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熱しやすく冷めやすい

生まれてこの方、何か一つのことに夢中になったことがない。初めて習ったバスケだって、最初こそ興味があったが、しばらく続けたら、どうでも良くなり辞めてしまった。典型的な熱しやすく冷めやすいタイプなのだ。だからこそ、将来に不安を覚え、自分を知ることで、さらなる恐怖を目の当たりにするのだ。
高校選びもなんとなく。それなりに偏差値の良い学校に入学できれば良いとだけ思っていた。

入学後に出来た友達は、既に将来を見据え、大学を決めていた。毎日熱心に勉強をする友人に、辛くないかと聞いたら、将来に向けて勉強することは楽しいと語っていた。
自分には何もない。改めてそう感じる。

人生で初めて出来た彼女は、同級生の子だった。なんとなく可愛いなと思って、なんとなく一緒にいる時間が増え、なんとなく付き合った。彼女は、良く笑い、一生懸命で、自分の性格とは真反対だった。こんな自分でいいのか、そう思ったこともあったが、なんとなくで交際は続き、大人になった。


彼女に結婚について聞かれた。


僕は何か一つのことに一生懸命になれるわけでもないし、今の仕事もなんとなく就いて、なんとなくやってるだけだから、お金も稼げないし、いつクビになるかも分からない、そんな僕と君は結婚したいのかい?

じゃあ、貴方は私と別れたいの?

そうとは言ってないけど、、、

一緒にはなれない?
私は貴方のいない未来が見えないよ。
貴方は?

え、いや、なんだろ
君と離れたことがないから、君のいない日々を考えたことがないというか、、、結婚ってなんだろうっていうか、、、

ほら、答え出てるじゃん。貴方は一生懸命になれないって言ってたけど、私に一生懸命になってるよ。
私も貴方に一生懸命になってるけどね。


人生で一度も一生懸命になったことがない僕が、初めて彼女に一生懸命になっていたらしい。気づかなかった。可愛く笑う君が隣に居ることが当たり前になっていたから。たしかに、他の誰かと君が結婚するなんて嫌だなとは思う。
自覚した途端に、胸の奥深く、何かが疼くような感じがした。君の笑顔が、熱しやすく冷めやすい、私の呪いを解いていた。そして咄嗟に口にするのだ。

結婚しようか。

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