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詩、小説、エッセイのようなもの
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女優気取り

来月、22歳になります。
これは21歳のわたしの遺書です。
小説なんか書けなくて、不細工な言葉の羅列になってしまって、
もうどこにも行き場のない断片。

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再演不可能な恋と歪み

再演不可能な恋と歪み

3年前、好きだった人のことを演劇にした 

劇作家志望の男 20代のうちに岸田國士戯曲賞をとるだなんて言っていた
常に他人の自尊心を削りとってぼろぼろにしてくるような奴だった
いつも目が死んでて、でも演劇を語る時だけは爛々と光っていて 
野心だけで生きていた 生き急いでいた 
どうしようもない この人にはいつまで経っても追いつけないだろうなと思った

好きだったと思う 付き合いたかったわけではない

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きみが生まれなかった日

お母さんが泣いていた 
泣きながら叫んでいた 
電話の相手は、おじいちゃんかおばあちゃんだとすぐにわかった
まただ 怖くなった
きみのこと、わたしは何も知らなかった
きみが生まれてこなかったこと

2000.5.9 お母さんはきみを失った

妊娠がわかったのは4.28
検査薬を使ったら陽性で
お母さんは信じられないくらい嬉しかった

まだわたしは1歳で
予防接種が終わってなくて

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弾丸

最後の夜、とうきょうのまち。

薄くつかれたきみの背中を、わたしの弾丸で貫いてやろう、か、どうか、迷っていた。

しんだふりの練習をしているみたいに、対象はゆらゆら揺れている。

わたしは、わたしたちの関係性をいつだってことばになんかしたくなくて、その感覚は淡い靄の中へ行くうちに、透き通っていった。

好きと嫌いの間に挟まっている感情はビニールみたいに薄っぺらくて、誠実に扱うことが難しい。

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私が君のこと可哀そうだって思ってしまうのは、きっと、お母さんが君にごめん、って言ってたからなんだと思う お母さんが、可哀そうだったからなんだと思う お父さんも、ちょっとだけ可哀そうだった でもね、私は私のこと、可哀そうだって思いたくないんだ これって自己中ってやつなのかな、だって、私はなんにも覚えてないんだよ、君が生まれなかったあの日のこと、なんにも覚えてないんだよ、それでも、それでもさ、私は私の

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