「感情化」する社会で個人が取るべき合理的行動について

最近、SNSのタイムラインやネットニュースそして大手メディアを見ていても日本社会が感情的な方向に向かい、合理性が失われているなと感じる。
最近でいえば、日韓関係についての話題はそれの最たるものの一つかもしれない。
「韓国をホワイト国から除外する」というニュースが連日あらゆるメディアを賑わしている。

感情的に考えれば日本や日本の世間がとっている行動というのはよく理解できる。
「そもそも原因は韓国にある」「韓国から不利益を受けてきたことに対しての報復」「日本は間違っていない」「懲らしめなければ調子づく」
まるで個人間の問題かのような感情的なワードが並ぶ。
もちろん韓国サイドも同様の感情的反応はたくさんある。

その是非、つまり論としての正しさの議論はここでは取り上げない。それはもうやり尽くされていると感じるので。
ここで述べたいのはそれが本当に合理的行動かという観点である。

特に今回は経済、安全保障という国家にとって非常に重要な点について考えてみたいなと思う。
まず、経済についてだが、今回の措置について何かメリットはあるのかという点についてである。
半導体製造、そして半導体を利用した製品がsamsung、LGといった韓国メーカーが大きなシェアを占めていることは説明は必要ないだろう。
そして、その産業において日本メーカーはすでに実質的に国際的な大型シェアの競争には参加していない。
また日本国内においてそれらのメーカーはグローバルと比較してマーケットサイズも大きくなくかつかねてよりシェアを取れていない。
つまり、内需でもグローバルでもそれに競合するメーカーはほとんど今回の措置で利することはないと考えられる。
一方で、今回の対象となったフッ化水素に代表される半導体製造に用いられる原料の製造メーカーはどうかというと全く事情は異なる。
グローバルで大きなシェアを持つ顧客との取引に大きなマイナス影響が出る。短期的な影響だけでなく、今回の措置への対応で韓国内や他国からの調達が進めば、恒久的な切り替えが出る可能性もある。
もちろんメーカーもそれに対して無対策というわけにもいかないので、韓国への生産拠点の設立や第三国での生産という手段に切り替える可能性もある。
その辺は以下の記事がよくまとまっているので、より深く構造を知りたいという方はそちらをお勧めする。

https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/korea-trade/

一方で予想された自体ではあるが韓国で日本製品の不買運動が始まっている。アサヒビールやユニクロなどすでに大きなマイナスが出ている企業もある。

つまり合理的に考えると今回の措置は明らかに日本経済にとってマイナスが大きいと予想される。
もちろんそれ以上の打撃を韓国経済は受けるだろう。

つまり、今回の措置は自らの経済にマイナスになったとしても、韓国経済に打撃を与えるための措置だと考えられる。
「韓国に思い知らせる」「懲らしめる」といった感情的措置の側面が強い。

しかし合理的措置とは言い難いと感じる。

安全保障面はどうかというと分かりやすい点で言えば、東アジアの火薬庫化している北朝鮮に対しては基本的に協調路線を取る必要がある利害で一致している。
好む好まぬに関わらずアメリカ含めて協調路線でいかざるを得ないのは明らかです。
しかし、「ホワイト国から外す」という措置は安全保障上の理由が一義的には使われているため、パートナーシップに対しての毀損が起こることは間違いないと考える。

これもそもそも「現状もパートナーシップには大きな疑義を日本は感じているから関係ない」「韓国となんかやっていけない」という議論は現実的に北朝鮮というそれよりはるかな大きな安全保障上の課題を抱える両国にとっては、感情的には正しくとも全く合理的ではない措置だと言える。

長くなるので割愛するが、よく同じ構図になぞらえられる米中貿易戦争は感情的に見せかけて、その実非常に合意的な判断が走っているなと感じる。
外交なので係争を回避し続けることは不可能だと思うが、係争をするのであればなおのこと合理的判断を政治をし続ける必要があり、「感情化」することは避けなければならない。
そして、その参政権保持者としては自己の利益のためにも国家が合理的に判断することを支持するようになればと思う。
先日95%がこの措置に賛成という調査を目にした時に、「感情化」する社会に一石を投じることは今必要とされているのではと感じた。

最後に、二項対立の図式で捉えたり、私の出自を元に「韓国政府に肩入れしている」と捉えるのはまさに感情的な判断だと思うので、
自分が生まれ、育ち、今は離れている日本という国や社会に対してシンガポールという超合理的国家に住んでいる身から一観点として書かせてもらったものなので、
それに見合った受け取り方をしてもらえればありがたい。
中身をきちんと読んでもらえれば日本にも韓国にも肩入れしている話ではないと理解いただけるはずである。

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