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塚本邦雄『ことば遊び悦覧記』


和漢洋に及ぶ深い教養。一読すぐそれと分かる強靭な文体。小説から評論まで幅広いジャンルを自在にまたいだ旺盛な作品群…もはや達人や巨匠、といったくらいでは収まらない、「日本語の怪物」としか呼びようのない存在がいて、私にとっては石川淳とこの塚本邦雄がそうです。

本書は古代歌謡から現代詩に至る作品群から塚本が選び抜いた言語遊戯の作品をまとめたアンソロジー。いろは歌のヴァリエーション、物の名前を織り込んだ和歌の数々、回文など先人たちの洗練された遊び心がどのページにも躍動しています。

中でも圧巻なのは碁盤や山形に言葉を配した「形象詩」の一群でしょう。いわゆる「カリグラム」や「タイポグラフィ」ですね。塚本自身も本書の中で、藤原定家等の歌を散文詩に翻案し、かつシンメトリカルな幾何学的図形に配置した創作を披露しているのですが、よくぞここまでのものを思いつき、作品化したものだと、感嘆を通り越して畏怖すら感じてしまいます。まさに帯で竹本健治が述べてるように「宝典である以上に毒の蜜」なのです。

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