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話題のGLP-1作動薬ダイエットについて

先日上記ニュースが流れました。

日本医師会の宮川常任理事は、記者会見で「『やせ薬』として不適切に使用されている実態を憂えている。適応外使用が常態化している医療機関への納入を控えてもらいたいとお願いしている」と述べ、不適切な使用で薬が不足する事態が続いていると指摘しました。

GLP-1受容体作動薬で主に日本の美容クリニックで使われているのは
①サクセンダ(リラグルチド)→皮下注射
②リベルサス(セマグルチド)→内服

の2つだと思います。少し解説します。

4. 効能又は効果
2型糖尿病
5. 効能又は効果に関連する注意
本剤の適用は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること。

体感ですが70%くらいの患者さんで、体重減少の効果が表れているように感じています。すごい薬だなぁと。3ヶ月フォローした患者さんの中には-4kg,-4kg,-2kgと非常に満足されている方もいました。

サクセンダとリベルサスどっちがいいのか?という点について僕はリベルサスを勧めるようにしています。根拠は下記論文です。Lancetという非常に信頼できる雑誌で取り上げられています。
Oral semaglutide versus subcutaneous liraglutide and placebo in type 2 diabetes (PIONEER 4): a randomised, double-blind, phase 3a trial

経口セマグルチドのリラグルチド皮下注に対する一次エンドポイント非劣性を認め(ETD:-0.1%)、両者ともプラセボより優れていた。体重減に関しては経口セマグルチドはリラグルチド皮下注・プラセボよりも優れていた。安全性・忍容性は両薬とも同等であった。

Lancet. 2019 Jul 6;394(10192)

もう一つ重要な論文があります。PIONEER 9という試験です。
日本人2型糖尿病患者を対象とした、プラセボ、リラグルチドとの比較検討試験

体重のベースラインから投与後26週までの変化量は、プラセボ群と比較してリベルサス®14mg群で有意に低下し(p=0.0073)、3mg群及び7mg群とプラセボ群に有意差はなかった(それぞれ、p=0.0970、p=0.6090)。一方、リラグルチド0.9mg群と比較してリベルサス®7mg群及び14mg群で有意に低下し(それぞれ、p=0.0312、p<0.0001)、3mg群とリラグルチド0.9mg群に有意差はなかった(p=0.3233)。

Yamada Y et al.:Lancet Diabetes Endocrinol 8(5):377-391, 2020

上記をまとめると
①サクセンダよりリベルサスの方が体重減少効果がある。
②リベルサス14mgで効果が認められる。
③プラセボでも結構痩せるようだ。
④リベルサス14mgは26週間で平均-2.4kg低下があった。
と結論付けられてます。
プラセボとリベルサス7mgが効果変わらないという所がなんとも味わい深いです。

さて一方、ニュースの通りダイエット目的の適応外使用によって、本来の目的である糖尿病患者に薬が渡らない問題が起きています。美容クリニックで働く身としては糖尿病患者さんに非常に申し訳ない気持ちです。ダイエット目的の患者さん、自由診療を取り扱うクリニック、製薬会社と利害が一致してお金が動いてしまうので中々現場でこれをコントロールするのが難しいのが実情です。どこのクリニックも処方しているのだから、という過当競争状態です。可能なら国に自由診療を取り扱うクリニックへの薬剤供給を停止するなどそもそもの根源をコントロールする対応をしてもらいたいと感じます。何もクリニックはダイエット薬だけで売上を出しているわけではないですから、稼ぐ方法は他にいくらでもあるだろうと思います。病気で困っている患者さんを第一に考えるのが当然かなと。低血糖など怖い副作用もある薬ですので、個人的には安易な処方はしない方針でしばらく対応していこうと考えています。

社会背景含めた現時点のまとめです。
①ダイエット目的でリベルサス、サクセンダを安易に使うことは控えましょう。
②上記薬剤を個人輸入・売買などで使用することは本当に危ないので絶対にしないでください。
③適正使用に際しては、必ず本薬剤の特性を熟知した医師と相談の上で使用して下さい。低血糖というのは非常に恐ろしい副作用です。


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