……)
 とはいえ、私のファンレベル……もっといえば、お客様レベルは大して高くない。ファンクラブこそ入っていたし、ライブも行くが、FC旅行は行かないし(金持ちではないけれど金の問題ではなく、なんていうか、ロスとかその手の行先が好みじゃなかった……趣味はPlastic Treeの竜太郎のほうが断然近くて、キリトの趣味は私からすると実は俗っぽいなとある頃から感じ始めていたのも事実)、全国ツアーについていくとかもない。幸い都内在住だから、ツアーの内、東京かその辺りで行われる大きなライブに一つ行くという感じだ。グッズも、あまり沢山は買わない。大奮発したのは、復活ライブとDIR EN GREYと伝説的対バンになったあれの時だけである。でも、生きてて良かった!とライブの度に思ったし、ライブの度に生まれ変わるような気持ちがしていた。ずっと、死ぬまでキリトを応援し続けるものだと思い込んでいた。
 ……ある日、ツイッターでブロックされるまでは。

 こ、こんなくだらないことで?!と、その呆気なさに呆気にとられた。冗談だろうと思いたかったが、冗談ではない。河野太郎みたいなブロック奉行や橋本琴絵みたいな変なのには直接絡んだこともないのにブロックされているが、それは私が多分あの手合いから見れば「パヨク」とされる側で、昨今のトランスジェンダリズム問題を除けば共産党とかれいわ寄りの政治的立場をとっていることを隠していないからだが、どうも敬愛するアーティストにブロックされたことと、このことは無関係ではない。
 はっきり言うと、キリト本人は「保守」といわれるのを確か以前嫌がっていたと思ったが、どちらかというと右翼的な人だと思う。私は、今ならば時間がもったいなくて読まない類の本(母親にも、タレント本と散々バカにされた……)ではあるが、若い時はキリト崇拝の気持ちから彼の『思考回路』とか、諸々の著書を随分読んでいた。そこで彼が映画『パール・ハーバー』について書いたことや、シンキロー下ろしについて書いていたことなどを覚えている。そこから私が生み出した印象は、彼はネトウヨではなく、アメリカにもきちんと異を唱えられる、正統派右翼に比較的近いのではないかということだ。ネトウヨは嫌いだが、私は、対米追従をよしとしない右翼には、愛国心があると思っている。(私は別に愛国心を持ち合わせていないが、本気で国の為を想っている人を立派だとは思うし、本当に国を愛している人は、間違いを間違いだというのに躊躇しないはずだ。政府と国を同一視するようなアホは、どれだけ日本大好きといっていようがただのアホである)まあ、正確にいうと、当時はネトウヨなんて言葉はなかったのだが、キリトは靖国神社にも行く人だし、レッテルを貼られるのを嫌ってはいるが傾向で右か左かをどうしてもつけるのであれば、結構な右なのではないかと思う……が、当人がこの記事を読むことはどうせないけれど、勝手に間違ったことを言わないように配慮させてもらうと、一応私は彼がどうして靖国神社を参拝したりするのかは分かっているつもりである。私が理解者だなどというおこがましいことは考えていないが、常々彼が問題にしているのは政治的思想信条ではなくて、「人」だ。『ラストレター』という曲に付属していた彼の短編に(どこかにいってしまったのだが)、私は当時とても感動して涙をこぼした。曲も凄く良いし、あの歌詞もどう考えても天才でなければ書けないと今でも思っている。彼が描いたのは、「英霊」を讃える戦争賛歌ではなく、一人の兵士の想いであって、そこに善も悪もない。その点だけは、彼は間違えたことはない。『ゲルニカ』という曲では十分にファシズムの恐ろしさを感じさせるけれども、そこに描かれている情景の中に、どの陣営が正しく、どの陣営が間違っているのかという視点は存在しないし、それで良い。殺戮と破壊を繰り返す人間の業が迫ってくる、ド迫力の楽曲だ。
 だから、どういわれようと、嫌われようと、私は、キリトのといえばいいのか、PIERROTのといえばいいのか、Angeloのといえばいいのか、とにかく彼らの作品は心から愛している……そして、Angeloの曲にも世情を反映していると思われるものが色々とあるのだが、私は、どうも勘違いをしていたらしいのだ。私は、てっきり、国民総奴隷化の日本の現状などを普遍化して、やつら(政治家とか色々)の言葉に惑わされるなみたいなメッセージ性を勝手に感じ取っていたのだが、どうも違ったらしいのだ。
 衝撃が走ったのは、とある動画配信のときに――それは、アベノマスク配布の頃だった――キリトがさりげなく口にした言葉だ。
「安倍さん、頑張ってると思うけどなあ」

