2024年 軽商用バンのEV化はどうなる?(前編)
軽商用バンEV化の動き
2023年に準備は進んでいた
今を遡ること2023年5月の話だ。
スズキ・ダイハツ・トヨタの3社が共同で、2024年中に軽商用EVバンの販売を開始すると発表があった。
ベースはダイハツのハイゼット。トヨタ製のバッテリーを積んで、スズキはダイハツからOEM提供を受けると聞いている。すでに2023年にプロトタイプの発表がされており、概ね2024年春頃には販売開始するとの情報が入ってきていた。それに対してホンダもEV軽バンの開発を進めており、2023年の秋にはプロトタイプの試乗会を開催している。
2024年は軽商用バンEV化元年
つまり、2024年の軽商用バンのEV化の展開は、軽バン業界シェア1・2位のスズキ・ダイハツ連合に対して、ホンダが真っ向勝負を挑むという図式になるはずだった。
そこに三菱だ。
三菱は軽商用EVでダイハツより先行していたが、軽商用バン自体のシェアではスズキ・ダイハツに遠く及んでいない。そのシェア率が商用バンEV化でどのように変化していくのか。
あと、日本のスタートアップ企業であるASF社が、ASF2.0というEV(車両は中国製)を佐川急便やマツキヨココカラに提供を始めた。コスモ石油がこの車両のリース取扱を開始したというニュースもあり、ASF社の動きも気になるところである。
軽商用EVバン元年となる2024年は、これら4社(スズキ+ダイハツ連合 : ホンダ : 三菱 : ASF)のシェア争いになると思っていたのだが…
ダイハツの大規模不正問題
さて、この軽商用バンのEV化がどのような争いになるのかと思っていた矢先、降って湧いたのが、2023年12月のダイハツの大規模不正問題だ。
この問題発覚によって、現在ダイハツは全ての新車の販売を中止しており、ダイハツ・スズキ共に(2024年3月までに開始すると言っていた)軽商用EVバンの販売を無期限延期すると発表した。
そもそもなぜEV化しなければならないのか
COP21(国連気候変動枠組条約締約国会議)の取り決め
お話しはさらに遡って、2021年10月。
2015年に開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約締約国会議)で採択された2020年以降の温室効果ガス削減に関する世界的な取り決めに対し、日本は2030年までに2021年比で温室効果ガス排出量の46%削減、2040年には完全なカーボンニュートラルを実現すると宣言した。
そのカーボンニュートラル実現の大きなウェイトを占めるのが、ガソリン車をEVに置き換えていくことだ。それはに日本に限ったことではなく、EU諸国などにおいても日本以上に乗用を含めた自動車のEV化を急ピッチで進めていることは皆さんもご存じだろう。
運送部門が占めるCO2排出量
2021年の環境省のデータによると、日本全体の中で運輸部門のCO2排出量が17.4%、さらに分解すると貨物自動車のCO2排出量が6.9%を占めている。
現在のEVのバッテリーは、大型トラックが長距離巡行できるほどの性能ではない。日本のメーカーではやっとISUZUが2tトラックの一般販売を開始した程度だ。それに対し軽商用バンは近距離輸送に特化した運送形態であり、積載重量も軽い(最大積載量350kg)ので、トラックに比べると圧倒的にEV化しやすい。現在日本国内に軽商用バン(黒ナンバー登録されているもの)33万台ほど存在しているらしいので、「貨物輸送」というカテゴリーの中で、目の前の効果を期待することができる部分だったのだが…
そういった背景の中で、ダイハツがこのタイミングで新車販売(もちろんEVを含んでいる)をストップしたというのは、(2021年に対して)2030年に温室効果ガス排出量を46%削減する、という目標の実現に大きな影響を与えたと思う。だって2030年まであと7年しかないからね。
(後編に続く)
2024年 軽商用バンのEV化はどうなる?(後編)はコチラ↓
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