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タマクロー氏に届け、この想い!初めてのチョコ作りと格闘した6時間30分

 2月11日、ある人物に思いを馳せてチョコレートを作ることとなった。

 事の発端は、1月に開かれたOWL Magazineのオンライン飲み会。初参加&最年少ということもあって少し緊張していたが、皆さんがすごく優しく接してくれたおかげで、思っていたよりもすんなり会話に入ることができた。

※ちなみに、この2日後には20歳のAC長野パルセイロサポーター、のんちゃんさんがメンバーに加わった。若い……!



 そして、メンバーの方たちと次の記事のネタについて話していると、突然代表の中村慎太郎さんが僕に「ニャホ・ニャホ・タマクローについて書いてみたら?」と提案してくれた。


にゃほにゃほたまくろう?なんだそれ?


 初めて聞いた単語だったので、正直、このときは「ニャホ・ニャホ・タマクロー」を珍しい猫の種類かと思った。しかし、他の人たちはその単語を聞いて笑ったり「懐かしい」と言ったりしていたので、おそらく猫ではない。

著者:中村慎太郎
OWL magazine代表、株式会社西葛西出版代表取締役社長。サポーターの耳元で、「文章を書こうよ、You才能あるよ!」と囁くのが趣味。東大大学院仕込みの地獄の添削で、アマチュアをプロレベルまで促成するのが得意。最近フットゴルフにはまっている。

 
 直後に、中村さんがトークルームにある記事を張った。


 どうやらニャホ・ニャホ・タマクローというのは人名で、ガーナサッカー協会の元会長らしい。Wikipediaを見てみると、2005年3月に放送された『トリビアの泉』で紹介され、日本で一躍有名になったようだ。当時6歳だった自分は番組の存在すら知らなかったので、当然彼の名前を聞いたこともなかった。

 その後タマクロー氏についての話は2、3分程度で終わって別の話題へと移り、約2時間後にオンライン飲み会は終了。

 楽しかったという気持ちもあるなか、「ニャホ・ニャホ・タマクロー」という妙にふんわりした語感がかすかに頭に残ったまま眠りについた。

 その語感は朝目覚めた後も残っていたため、翌日にタマクロー氏について調べてみることにした。

 すると、『トリビアの泉』に出演した際の映像にたどり着いた。興味がある人はYouTubeで「ニャホニャホタマクロー」と検索してほしい。

 早速動画を見てみるとーー。



か、可愛すぎる。なんだこの人……。


 初めて喋っているところを見たのだが、「あいむ にゃほにゃほたまくろー」という、肩の力が一気に抜けるような挨拶で心を鷲掴みにされた。こんなに可愛いサッカー協会の会長がいていいのだろうか。

 さらに、そのほんわかした見た目や、わざわざ日本から来てくれたからという理由で『トリビアの泉』のスタッフを自宅に招いたという心温まるエピソードも相まって、気付けばタマクロー氏の虜に。定期的にTwitterで彼のことを調べるようになっていた。


 ちなみに今月はサッカー協会の元会長として、ガーナのスポーツ番組でパネラーとして呼ばれていたらしい。3月にカタールW杯出場をかけて強豪ナイジェリア代表と対戦する母国のために尽力しているのだろう。

※アフリカのW杯最終予選はリーグ戦形式ではなく、残った10か国が5組に分かれてそれぞれホーム&アウェー方式で2試合対戦。勝者が本選へと出場する。




 そしてオンライン飲み会から10日ほど経った2月上旬、スーパーで買い物をしていると、「そういえばもうすぐバレンタインだな」と気付いた。何気なくお菓子が売ってある場所に足を運ぶと、ガーナ(商品名)のチョコレートが並べられている。

 このときすっかりタマクロー氏のファンになっていた僕は、「ガーナ」という文字を見て彼のことを思い出し、「タマクロー氏は、バレンタインデーについてどんな思い出があるのだろうか?」とふと疑問に思った。

 ガーナ(国)のバレンタイン事情は全く分からないが、おそらく思春期のタマクロー氏も世の男性と同じように、2月14日はドキドキしながら学校に行っていたはずだ。

 きっと当日のカバンはスカスカで、休み時間のたびに自分の靴箱とお道具箱を確認し、帰りの会が終わった後も用事がないのに教室に長時間残っていたのだろう。

 しかし、そんなタマクロー氏も今年で80歳。あくまで妄想に過ぎないが、もしかするとここ数十年は本命のチョコをもらっておらず、若い日のトキメキを忘れているかもしれない……。



ならば、僕がタマクロー氏に向けてチョコレートを作ろうではないか。



 もちろん本人にチョコを届けることはできないが、いちファンとしてタマクロー氏への愛心を形にしたかった。それに、僕は去年の夏に振られており、特に親しい女性もいないため、今年は何ももらうことはないだろう。自分向けのチョコも作ることができて一石二鳥だ。せっかくなら、タマクロー氏のイラストが描かれたものを作ってみよう。

 何となく思いついた企画だったが、このときはまさか6時間半にも及ぶ戦いが待ち受けているとは知る由もなかったのである――。




料理も描画もできない僕が見つけた希望のレシピ

 チョコレートを作るには、当然ながら「料理力」が必須だ。

 しかし僕は普段、全くと言っていいほど料理をしない。1人暮らしを始めた大学生のころからすき家・丸亀製麺・ほっともっとに頼りきりで、チョコレートは1度も作ったことがない。

