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ドラッカーのマネジメントについて学ぼう -⑤マネジャーとはどんな職なのか

さあ、金曜日だ。
金曜日は、ドラッカーの「マネジメント」について学ぶ日だ。

この本は非常に緻密に書かれており、記事としてはドラッカーが書いた内容を順になぞっていくようなものになってしまうかもしれないと思っているが、可能な限り現代的な解釈をして、わかりやすく解説を加えていきたいと思っている。

ご興味おありの方は引き続きお読みいただけると幸いだ。


マネジャーの定義

「マネジャーとはどういう職種であるか定義してみてください」と言われて、パッと回答が出せる人がどれくらいいるだろうか。

この定義をややこしくしている要因が2つある。
ひとつは、昨今のビジネスシーンにおいて、マネジメントを行わない(部下を持たない)「専門家」が組織の成果に貢献しているケースが増えていることだ。そういった「専門家」は一人で会社の売上や利益に大きく貢献するので、会社は彼らになんらかの肩書を付けて高い報酬を与えなければならない。なので多くの会社は彼らに便宜的に「マネジャー」という肩書を付ける。ボクもそのひとりだ。
しかし、ここで定義したいのは(組織の管理や育成を行うチームである)「マネジメント」の実行部隊としてのマネジャーのことだ。そうなると「会社に対する貢献度」は外して定義しなければならない。

そして、もうひとつはマネジャー=そのチームのボス(一番偉い人)という考え方だ。肩書だけであれば、会社はそれを誰にでも発行することができる。ここで定義したいのはマネジャーは何をする(べき)人なのかだ。なので、「会社から権限を与えられているという事実」も外して考えよう。

ドラッカーは、マネジャーという職種を2つの役割と5つの仕事と1つの資質で表現している。

マネジャーの2つの「役割」

①投入した総資源よりも大きなものを生み出すことができる生産体を作り上げること。
つまり、マネジャーは自分たちの会社の資源(特に人的資源)を最大限に生かすことを役割として持たなければならない。そして、資源(特に人的資源)に投資した金額よりも大きな収益を得るために尽力しなければならない。
また、マネジャーはマネジメントの一員であるので、以前書いた「マネジメントの3つの役割」を果たさなければならない。マネジメントの3つの役割は以下の通りだ。
1. 組織の目的を明確にし、その目的を果たすこと
2. 組織に属するひとりひとりを育成し、人材を活かすこと
3. 組織が社会に与える問題を解決し、社会に対して貢献すること

②今目の前に必要なものと、将来的に必要なものとを調和させていくこと。
会社は事業を続けていかなければならない。今目の前で起きている小さな問題が将来の致命的な問題に発展するかもしれない。また、今投資をしなかったことが、ビジネスの発展のスピードを緩めてしまうかもしれない。今と将来のどちらを犠牲にしても組織は危険にさらされることになるかもしれないが、往々にして投入できる資源は限られているものだ。
なので、マネジャーは今日のために将来犠牲にしなければならないもの、将来のために今日犠牲にしなければならないものをそれぞれ計算し、それらの犠牲を最小限に食い止める役割を果たさなければならない。

マネジャーの5つの「仕事」

マネジャーに共通する5つの仕事は以下の通りだ。
これらの内のどれかひとつでも欠けている場合、その人は適格なマネジャーとは言えない。また、これらの5つ以外の仕事(例えば、顧客との打ち合わせだったり、定例の報告書の作成だったり…、もちろんそういう仕事も重要ではあるが)を優先して、本来マネジャーとしてやらなければならない仕事をおろそかにしてしまう人もいるので注意が必要だ。
①適時チームの目標を設定する
②目標達成のために最適な組織編成をする
③動機づけをするためのコミュニケーションを取る
④チームメンバー個々の評価測定をする
⑤チームメンバー個々のスキルを引き上げるためのサポートをする

