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【連続小説】騒音の神様 39 神様、盛山の名前の呼び方を変えてみる

 盛山が仕事から帰ってから、神様と盛山はパン屋さんに朝食を買いに出かけた。二人でぼちぼち歩きながら、朝の散歩気分で。神様は、盛山にちょっと気になっていたことを聞いた。「盛山君の下の名前、ハナモリやったかな。」盛山は答える。「そうですよ、花守です。お花の話に、守ると書いて花守です。」神様は、「そうやな、そうやった。ええ名前やなあ。花を守る。」盛山は嬉しそうに「ええ名前でしょ。自分でも気に入ってるんですよ。」神様は少し照れながら「いや、前からな、盛山君のこと下の名前でよんでもええかなあと思っててな、」と言う。盛山は「ええですよ、ハナモリって言うてくれたら。」と言った。神様は、「ほなええかなあ。ハナモリ。花守。いや呼び捨てはちょっとでけへんな。僕は、いや、わしはどうしても君とか、さん、とかつけんと呼ばれへんかな。ハナモリ君。花守君。どうかな、花守君。」盛山は笑いながら「花守君と呼んで下しいよ、なんか俺もええ感じですよ。」と言った。神様はそれを聞いて「ほな、これからは花守君、とか、ハナモリ、とか、まあ気が向いた感じで呼ばせてもらうわ。」と言った。神様は、前から言いたかったことが言えてすっきりして背筋が伸びたような気がした。胸をはって、顔が空を向いた気がした。空はとても良い天気で、気持ちの良い青空が広がっていた。神様は空を見上げながら、「もうすぐ夏やなあ、ハナモリ、花守君。でも、もうすぐ夏やと思うと梅雨が来るんやなあ。」。神様は、盛山の呼び方を試すように話しながらも気分が良かった。気分が良いままパン屋へ到着し、あれやこれやと悩みながら食パンとあんパンを買った。食パンは、長いままの一本を買い、盛山が、いや花守が手にして帰った。

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