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いぬのおまわりさん

「いぬのおまわりさん」

作詞 佐藤義美
作曲 大中恩 
1960年 昭和35年


まいごの まいごの こねこちゃん
あなたの おうちは どこですか
おうちを きいても わからない
なまえを きいても わからない
にゃん にゃん にゃん にゃーん
にゃん にゃん にゃん にゃーん
ないてばかりいるこねこちゃん
いぬの おまわりさん こまってしまって
わん わん わん わーん
わん わん わん わーん

1960年代以降、広く歌われている幼児童謡。戦前期にも幼児のための童謡は数多くありましたが「童心賛美主義」の影響で、大人の美意識を満足させるものとしての童謡が作られていました。そういう傾向に対してこの「いぬのおまわりさん」は幼児の心性・心理に寄り添ったものであり、生活感やドラマ性が見受けられます。主人公は幼児の身近な犬と猫であり、擬人化されて犬は「おまわりさん」で猫は「まいご」として登場します。この小さなドラマの内容は簡素で、おまわりさんがまいごを家に届けようと家と名前を尋ねても、こどもはどちらも知らないと泣くばかり。困り果てたおまわりさんも「泣きたい」・・・というもの。幼児には実感を持って認識ができる生活局面です。
この歌は、1960年「チャイルドブック」の10月号に詩曲同時に発表されました。幼児教育的な絵雑誌である同誌とは、知的教育のための一篇として「迷路辿り」の図鑑ページを設け、その説明的な童謡を佐藤義美・大中恩に依頼しました。出来上がった「いぬのおまわりさん」の詩は、当時の幼児童謡の常識からすれば長過ぎたものでありました。短編の声もありましたが佐藤義美の強い意志により、原作のままで発表されました。大中恩の作曲は、音楽的に幼児を考慮した単純的なメロディーに仕上がりました。
今日の幼児教育の現場では、この歌を『幼児の安全教育』の一環に採り入れられています。迷子になった時の《自分の「なまえ」を言えて「おうち」の所在も言える》。

・・・泣いて悲しむこともなく、おまわりさんがおうちに届けてくれる。

時代は移り変わり、「からす」や「すずめ」まで個人情報をお知らせしてはいけない世の中になりました。ですが、この「いぬのおまわりさん」からは、困難な状況になっても助けてくれる人達がいる「平和な社会」を感じます。いつの時代でも幼児達が理想とする社会になれば、と。
「いぬのおまわりさん」が歌い継がれていく理由だと思います。

・・・「まいごのこねこ」
男の子?
女の子?
ストーリーを膨らませるのも楽しい。

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