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ケルトの薄明


「三人のオービュルンと悪しき精霊ら」
W・B・イエイツ
(芥川龍之介訳)

〈友人から聞いた話〉
一人の憔悴した男が砦の地を掘っている。傍にいた農夫に向かって自分の友人は、あの男は誰だと訊ねた。
「あれは三代目のオービュルンです。」
こういう話を聞いた。
宝が悪い精霊に守られてこの地に埋めてある。その宝はオービュルンの一家に見いだされ、その物になるはずである。が、そうなるまでには三人のオービュルンが死ななければならぬ。
一人目は掘って掘って、宝箱を一目見て死んだ。宝は再び隠れた。
二人目は掘って掘って宝箱の蓋を開けて死んだ。宝は再び隠れた。
三人目は今掘っている。彼は自分が死ぬ事を知っている。けれども、その呪いがその時に破れて、それから永久にオービュルン一家が富貴になることも信じている。

近隣の農夫の一人はかつてこの宝を見た。その農夫は草の中に兎の骨を見つけた。取り上げてみると穴が空いている。その穴を覗いてみると、地下に山積みしてある黄金が見えた。急いで鍬を取りに帰り、また砦へ来てみたが、どうしても、さっきそれを見た場所を見つける事が出来なかった。

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