 はぁあああ?!
 あれで頑張ってるんなら、これまでの多少業績を残した政治家は皆頑張りすぎで任期の終わりには過労死してますよ!!しょっちゅう私邸でくつろいで会食三昧、一見忙しいのは外遊大好きなアキエと外交の体裁で遊んでくるのが好きだからじゃねーか。あれが頑張ってるんなら、日本国民は皆頑張りすぎだよ。もっと休ませるべきだよ。あなただって働きすぎだよ。

 ……と、配信中にこの気持ちを全てコメントするわけにもいかないというか、衝撃的すぎて、確か「アメリカのケツを舐めることしか頑張ってないと思う」くらいしか書けなかったと思うが、私以外にも少数のファンは動揺して「安倍はダメでしょ」的反応をしていた気がする一方、ネトウヨ気味のファンも多く、安倍さんは頑張ってる論者は結構いた印象だ。

 認めたくなかった。私が、ずっと敬愛し続けてきた人の目がボロッカスに曇っているなんていう現実を。絶対に認めたくなかったし、もしそうならば、即刻少し勉強して、右翼でも左翼でもなんでもいいが、安倍が史上最低の首相だということだけは知ってもらわなければと思った。(あ、ここを偶々読んだネトウヨさんがいても絡んでこないでね!)実際、キリトはネトウヨ説が生じ、後日の配信か何かで当人もネトウヨじゃないですみたいなことを言っていた気がする。
 確かに、安倍さん頑張ってるんじゃないの?ってだけでネトウヨ認定は、普通なら早急かも知れない。私だって、安倍が最初に首相になった頃は別に敵意はなかった。母が、安倍晋太郎はそんなに悪くない政治家だったようなことを言っていたし(多分、それはそうなのだろう。何かで犠牲者がいたときに、彼は直接頭を下げにいったとかそんな話だったと思う)、安倍晋三も一見人当りがよさそうでそんな悪人には見えないからだ。蓋をあけてみれば、お友達優遇、周囲はイエスマンで固めて、勉強は全然しないし無能だし、美点が一つもないという意味では確かに凄い。これは個人的見解なのだが、近所に住んでるおじさんであれば、全く無害な善人かも知れない。ロシア帝国のニコライ二世なんかちょっぴり似てるんじゃね?くらいに思っている。でも、自分のために、例えば赤木さんの件のように死人が出ても平然としているわけだから、どうもサイコ臭い。まともな人間だったら、仮に直接関与がなかったとしても、何とか遺族の心を晴らすために積極的に再調査に舵を切るだろう。
 ……とまあ、私みたいな、キリトより15程年下で、より世界を知らないはずの私でも安倍がダメなことくらいは分かるのに、キリトには分からないということがありえるのか、と。それが衝撃で、現実から目を背けようと私も頑張った。配信をめっきり見なくなったり、あたりさわりのなさそうなものだけを聞いたり、アベノマスクが配布されたときの彼のツイッターで喜んでいる投稿を見てそっ閉じしたり、なるべくこの耐えがたい現実から逃げようと藻掻いていた。
 しかし、元々、彼のワンマン好きというか、安倍でも麻生でもいいが、尊大に国を牛耳るタイプを好む傾向はあったのだ。キリトは、元々小泉氏に惚れこんでいた。今も好きかは知らないが、エッセイにはっきり書いていた。手元にないし、もう読むこともないから引用ではないが、記憶の限りは以下のようなことだ。
「小泉さんが、ブッシュとのキャッチボールで、わざとボールを遠くに投げるくらいのことをしてくれれば一生ついていく気だったのに」
 大したことではないが、要は、自民党をぶっ壊す(実際、自民党は壊れて派閥争いもないダメダメな党内独裁の場となり、日本もぶっ壊れたのだが)小泉に、元々「俺についてこい!」系でたたき上げてきたキリトは恐らくシンパシーを感じていて、しかしアメリカとも対等に渡り合える政治家ではないことに少しだけ失望したという具合だろう。竹中平蔵を重用するような人を信望していたことは今となっては恥ではないのかと思うけれど、当時まだ十代だった私ももろに影響を受けたし、テレビで見る小泉氏は確かに凄いことをやってくれそうで、ロックだし、日本にも良い首相が生まれたとアホなことを思ったのでキリトのことをそう責めることはできない。
 まあ、小泉氏を好きだったことは別に良いのだ。ここで重要なのは、キリトがアメリカへの追従姿勢をよしとしていなかったというポイント。そこがぶれていなければ、キリトがタカ派だろうがなんでもよかった。しかし……あなたが「頑張ってる」とかいって擁護した人さあ…。

 安倍、めっちゃアメリカにお追従じゃん!!

