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『死亡遊戯』再発見@『猛龍生誕80周年 ブルース・リー4Kリマスター復活祭2020』

龍哥自身の出現が作品全体尺の半分も無いということで映画の一作品としては正直なところあまり評価してこなかった。若かりし頃は龍哥が好きすぎて、いわゆる「そっくりさん」は評価にすら値しないと思っていたのだけれど、大人になって所謂「そっくりさん」として起用された俳優たちのそれぞれの役割りや他でのキャリアを個別に考えることができるようになって評価が変わってきた。作品自体に対しても然り。

しかし今回じっくり観直してみて、「いやー、実はかなりカネも掛けてるし案外細かいところまで頑張ってるやん」と思える発見などあり。7月24日の元町映画館での献花式&ミニ・トークで話した内容もあるけれど、時間の都合上話切れなかったこともあるので、徒然なるままに書いてみよう。

*カラートーン
これまでの『死亡遊戯』はカラートーンが明るすぎてビリーのサングラス奥の目の動きがハッキリ見えて興醒めするということで今回はカラートーンを暗めに調整してみたのだそうだ。
本編の雰囲気づくりには功を奏したが、作品全体を一気にトーン調整してしまったことでオープニング・クレジットがガツンと暗くなり、「Music John Barry」などは全く見えなくなっていて残念だった。次に手を加えて上映できる機会があったらオープニング・ロールと本編のカラートーンを別々に処理して欲しいところである。難しいだろうけれど。

*オープニング・ロール
オープニング・ロールの作りに関してはこれまで全く気に留めていなかったのだけれど、奇しくも今回のトーン・チェンジに留意したせいで見えたことがある。それは「案外よく考えて丁寧に作り込んである」ということ。
それぞれのスタッフ・クレジットの画面が各人の業務に関連した物を出している。例えば Director of Photography GODFREY A. GODAR の紹介画面は鏡に映る人物が龍哥、チャック・ノリス、龍哥と変わることでカメラワークを象徴し、Film Editor ALAN POTTILLO の紹介画面は牌九のような札が数枚出てきて、それがフィルムのコマに見立てられている、そしてMusic composed & conducted by JOHN BARRY は蓄音機。カジノに蓄音機があるのかどうか、という所はちょっと引っかかるが、とりあえず雰囲気を壊さぬように考えました、というのはわかる。これだけの編集をしようと思ったら、結構お金かかっているはず。

*本編
冒頭でも書いたが、私はこの作品を長らくあまり評価してこなかった。
今回も本編が始まると、即いつものごとく退屈してしまって「あーあ、私はなんでこんな映画を観る羽目になってるんだろ」と思いつつ居心地悪いままとりあえずスクリーンを観ながら座っていた。

しかし、食事を終えたビリーとアンが車で夜の街を流すシーンで目覚めた。
これ、寶勒巷じゃね?私の愛する70年代の香港がスクリーンに生きている!
昼間のシーンも私の愛する古き良き香港がそこに!
いまだに香港といえばこれでしょう、のあちこちから突き出てくる看板の森がそこにはある!
そういうことか!龍哥が出てくるまでは、この私が愛した古き良き香港を楽しめばいいわけだ!

余談ながら、いまだに日本人の思う香港の街並みのテンプレートは、看板の森をギリギリで抜けるバスの屋根で成龍が跳ねたり伏せたりするあの絵らしく、香港に撮影に来るクルーが必ず毎度例に漏れず「香港らしい風景撮りたいんですよね、ほら、あの看板がいっぱいある…」と言うのよね。
「あんな風景はもう無いんですよ」と言ってもなかなか信じない。
看板が残っているストリートで絵的に一番マシな場所に連れていって「これで精一杯です」と言うと驚かれる。
日本人は世界から30年取り残されているということを自覚した方がいい。

話を戻す。
龍哥が出てくるまでの間のこの作品は、「あーあ、私はなんでこんな映画を観る羽目になってるんだろ」が今回の鑑賞で、「ああ、そうそう、あの頃はこんな感じだった」「ここは会社帰りにしょっちゅう歩いたな」「私がいた90年代でもこの店はすでに変わっていたな」などとノスタルジーに浸る為のものということに昇級して一件落着。

*コリーン・キャンプ
今回の大収穫かもしれない。
私は完全に龍哥目当てだし、彼女の豊満な肉体にも興味が無いので、これまで全く注目しなかった。が、今回気付いてしまった。
「結構ええ芝居するやん?」
ということに。目の前でビリーが叩きのめされるのを見て叫ぶシーンはイマイチだけれど、ビリーの葬儀でジムに向かって泣き叫ぶ芝居はなかなかええやん。時々あかんけど時々ええ芝居しはるやん。

そして何よりも精神病院でのシーン。
マジで「すっぴん」!
一応ハリウッド女優でっせ。確かに、入院中という設定だけれど、女優はたいがい「すっぴん」設定のメイクをするもの。しかし、彼女はこのシーン、マジで「どすっぴん」ですやん!これ、多くの男性ファンは気付いていなかったらしい。まあ確かに普段自分が化粧するから「すっぴん」になったらどうなるかわかるというのはあるでしょうね。
いやしかし、今回、演技力を見直したけれど、「どすっぴん」でカメラの前に立つ女優魂は見上げたわ。

*男性俳優連中の髪型
ピカイチで私の目を釘付けにしたのはカールの髪型。耳を出さずに髪を残しているからか、正面から見ると耳あたりの髪がフワフワと膨らんでいる。カールの場合は特に地下室のファイトの時。もう、笑い過ぎて自分が何の映画を観ているのかわからなくなる。
なぜ耳に被るところがモコモコフワフワなの?なぜそんな髪型?
このフワフワ、良く見るとスタイナーもなのよね。スタイナーは顔の輪郭が長いからカールほどモコモコフワフワに感じないけれど、よく見るとやはり耳に被るところはモコモコフワフワ。
当時の流行のヘアスタイルなのだろうけれど、いやしかし、なぜなのか?

*マカオの車なのに左ハンドル
ドクター・ランドの家に向かう途中、舞獅の一団のせいで車がスタックする。この時の車、ナンバー・プレートはマカオで使われるMM始まりの番号なのに、左ハンドルなのはなぜ?マカオも香港と同じく左側通行の右ハンドル。ところがドクター・ランドののこ車は左ハンドル。当時このようなアメ車的な高級車がマカオに無くて撮影用にアメリカから持ってきたのかしらーなどと推測する。

そしてまた脇道にそれるが、この車がスタックする場所は、マカオで最も有名で定番の観光地「大三巴=聖ポール大聖堂跡」の脇道。石を嵌め込んだ壁に見覚えがあって、このシーンでもまた目が覚めた。マカオ撮影コーディネイターもかなりの数やったので、やはりマカオの街並みに見覚えがあった。今は「恋愛横丁」と呼ばれる通りに逸れていくところの石壁。壁は今も当時のままだけれど、その向かい側は全部住宅だったのかー!と新発見。マカオの撮影コーディネイトまたやりたいなぁ。

とりあえず今回の発見は以上。
龍哥の作品は観る度に新しい発見があるので、次に『死亡遊戯』みた時にはまた違った発見があるに違いない。

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