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誰が「物流」を殺すのか - ②物流とロジスティクスの何が違うのか?

さあ、月曜日だ。
月曜日はボクの得意分野の物流について書く日だ。
先週は「そもそも物流ってなんだ?」というテーマで、物流が何をやっているのかを書いた。

今日は「ロジスティクス」について触れていきたいと思っている。


先週の記事の振り返り

さて、先週の記事で、「物流」はざっくりお分かりいただけたかと思う。物流はシンプルに「モノを動かすために必要な業務」を総称したものである。

ロジスティクスとはどのようなものか

一方、「ロジスティクス」とはどのようなものであるか、物流との違いが分かりづらいと思うので、その定義を紐解いていきたいと思う。

そもそも、ロジスティクスとは軍隊の後方支援のことを指していたものだ。ナポレオン時代のフランスが発祥で、戦争を有利に進めるため、武器・弾薬・食料品・医薬品などの物資を効率的に前線に供給する必要があり、そういった活動を体系的にまとめたものが、現在のロジスティクス活動の基になっている。

つまり、「物流」が「物資を供給者から需要者へ、時間的及び空間的に移動する過程の活動」であることに対し、「ロジスティクス」はもっと体系的かつ包括的で、企業(特にメーカーや小売業が)のビジネス拡大の下支えをする活動であるイメージだ。

具体的には、以下の①~④の活動になる。

①戦略

・中期経営計画 >中期物流計画 >年次物流計画の策定
・物流予算および投資計画の策定
・受給および在庫計画の策定
・物流業務の委託計画の策定
・ロジスティクス関連組織の整備
・(必要に応じて)サプライチェーン戦略の策定

②企画

・最適な物流ネットワークの設計
・最適なオペレーションの設計
・最適な情報システムの設計
・必要となる評価指標(KPI)の設定
・契約/支払システムの設計
・人材育成の仕組みの構築
・(必要に応じて)新技術の導入/研究部門の設置

③実行(物流の6つの機能)

・輸配送の実行
・保管の実行
・荷役の実行
・流通加工の実行
・情報システムの実行

④管理/改善

・安全の管理
・物流施設の管理
・委託事業者の管理
・物流コストの評価と改善活動
・物流効率の評価と改善活動
・物流サービスレベルの評価と改善活動

定義を曖昧にする要因

③は「物流」そのものである。
なので「ロジスティクスとは、企業(特にメーカーや小売業が)が物流を経営資源の一つとして考え、事業の拡大に活かすための活動である」と定義することができる。

しかし、物流業≒サービス業であるという考え方になってきた現代においては、物流事業者が③だけを単体で売ることが難しくなってきている。そして、(先週の記事で書いた通り)物流企業は特定の機能に特化している場合が多いので、同じ機能の業態の中では③の部分で差別化を図ることが難しい。
よって物流事業者は「物流」のカテゴリーに②と④の部分を持ち込んで、その部分で同業他社との差別化を図ろうと考える。これが「物流」と「ロジスティクス」の定義が曖昧になっている要因だ。

実際、大手物流企業は②③④をパッケージ化して「3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)」と銘打って、メーカーや小売の企業に提供するケースも多い。

いずれにせよ課題は人材の育成だ

さて、物流がモノを時間的及び空間的に移動する過程の活動であることに対し、ロジスティクスは物流を経営資源の一つとして考え、事業の拡大に活かすための活動であると定義したわけだが…

ロジスティクス活動の①の部分は経営層(および経営に関連する部署)が行うことだ。ここが適切に行われていないなら、そもそもその企業自体に問題がある。ボクは①は経営戦略の一部であって、厳密にいうとロジスティクスの一部ではないと思っている。

そして③の部分はアセットとリソースの問題だ。
物流施設と人的リソース、そして庫内業務を行うためのツール、輸配送を行うための車、そしてそれらを管理するための情報システムがあればよい。これは言い換えればお金の問題だ。その企業の資本の規模感によってできることが変わる。(昨今の人材不足の問題は一旦置いといて…)

重要なのは、②の「企画」と④の「管理/改善」だ。
例えば、②を3PL事業者に丸投げしてしまうと、その3PL事業者に都合の良い設計になりがちで、結果的にロジスティクスの本来の目的を達成できなくなる可能性がある。また③において適切な管理や評価、改善活動が行われなければ、それもまた同様だ。

 メーカーや小売企業の目線から見たときのロジスティクスであっても、物流事業者の目線から見たときのロジスティクスであっても、(事業を拡大するという)目的を達成するために欠かせないのは、②と④を系統立てて理解していて、それをリーダーシップを持って実行できる人材だ。

これは経営戦略の問題でも、資本の問題でもない。
これは人材育成の問題である。

結論めいたことを書くなら、結局先週と同じ内容になってしまう。
「物流」を「ロジスティクス」に読み替えていただきたい。

-- 物流は生きており、その大半を人が動かしているので、「物流を理解する」の半分は「ヒトの行動を理解する」になってしまう。なので、学問として理解しただけでは現場を回すことができず、現場を回すことができない人は上に立つことができないという図式になる。それは、物流を系統立てて理解していて、且つ現場経験も豊富な人材が非常に貴重であり、そのナレッジを持っている人は物流業界のどこに行っても成功する、ということを意味している。-- 


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