 安倍、プーチンにも手玉にとられてんじゃん!!

 なーにが、がんばってるだ!!!ガキの使いじゃねーんだよ!!!

 (息切れ)
 頑張ってるって、頑張るのはあったりめーだろ!!!!政治家なんて、成果を出せなかったらダメに決まってるじゃん!基地のためにもっと金出せと迫られるわ、北方領土差し上げるわ、頑張ってるとは思えないが仮に頑張っていたとしてもあの結果じゃあだめだし、コロナの現在を見れば、安倍が頑張らなかったのは一目瞭然じゃん!(あ、スガもダメだから、スガ擁護してないけどスガも実質安倍政権ですからね)
 確かに、西洋諸国より日本での拡大ははじめ穏やかだったよ?でもそれは政治家が有能だったからじゃない。例えば、ロシアなんかはリトルジーで人々が集まって聖像画にキスするし、ヨーロッパの多くはハグやキスの風習を持っている。個人的偏見で申し訳ないが、フランスのトイレなんかで感じたことだが手洗わない人結構いる。風呂も、日本より乾燥しているからだけれど毎日入るというわけでもなさそうだ。他にも、手づかみで食べる文化とか、最初の拡大の勢いは国民の風習に依拠しているのではないかと思う。日本人は元々他人に少々冷たいというか、私にとっては有難いことに他人との距離感を大きく保持したい人が多いとか、多分そんなことが理由なのだが、だからといって飲み会会食してりゃダメに決まっている。キリトが喜んでいたGoToも、明らかに感染を広げた。先にイギリスでGoToEatが失敗したと記憶しているが、悪い先例が既に色々とあったのに、平気で何度でも同じ轍を踏むのが今の日本クオリティーなのだ。イギリスなんか、失敗は失敗と認めて真面目にロックダウンをして、結果、経済を再び動かせるようになってきたわけだが、日本はバッハ合わせで殆ど実体のない緊急事態宣言を出したり引っ込めたりと小手先ばかりやっている。
 他にもある。youtubeで耐えがたかったのは、給付金デモなどがキリトの目にも入ったのかも知れないが、細かい文脈は忘れてしまったけれど、自分たちで出来るだけのことを全てやりきらない内にとかそんなだったか、困った時の政府頼みで「給付金よこせ」は違うと思う、というような話をしたことだ。
 キリトの立場からすれば、人に頼るのは良くないことだと思ってしまうのも無理はないことかも知れない。なんというか、生まれもプロレタリアートだし、様々な労働を経てから音楽を始めていて、経歴は完全に叩き上げ。自らの才覚と根性で道を切り開き、今や結構な金持ちだ。バイクを購入しては写真をあげていたりもするらしい。お金にも詳しいし、お店のオーナーをしてみたり、なかなかの実務家っぷりである。すごいな、なんでもできて……と思ってしまう。しかし、彼が何でもできるから、自分は困っていないから、纏まった給付金を切実に必要とする人の声を塞ぐことは、彼らの生活をないがしろにすることであり、ヘタをすれば命を奪うことにすら繋がる。声をあげる元気があるんだから、なんでもできる?そういえば、昔、死ぬ勇気があれば生きることも出来るはずといったことも書いていた気もするが……これは完全に間違っている。今もそう思っているかは知らないが、そういった思想は自己責任論でしかないし、力や運に恵まれた強者の思考回路であり、あまりにも想像力に欠けている。自己責任論は、突き詰めれば生まれてきたことさえ自己責任と考える所まで行きついてしまうものだと私は思っている。生まれた時点で、経済力、容姿諸々に差が出て、受けられる教育のレベルも違う、なんなら北欧みたいな国に生まれるか最貧国で今日の食事さえままならない生活を強いられるか……敢えて極端に走ったけれど、はっきり言って、キリトは自覚がないのかも知れないが、間違いなく彼は、容姿や才能、健康、運の全てに恵まれている。無論、絶え間ないストイックな努力によって勝ち取られたものが現在の彼のポジションを決めたのは理解しているが、努力したって駄目な人は沢山いる。というか、そもそも努力できる土壌にない人が沢山いる。心を病んでいる人、家庭環境が最悪な人、体が弱くて自力ではどうにもならない人、自力で生活はしているがそもそもカツカツで、コロナによる不景気が直撃して生活がままならなくなった人……色々である。彼自身、公演が出来なかったりしてダメージは受けているだろうけれど、生活が元々苦しい庶民が受けるダメージと違い、今月の食費すら危ないということにはなかなかならないだろう。その彼が、なぜ、苦しくて声をあげている人たちを批判するのか?――あなたは、昔は、最も弱い立場の人たちに視線を向けていたはずなのに。宗教や戦争の犠牲になる弱者たち、祝福されない誕生を迎えた子供、死を思って生きる人、麻薬におぼれた人……そこに善悪の概念こそ持ち込んでいなかったけれど、苦しみに鈍感な人ではなかったはずなのに。なんで、どうして。……ダメだ、止まらなくなってきた。兎に角、安倍だのスガだのに戻ろう。この現状に関してだ。
 この状況で、流石にキリトも、安倍は頑張っていなかったし、スガも頑張っていないことに気付いているだろうと……期待してしまった私がいけなかったのである。

