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障害者と健在者が入れ替わった瞬間

私の生涯2回目のフルマラソンは、東京マラソンでした。しかも東京マラソンが始まって第二回目。

その頃はまだ筋肉がついていなくて、フルマラソン42.195kmのうち、30kmくらいに差し掛かると、股関節が激しく痛み出し、走ることができなくなっていました。

足を地面に付くたびに、衝撃が股関節に響く。
走りたいけど走れない。歩くしかなくなります。
そのうち足を運ぶだけでも痛い。
体のバランスが崩れて、えっちらおっちらと歩くことになります。

ゴールはしたいのですが、体は走りたいのか歩きたいのか止めたいのか…もう分からなくなっている苦行です。

30kmを超え、35kmを超え…さらに進むと、私のような練習不足者が道路の脇にうずくまったり、しゃがんでいたり、それはまあ悲惨な姿がたくさん見られます。
まるでゾンビのようですw
走り込みが足らないから、筋肉が付いていなくて、どうしようもないんですね。

するとそこに、後ろから「通ります!通ります!」という声が。
振り向くと、伴走者を伴って走る盲人ランナーでした。

通ります、と声をかけているのは伴走者ですが、そのペースは盲人ランナーの方のペース。
颯爽と一瞬で走り過ぎて行きました。

思わず見惚れてしまいました。
なんて素敵な走りっぷり…!
あれは、盲人の方、ですよね…信じられない。

その時気付いたのは、障害者と健在者が入れ替わっていること。

普段、健在者で生活に不自由のない私たちですが、その時は歩くのもやっと…。健在者も障害者も、紙一重なんだなぁ。

未だにその時走り去った盲人ランナーの光景は、キラキラした映像で蘇ってきます。

ちなみにその後、私はマラソンのレースは何度も完走し、ボストンマラソンも走ることができました。走り込みをすれば、わたしも記録を狙うランナーとして走ることができると知りました。

そして、伴走者として走り、外苑前10kmのレースで、伴走した方が優勝したことがありました。
でもその時、視覚障害の女性には、「あそこは人がぶつかって怖かった」等々、厳しい感想もいただきました。
伴走者は本当に難しい。安心して最大の力を発揮してもらうには、もっと一緒に走らなければ。そんなふうに反省や焦りを感じました。

その後引越して、伴走会に出られなくなってしまい、彼女とも走れなくなってしまいました。
いつか自分のランが、役に立つ機会がまた訪れることがあればいいなぁ。

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