 自宅で使う調理器具といえばカップ麺を食べるときに必要な電気ケトルだけだ。炊飯器や電子レンジ、フライパンなどはもはや置き物になっている。いまの自分に作れる料理は「ごつ盛り 塩焼そば」くらいしかない。



 加えて、イラスト付きのチョコとなると「画力」も重要になる。

 しかし残念ながら、僕は絵心も持ち合わせていない。すごく下手というわけではないが、何も見ないで上手く描けるのはドラえもんくらいしかない。



 ここで自分の画力を再確認するため、記憶を頼りにピカチュウとマリオを描いてみたがこのありさま。ポケモンファンとマリオファンには大変申し訳ない仕上がりだ。マリオの方にいたっては、アンパンマンの顔を焼いているおじさんみたいになってしまった。



 こうして自分の料理力と画力を振り返ってみると急に自信がなくなってきたが、諦めるにはまだ早かった。イラスト付きチョコレートの作り方を調べていると、いとも簡単に作れそうなレシピにたどり着いたのである。


 記事の冒頭に書かれてある「イラストが描けなくても簡単にできる」という言葉がとても心強い。

 どうやら自分で絵を描くことなく、印刷した写真の上にクッキングペーパーを透かせて線をなぞるだけでいいようだ。画力なんて必要なかったのである。しかも、チョコは湯煎で溶かしてその線上に乗せるだけ。料理力も大して求められない。


 こうして、諦めかけていた僕のもとに希望のレシピが差し込んできた。これなら作れそうだ。やってみよう。


いきなりトラブル発生。チョコ作りは甘くない


 まずは材料を揃えるため、10日の仕事終わりにスーパーマーケット「LIFE」へ。


 記事に書いてあった
・チョコレート(ホワイトとミルク3つずつ)
・ボウル
・ゴムベラ
・クッキングシート
・爪楊枝(チョコで線画をなぞるときに使う)
を購入した。合計で5000円くらいの出費になってしまったが、タマクロー氏のことを思えば安いものだ。

 そして翌日の昼過ぎに、顔写真を印刷するべくファミリーマートへ。


 さあ、これで準備は整った。いよいよイラスト付きチョコレートを作っていく。まずはタマクロー氏の写真の上にクッキングペーパーを敷いて線をなぞるところからだ。しかし、出だしから最大の問題が発覚してしまう。




タマクロー氏が透けてくれない。



 突然のトラブルに、思わず「どうぇっ」みたいな変な声を上げてしまった。画質が悪いからなのか、原因は分からないが、大まかな輪郭とメガネ以外は何も見えない。さすがにこの事態は想定していなかった。絵が下手な自分にとってはかなり大きな試練だ。

 一旦画質の良い別の写真を印刷して、それを透かせて描くことを考えた。しかし、個人的に1番可愛いと思う写真を選んでいたので、やはりそこは譲れない。腹を括り、線でなぞることは辞めて、自分の手でタマクロー氏を描くことにした。

 そして書いては消してを繰り返すこと約2時間。タマクロー氏の絵が完成した。目がさっきのドラえもんの絵の影響を受けてしまったが、僕のなかでは80点ぐらいの出来となった。

※チェックマークが付いている部分は、後でホワイトチョコで塗りつぶす箇所


 続いてホワイトチョコを溶かし、イラストを裏返して線画をなぞっていく。レシピが載った記事に「ここからは根気のいる作業」と書いてあったがまさにその通りで、かなり神経を使う作業だった。

 細すぎず太すぎず、ちょうど良いバランスになるように線上に乗せていかなくてはならない。特に目や鼻の穴など細かい部分にはかなり時間を要した。結局、この工程には2時間半もかかった。



 これが冷えて固まるまで1時間冷蔵庫に入れておく。その間に下地となるミルクチョコを溶かしておいた。

 そして1時間が経過した後、先ほどホワイトチョコを乗せた線画の上にミルクチョコを上乗せする。これを再びで1時間寝かせて、あとは完成を待つのみだ。



 冷蔵庫を覗き込み、ミルクチョコが固まったことを確認して、いよいよクッキングペーパーから剥がしていく。ここで割ってしまっては一巻の終わり。たとえ割れなかったとしても、ホワイトチョコの線画がミルクチョコのせいで溶けていても台無しだ。


 胸をドキドキさせながらチョコをゆっくりクッキングペーパーから剥がしていくと……。




大好きなタマクロー氏がそこにいた。


 料理初心者にしては悪くない出来栄えだ。チョコ単体で見ると誰だか分からないが、写真と並べてみるとそれなりに似ている。




 14時からスタートして20時半までかかってしまったが、どうにかしてイラスト付きチョコレート作りの挑戦は成功。タマクロー氏への愛がガーナに届くことを願いながら、翌日に美味しくいただいた。


 OWL Magazineの読者の皆さんも、好きなサッカークラブのロゴや選手の顔をイラストにしたモノを作り、推しへの愛を形にしてみてはいかがだろうか。

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