 ある時、TLに彼の呟きが目に入った。

「一年後も、緊急事態宣言とはね!」

 それ見たことか――と、悲しいのと腹が立つのとが混じった気持ちが湧いた。そして、あなたも、私も、その他大勢の有権者が、現在の状況に対して大いに責任があるという思いがこみ上げた。なるべくしてなったのだ。有事の際、画期的な対策をうつだけの能力がある政府を育てられなかったのだ。ハッキリ言って、キリトみたいな、大規模ではないけれどファンの大半が信女みたいに彼を崇拝しているようなコミュニティーの大将が、10代20代くらいのファンに与える影響を考えれば、「安倍さん頑張ってる」「野党は批判ばかり」みたいなことを、大して知りもしないのにポーンと言ってしまうことに、何の罪もないとは思えない。政治的発言をするなとは思わない。客観的根拠を提示して、その上で言って欲しいのだ。頑張ってると思うけどな~とあなたが言えば、安倍さん頑張ってるんだ~と選挙権を持ったばかりくらいの人が思っちゃったりするんだよ。かつて、小泉氏はやる人だと私が思い込んだように。自分に影響力がないと思ってはいないでしょう。
 直接リプする気は流石に起きず、モヤモヤした気持ちのまま、そんな気持ちを込めた引用RTをしてしまった。

 そして、後日、そういえばこの頃キリトの発言流れてこないなーと思い、検索してみると……たどり着けない。オフィシャルのほうからいってみて、漸く、ブロックされていることに気が付いた。

 ……え、あのキリトが。喧嘩なら必ず買うという性格のあの人が。一ファンの引用チェックして、ブロックしたの?マジで?批判されて許せなくて?え????そんなヘタレじゃなかったよね……あれ???

 神がかっていたあの人は、誰だったんだろう。私にとっては、殆ど生き神さまで、でもお茶目で、かっこいいけど可愛くて、自分の少し格好悪い部分も笑い話にしちゃって、ラジオなんかでは私の投稿も読んでくれたことのある気さくな一面もある、気の良い人。――多分、どれも間違いではなく、そして、今回、ちょっとした批判が許せずブロックした意固地さも、事実なのだろう。そして、失望し、ひどく幻滅した私は、未だに泣くこともできずにいるのだが、兎に角、嫌われてまで応援するほど健気ではいられないし、苦しいけれども、ここで「卒業」(この言葉は、とても嫌いだった)するしかないらしい。とはいえ、好きで聞いていた作品まで否定する必要はないと思うから、それはそれという感じだが、当分は痛みを伴うから暫くは忘れるように心がけるつもりだ。

 確かに、彼は以前、「去る者追わず、来るものはたまに拒むかも知れない」といっていた。それは彼の自由だ。
 でも、彼を絶対に批判しない、彼の言うことやることならなんでも褒めて賛同する従順な羊ちゃんだけが欲しいのか。そういうことだったのか。彼の言動に誤りを認めたら、それを批判してはいけないのか。批判の仕方が気に入らなかったんなら、どうすればよかったのか。というか、そもそも、そんなことでファンをふるいにかけるのなら、はじめから「俺の信条に文句のあるやつは見るな」とでも言っておいてくれればいいし、不快なリプやRTはブロックしますと宣言しておけよとは感じる。嫌がらせや脅迫をしたわけではないし、彼は言葉と音で世界を作る人なのだから、一度発された言葉は必ず波紋を描いて、人の心に何かを齎すことを理解しているはずだ。彼の言葉に何を感じ、何を語るかは自由だし、それでファンを選別するような行為には心底がっかりした。

 でも、あなたの才能は本物だし、私の青春が、あの素晴らしいライヴ体験に彩られていたことは事実。だから、これまでありがとうと、さようならを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?