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バレエにおける心理描写の歴史〜お衣装の変遷が教えてくれる〜


みなさんこんにちは、ソノです♡
最近、久しぶりにアントニー・チューダーの作品を観たので、アントニー・チューダーの代名詞「心理バレエ」とクラシックの関係性についてお話ししたいと思います。

アントニー・チューダーは20世紀のバレエの振り付け家。
代表作は、『リラの園』や『葉は色褪せて』、『ダークエレジー』などでしょうか。
20世紀のバレエにしては振り付けは、クラシックのポジションやフォームを踏襲したスタイルです。

【画像】スターダンサーズバレエ団『リラの園』


彼の作品は"心理バレエ"と評され、クラシックのそれよりより綿密な心理描写を可能にしたと言われています。

本当に可能になったのかどうかについては、さておき……(ソノ的にはほんまかいな…?という気持ちは多分に残っています)


今回は、バレエにおける心理描写の手段と方法についての歴史を分析しようと思います。


バレエにおける心理描写はストーリーの展開に関わります。起承転結も転がなければ進みませんから。悲しい!嬉しい!といった感情表現は物語のキーポイントにもなるでしょう。



さあそこで、これまでクラシック・バレエにおいて心理描写を担っていたのは"マイム"です。




マイムは、それ自体が固有の身体言語です。
胸に手を当てて"私"、薬指を指差して"結婚する"といった感じ。
この身体言語が理解できれば、観客ともストーリーや喜怒哀楽を共有できるのです。

マイムだけでは、バレエを観た!感を保証できませんので、そこで挿入されるのはディベルティスマン(ダンスのみのパート)。


前回の投稿でもお話ししていますが、
このマイム + ディベルティスマンの形式が何度も繰り返される。
これがマリウス・プティパがつくった"クラシックスタイル"の正体と言えるでしょう。

(細かいことは、以前の投稿で…↓↓)


バレエにおける心理描写。これまでそれを一身に担うのは"マイム"でした。
しかし、20世紀になって、バレエリュスにおいてミハイル・フォーキンが登場してからというもの、マイムなしでストーリーのある作品を作る方法が模索されるようになりました。



マイム + ディベルティスマンの形式、クラシックスタイルからの卒業です。

アントニー・チューダーも例外ではありません。
マイムを使わず、心理描写を試みたのです。
短いパ・ド・ドゥを相手を変えて頻繁に挟み込むことで、登場人物同士の関係性を複雑な関係に思わせる。
本来のクラシックのポジションより、大きく首を傾けさせて相手を探るという様な感じでしょうか。


しかし、"振り付けのときの動き"以上に、マイムなしでの心理描写に役立っているものがあると思っています。
それは、20世紀以降、新たに登場したものでもあります。



チュチュではないスタイルのお衣装です。

そう、20世紀以降のバレエのおおきな特徴のひとつは、チュチュにこだわらなくなったことです。
これは、少しバレエをかじったことがある人なら、ピンとくるでしょう。

【画像】マリインスキー バレエ『シェヘラザード』


マイムをなくす方向に進んだバレエ。
それがクラシックスタイル脱却のための手段でした。
しかし、これまでのポジションやフォームを使う以上、心理描写にも限界があります


そこを補うかのように、バレエは登場人物それぞれのパーソナリティを主張するようになりました。

それをわかりやすくわかりやすく表す風貌が必要になってきたのです。
結果としてチュチュにこだわることをやめ、
バレエシーンでなくとも見かけるような、ドレスのような衣装が採用されてきたのでしょう。

20世紀以降、衣装はキャラクターがわかりやすいものになりました。
これは、ただ単なるチュチュというクラシックスタイルからの脱却のアピールではありません。

心理描写の方法が変化していった結果とも言えるのです。


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