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嬉しい気持ちにさせる。そこに理由はいらない

『このチラシから注文すればピザが安くなります!!』
『今だけ入会手数料無料です!痩せるならいま!』

ピザに興味はないし、ジムも通っているから間に合っている。

決して僕に向けられたメッセージではない。

マンションの郵便受けには、行き先を間違えているチラシがたくさん入っているものだ。

「おや?」

行き先不明なチラシで溢れた郵便受けで、僕だけに向けられたハガキを見つけたのは、仕事終わりのことだった。

自宅に戻ってハガキを改めて確認すると、この前お願いした引越し屋さんからの手書きメッセージだった。

本日はありがとうございました!
〇〇様の見積もりと引越しを担当させて頂き、誠に光栄です!
〇〇様とは一期一会の機会なので出会えてとても嬉しいです。
優さしく、対応も良くしてくださり、作業がしやすかったです!差し入れありがとうございました。

決して綺麗な文字とは言えない。
日本語もちょっとだけ拙い。

でも、このメッセージは丁寧だ。

不器用で丁寧なボールペンで書かれたメッセージが、僕の心をじんわりと温めてくれた。

一期一会

たしかにその通りだ。

メッセージをくれた引越し屋さんと僕が交わることは、おそらくもうないだろう。

でも、その1回を大事にしてくれたことが僕は嬉しい。

このメッセージを書くのにかかった時間はどれくらいだろうか。

「住所はこれで合っているかな?」
「そういえば差し入れしてくれたな」

そんなことを思いながら書いてくれたことを勝手に想像してしまう。

そんな幸せな想像が仕事の疲れを癒してくれる。

たとえばコンビニの店員さん。
たとえば電車で同じ車両になった人。

交わる回数の少ない、顔も名前も過ぎ去っていく人に対して、優しくしたり、嬉しくさせたりする必要はないのかもしれない。

でも、それでも、意味はある。

優しくすることで、嬉しくさせることで、相手は眠るときに少し幸せになるかもしれない。

今日の僕みたいに。

相手に優しくしたり、嬉しくさせたりする必要はないかもしれないけど、それをしない理由もないのだ。

ありがとう引越し屋さん。

あなたが大事にしてくれたように、僕もまた誰かとの出会いを大切にします。

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