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クラシック音楽

クラシック音楽を、自分の意思で最初にきいたのは、
小学生の終わり頃だと思う。
父親のLPレコードのコレクションから、
ベートーヴェンの最後の作品、弦楽四重奏曲、op135を取り出して、
プレーヤーに乗せて、針を落とした時だろうか。
著名な作曲家が最後に書いた音楽、という点に興味を引かれたのだと思う。

奇妙な音楽、というのが第一印象。
褐色から濃い緑色に伸びていくような、最初のフレーズの印象と、
達観したような、平易な旋律が続く第3楽章以外は、
どこか戸惑うような音楽の連続だった。

         *
自分の意思で、チケットを購入し、最初にきいた演奏会は、
1980年3月。
若杉弘/ケルン放送交響楽団によるマーラーの第5。
東京文化会館のトイレには、小学校の玉入れで使うような
竹で編んだかごが設置されていたことを覚えている。

マーラーのカリカチュアを想わせる、若杉の精緻な指揮と、
一発勝負の実演で、これだけの完成度の音楽を築き上げる
オーケストラというものに感銘を受け、演奏会に行くことが
日常のことになった。

ジュリーニ/LAフィルのブルックナー7番とか、
朝比奈/大阪フィルによるマーラー7番をきいた時代の「夏」のことを、
1980年代初頭の音楽体験を、
「公園口」の意匠が、いつの間にか変わった現在の上野駅を
見ながら思い出すことがある。


2023年7月

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