それを花微熱と呼ぶのだ、今日から。
いま僕は、花微熱にかかっている。
慢性的な頭痛、喉の痛みとかゆみ、目のしぱしぱ、そして鼻水が止まらないか、まったく詰まっているかどちらかのマイ・ノーズ。
この原因は言うまでもなく花粉である。
飲み薬、点鼻薬、目薬、マスク、スプレーマスクをもってしても、コテンパンにやられている。
この症状が続き、風邪のひきはじめのような微熱を感じるようになった。
僕はこの花粉による微熱を、花微熱と呼ぶことにした。読み方は「はなびねつ」。花という文字を入れるとなんとなくロマンチックな感じが出るのが不思議だが、ただの重度の花粉症だ。
昨日は大阪に泊まり、朝パンパンにむくんだ顔で箱根へ向かう。新大阪から小田原までの東海道新幹線でポケットティッシュがひとつ半なくなった。
もうなにも考えられない。今日は無理です。そんな気持ちで小田原でレンタカーを借り、いじけながら箱根に車を走らせる。小田原は晴れていて、みな薄手のコートで街を歩いている。くるりの「ソングライン」を流しながら車を走らせていたら、ふと車窓から見える景色に息を飲んだ。
桜が咲いている!
わ、ここにも!
小田原すげえ!河津桜かな、きれいに桜が咲いている!
そして、一番驚いたのはこれだ。
満開。
長い冬が終わり春が顔を出して、花が咲き始めている。これからの季節、いろんな花がどんどん咲き始めるだろう。
花を見つけるのがうれしくて、いつもより少し熱をあげて街を歩いていこう。花を見つけるたびに熱が少し高まっていく。
僕はこの「花を愛でる微かな熱意」を、花微熱と名付けた。
気付くと、花粉症の症状が少し良くなってきた気がする。桜の効用か薬の効果か。
どちらにせよ、いま僕は、花微熱にかかっている。
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