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mirumeが『非効率なカフェ』を運営する理由

mirumeは、「CHA-NOVATIVE Cafe & Store」を掲げる、新しいお茶を提案する日本茶専門店です。「朝ボトル」や「フルサポートでお客様に淹れていただく日本茶カフェ」など、今までにないサービスやご提供方法で新しいお茶の魅力をお伝えしています。

おはようございます。mirume店主の松本です。
今日は私たちmirumeが「『非効率なカフェ』を運営する理由」について書きたいと思います。

私たちが行う活動の全ては「衰退するお茶業界に歯止めをかける」という目的で行っているため、他の記事も読んでいただいた方にはクドいかもしれませんが、まずはお茶業界の現状をお伝えさせていただきます。
すでにご存知の方は目次から【『非効率なカフェ』の非効率なところ3選】まで飛ばしてください。


お茶業界の現状

お茶業界は60歳以上が茶葉消費の約6割を占める業界です。そして消費量は綺麗に年齢に比例しています。つまり若い人ほどお茶を飲まない傾向にあり、(雑な計算ですが)それは20年後にはお茶の消費量が半分以下になることを示しています。

またお茶農家も10年で大きく減っています(「経営体数」というのは、お茶を主の生業としている法人や個人事業主の事で、兼業農家を除いて計算するためこのような呼び名になっています)。
一方で茶栽培面積の減少が16%にとどまっているのは、1つあたりのお茶農家の規模が拡大していることを示しています。
※栽培が難しくなった農家から譲り受けたり、代理で栽培したり、お茶農家が共同で1つの法人を設立するなどがあります

このように、どのデータを切り取ってもお茶業界は非常に厳しい業界であることが分かります。

そんな中で、私たちが『非効率なカフェ』を運営する意味と想いについて、これから書いていきます。

『非効率なカフェ』の非効率なところ3選

①天皇陛下に献上したお茶を850円という破格で提供する

私たちmirumeは「お茶とお菓子で1000円」という価格を意識しています。
若い方にもお茶を飲んでもらおうと思った場合に、1000円前後が『学生でも気軽に友達を誘える価格』かなと考えています。
そのため、(損得でお茶を選んでほしくないという思いもあり)あまり私たちから謳うことはないですが、天皇陛下に献上したお茶でさえ急須で850円の価格でご提供しています。

②スタッフが淹れ方を説明しながらお客様に淹れていただく独自のスタイル

日本中を探しても、mirumeのカフェはかなり特異な存在です。
わざわざスタッフがメニュー説明の際に「急須では1煎,2煎, 3煎とお湯の温度を変えて、同じ茶葉でも温度による味の変化を体感していただけます。」と日本茶の楽しみ方を説明し、急須をご注文のお客様には『最後の1滴を注ぎきるまで付き添って説明』をします。

これは『少しでも美味しく飲んでもらいたい』という思いからだけでなく、私たちのカフェには『急須を初めて見る』というお客様も少なくないため、淹れ方の紙を置くだけでは不十分だと考えるからです。
未知の道具を使う際にはおそらく説明書だけでは分かりづらく、実際に寄り添う事がベストだと私たち考えます。

③お茶を飲まない人に届ける

普段お茶を飲まない人にお茶を飲んでもらうのは本当に大変です。
「カフェ」と検索しても膨大に存在する名古屋のカフェからmirumeを見つけることは難しいと思います。
それでも私たちmirumeのカフェでは、『お茶のヘビーユーザーをメインターゲットに置かない』ということを頑なに決めています。

あくまでもカフェでのメインのお客様としてイメージしているのは、『普段お茶を飲まないひと』。

これもひとえにお茶業界の30年後を守るために「お茶を飲む人を増やす」ことに重きを置いているからです。
すでにお茶を飲む人にお茶を販売することは、既存のパイを奪い合うだけで、真にお茶業界の将来を考えるのであれば、同業者からパイを奪うのではなく、そもそものパイを大きくする必要があると信じています。

ラーメン屋を開業するときに、ラーメンを食べたことがない人に向けてラーメンを販売・宣伝することがないように、お茶もきっと、「すでにお茶が好きな人」に届ける方が届きやすいのだろうと、理解はしています。

それでも私はお茶農家に生まれた者の責務として、将来の茶畑と日本の古き良き景観を守りたいと考えています。

一般的な『日本茶を飲めるお店』の分類

提供するもので分類した場合、大きく以下のように分けられます。

①抹茶ラテやパフェをメインに取り扱うお店

②本格的な日本茶を提供するお店

さらに「②本格的な日本茶を提供するお店」を、お茶の提供スタイルで分類した場合、以下のように分けられます。

②-1  店主(スタッフ)が淹れて顧客に提供する

東京/三軒茶屋にある『東京茶寮』さん

②-2  淹れ方の紙などを渡し顧客自身に淹れてもらう

東京/新宿区にある『茶々工房』さん(もず様撮影)
東京/新宿区にある『茶々工房』さん(もず様撮影)


『非効率なカフェ』が生んだ奇跡の空間


mirumeのカフェは日本で唯一ではないか、というほどお客様の層が特殊です。
ラテやパフェを置くわけではなく、高級な日本茶専門店にするわけでもなく、新しいファッションとして打ち出すわけでもなく。
ただただ、急須を中心に茶葉から抽出するお茶のみを提供し、メインのお客様は20-30代、しかも普段お茶を飲まない(飲まなかった)方々。

こんな日本茶専門店、どこを探しても他にありません。
私たちmirumeは、お茶農家3代目という立場から完全に独自の道を行きます。

そういえば、先日「ベンチマークしている会社はありますか?」と聞かれましたが、パッと浮かびませんでした。
誰もやっていなくてもお茶の将来のためになることなら積極的に挑戦する、それが私たちmirumeのお茶に対する姿勢です。

mirumeには、高校生のリピーターさんも、大学生のリピーターさんもたくさんいます。皆さま、mirumeに急須でお茶を飲みに来ます。
若いお客様が急須でお茶を飲む姿に驚かれることも多いのですが、これがmirumeの日常です。

『次の世代を育てる』

家業として茶業を担うということは、いっぱい稼ぐという事ではなく、次の世代にお茶を繋ぐということが大切だと考えています。

「ラテはないんですか?」「パフェもないですか?」「コーヒーは?」と何回聞かれたか分かりません。それでも頑なに、茶葉から抽出するお茶だけを提供し続けるのは、本当に本当に茶畑を残したいと思っているから。

そして、祖父と父が残してくれたものを次の世代に繋ぎたいと思うから。
次の世代に繋がるお客様にお茶を丁寧に届け、一緒にお茶を楽しむことことが、私たちの仕事だと考えています。

初心者マークのようなmirumeのロゴに込めた思いは、何かを教える・教えられる関係ではなく、私たちもお客様と同じ目線で一緒に楽しみたいということ。


ロゴは「若い茶葉」と「初心者マーク」を模している

最後に

私たちはmirumeのカフェを通して、『お茶を飲む人を増やす』ことを意識しています。60代以上が約60%の消費を担うお茶業界において、次の世代に繋ぐことは必須であると考えています。すでにお茶飲む人にお茶を売るというパイの奪い合いではなく、新しくお茶を飲む人を増やすことでお茶業界の衰退に歯止めをかけたいと考えています。


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