マネジャーに必要なたったひとつの「資質」

ここはドラッカーの言葉を借りよう。
「マネージャーは、人という特殊な資源とともに仕事をする。人はともに働く者に特別の資質を要求する。人を管理する能力、議長役や面接の能力を学ぶことはできる。管理体制、昇進制度、報奨制度を通じて人材開発に有効な方策を講ずることもできる。だがそれだけでは十分ではない。根本的な資質が必要である。それは真摯さである。」

マネジャーに必要な能力は、そのほとんどを誰かから教わらなくても、実務の中で学んでいくことができる。しかし、真摯さは学ぶことはできない。真摯さは、その人が先天的に備えていなければならない資質なのだ。逆に言うと、真摯さを備えていない人をマネジャーにするべきではない。

マネジャーの職務設計の考え方

マネジャーの職務について、正しく職務設計するための公式はない。しかしマネジャーの働きを妨げるような間違いを避けるための方法論について、ドラッカーは以下の6つを挙げている。

①職務の幅を狭く設計すること
→ここで言う「幅」とは成長のためのバッファだ。現在のその人が何の努力もなく実行できるような仕事ではなく、その人の能力より少し高い(5年以上かけてすべてを身に着けられるような)職務を与えるべきである。そうでないと本人はすぐ欲求不満に陥る。

②補佐という職に就かせること
→「補佐」は、自分で目的、目標、機能を考えることがない職務だ。ボスが必要とすることや、ボスに対して提案してOKが出たことだけを実行するような仕事はその人を堕落させる。ただし、若手の訓練として優秀なマネジャーに学ばせるというのであれば、それは意味を持つが、あらかじめ期間を限定すべきである。

③十分な仕事を与えないこと
→マネジャーが時間を持て余してしまうようになると、部下の仕事を取ってしまう場合がある。それは、部下からの「権限を委譲してくれない」という苦情につながる。また逆に時間を持て余すことに慣れてしまったマネジャーは、働くことの尊さを忘れてしまう。そういったマネジャーは組織にとって害となる。

④頻繁に調整をしなければ進まない仕事を与えること
→マネジャーとしての本来の仕事以外のところに時間と労力を割かなければならないような仕事は良くない。仕事と会議は同時にできず、また会議を招集するためにも準備に時間を要する。そういった仕事はマネジャーのものではない。

⑤責任がないのに肩書だけを与えること
やっている仕事は今までと変わらないのに、肩書だけ与えるようなことをしてはいけない。報酬を引き上げることをせず、肩書で賄おうとするようなことは論外だ。それは本人に期待を与えることになり、将来的に問題が発生する可能性が高い。

⑥過去に存在した優秀な人が確立してしまった難度の高い職務に就かせること
まれに、非常にスキルの高い人物(例えば、上記の「5つの仕事」の中の2つ以上の才能に並外れて恵まれた人など)が、偶然生み出した職務が存在することがある。そういった職務は一見こなせそうに見えて実際にはこなせないので、解体(分解)すべきだ。

では、マネジャーの職務をどのような視点で設計すべきかというところだが…

マネージャーの職務を設計するときに必要な視点

まず組織の長は、マネジャーに対して、先に記載した「機能」と「役割」を継続的に行うことができる仕事を設定しなければならない。そして、そのマネジャーに対して彼が負うべき責任と成果を設定しなければならない。そして、誰が上司で誰が部下であるか、また関係しなければならない横の部署(ステークホルダー)を明確にし、彼らがそのマネジャーからどんな情報を提供されることを期待しているのか、そしてその理由を伝えなければならない。さらに、そのマネジャーが必要とする情報はどこから入手することができるのかということも同様である。

そして、マネジャー自身は、自らの仕事を主体的に知らなければならない。そのためには、組織の長から与えられた職務を書き出してみて(場合によっては図にしてみて)、自分自身の立ち位置がどのようなところになるのか、そして必要となる情報、および負うべき責任と成果を理解しなければならない。
ただし、理解しただけでは不足している。マネージャーたる者はこれらのことについて常に考え、組織の長(もしくは上長)に対して、自らの責任と成果について新しい提案をしていかなければならない。

(続きはまた来週)

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