人材はスキルの境をこえて組織をわたる

今朝は、目についたニュースから。

日本の伝統のある家電メーカーで権限がある役職に、外部から人材を採用するという取り組みも気になったし、入った人の前職がGoogle Home関連で今の自分に熱い分野っていのも気になる。ただ、今日はキャリアの話を書こうと思うから、スマートホームの体験談はまた今度にしよう。

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パナソニックは、社会人になったころ最初に入社したIT企業のビッグクライアントだったので馴染みがある。それに大学時代は経営者の話を本で読むのが好きで松下幸之助さんに興味があったからという理由もある。家にある家電は昔から、そして今も、いくつかはパナソニック製品だった事も馴染みがある理由のひとつだ。

そもそも、僕が社会人になって初めて訪問したお客様かもしれない。もちろん、先輩の後ろを見習いでついて行っただけなのだけど。
たまたま経営コンサルタントを呼んでワークショップをする時で、自社の経営状況についてスラスラと答える頭の良い人たちの集団に出会って、世の中ってこんなにレベル高いの?と驚きつつ、ビジネスマンとして憧れを持ったのを覚えている。「社会」については、その後に、自分も含めてピンキリだなといろいろなことを経た結果に気がついた。ご愛敬。

そんなパナソニックも、社会人として横目で見ているあいだに、業界全体の変化もあって色々と浮き沈みはあった。それでも、いまも生き残って存在感を放つ姿には頼りになる先輩の様な面影を感じる。

記事を読むと、いまは様々な会社で活躍した実力者をマネジメント職に招き入れているらしい。最も日本的で家族主義的で人の出入りが少ないメーカーの会社と思っていたのに、外部登用が進んでいるのは驚きだ。

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今回記事になった、松岡陽子さんは前述のとおりグーグル社から転職して来た。「ロボット工学の専門」で、前職ではバイスプレジデント(執行役員)を務めていた。専門スキルを持ち、さらにマネジメントスキルも備えている。そして、パナソニックでは以下の通り。

松岡氏はパナソニックの役員待遇である「フェロー」に就く。入社後も米シリコンバレーを拠点とし、現地採用の技術者を中心に数十人の組織を設ける。

ある程度の決裁権も持った、専門家として独立した組織を持つ。といったところだろうか。既存の組織に入って部門長などになったとしたら、馴染むための期間などもあるだろうし、外部委託の研究者などの立場だと社内を動かす力がなくなるから、「ちょうど良いところ」なのだろう。

最近の会社は役員待遇や執行役員、マネジメントの役職を使って専門とマネジメントスキルを兼ね備えた人材をうまく仲間に引き入れる事が多くなった。特にベンチャー企業はそいういった動きは顕著だ。少し前までは、メルカリなどが有名だったし、それこそnoteを運営するピースオブケークも今日の発表はこれだ。

もしかすると、以前は「社員」か「外部委託(パートナー企業、協力企業)」に分かれるしかなかった関わり方が、少しづつ権限をグラデーションにして、中間の役割として成り立つ様になってきたのかもしれない。

会社で起こる事業も、プロジェクト型で案件ごとに人が集まって、いつか終わりがくる形のものが増えたし、社内でも初めて一緒に仕事をする様な事が多くなっている。外部の専門スキルとマネジメントスキル(あるいは調整能力)を持った人材を入れても、昔とくらべて機能しやすいのかもしれない。

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そんな時代にいろいろなチャンスを掴みやすい人材は、松岡さんの様に深掘りした専門スキルの上にビジネス能力を持った人なのかもしれない。いわゆるT型のスキル開発ができた人だ。

いまのビジネスは本当に広くて複雑で「変化が早い」領域についてカバーする事が必要になった。だから、これまで問題に対して単一スキル(に近い)での職種の人材を組み合わせて組織を組んで対応していたのが限界がきている。特にリーダーとなる人間は、広い範囲を深くカバーできる様なスキルを求められる。そんな人は、そうそう社内で育てる事ができない。

専門スキルは、分野にもよると思うが、大学や大学院できちんと学んだくらいの年単位で積み上げた知識と、さらに社会に出てその分野で成果を出した経験があるレベルくらいが求められる。そんなに簡単に身に付けられる話では無い。

そういうと、「大学の選択で人生終わるのか」となるが、社会人になってからも学ぶことはできる。人生の中である程度働く時間が残っている人は、これからますます社会人になってからの勉強の重要性も増してくるんだろう。
自分も、今の会社に入ってから未来のキャリアで必要なスキルを考えるうちに、社会人大学院のグロービスに通うことにした。学んだ事はすぐに仕事で使うことになったが、おかげでコンサルタントとして成果をあげることができている。

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T型のスキル開発で考えれば、何を主にして何のスキルをを広げるかというのは、機会もあるし、難しい問題だ。考えるヒントとしてはTakramの田川さんなどが言う「BTC型人材」が参考になると思う。

先日、出版記念セミナーにも参加させてもらって話を聞いたが、今はBTC(ビジネス、テクノロジー、クリエイティブ)の間を越境し(兼ね備え)て俯瞰でビジネスを考えられる人が事業を加速できるというのも、社内にBTC型人材を育てて事業を将来も成長し続ける仕組みを作るというのも腹落ちだった。BTC型人材に育つには、BTCのうち一つの領域を深めて、他の二つにも広げていく(セミナーで登壇してた、田川さんと深津さんは、CからT、Bと広がった)という話だった。

個人的にも、大好きなインターネット領域にいながら、市場価値を高めようと転職や社内でのキャリアチェンジをして色々な経験を積んで、主にBの領域を深めていって、今の会社ではデータ分析の分野でTの部分を少し深掘りした。さらに、自分のカバー範囲を広げようと思った時に「デザイン」の世界に関心を持って社会人向けのデザインスクール(WEデザインスクール)にも通うようになった。まさにBTCの道を歩んでるなと思う。

だからといって、自分がキャリアの終わりまでに外部登用される様な市場価値のある人材になれるかは未だに、たぶん永遠に、わからないわけなんだが。

今日も、悪あがきは続けようと思っている。


おわり。


#COMEMO #NIKKEI
#毎日出す 20191017 DAY25

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