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【小手先シリーズ】サーキット後半のエナジーマネジメントとファイナルのグラグラとゴーアラウンドについて

今回は、サーキット訓練に関する小手先シリーズです。

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サーキット訓練は、飛行機のライセンス取得の中間目標であるファーストソロ(教官を乗せずに自分ひとりだけで飛ぶ最初のフライト)に大きく関わります。なぜなら、一般的にファーストソロとはサーキットを一周回って帰ってくることを指すからです。

つまり、サーキットにいかに習熟するかが、ファーストソロに早く、安全に出られるかに直結します。サーキット訓練につまづくと、その先に進めないので時間もお金もかかってしまいます。

しかし、サーキットは純粋な飛行機の操縦に加えて、空港からの自分の相対位置の把握や、無線通信、短い時間でのチェックリスト、他機の位置や周りでなにが起こっているかなど、やることが多いため、つまづく学生も多くいます。

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エアラインに入ってからのサーキットはこんな感じでさらに忙しくなります

そこで、今回は多くの学生がつまづくダウンウィンドレグ(冒頭の図を参照)後半から、ファイナルへのエナジーマネジメントについて解説します。機種は、セスナC172やパイパーチェロキーなどを想定しています。

【おことわり】
本稿の情報は正確を期し、技倆の向上のヒントになるよう最大限努力していますが、実際の訓練に本稿の内容を応用する場合は、ご本人の責任において行ってください。飛行機の飛ばし方は、国や学校によって少しずつ異なる場合がありますので、実際に飛行訓練をする際は、その国の最新の法令を遵守し、担当インストラクターや、公式教材を一次情報としてください。本稿の内容によって生じたいかなる損害についても、作者は責任を負いません。

セットアップ・ベース・ファイナルへの流れ

それぞれのフェイズの仕事を、こう考えてみてください。

1. セットアップ=速度(トリム)
2. ベース=高度(フライトパス)
3. ファイナル(センターライン)

1. セットアップ=速度(トリム)

ここでまずスピードを作ります。パワーを絞ると同時に左ラダーとバックプレッシャー、そしてトリムをしっかり決めて。手放しでも70kt(仮に)になるように。固定ピッチプロペラは機速が減るに連れて回転数も減るので、ターゲットのRPMに合わせるのは意外と難しいものです。また、ベースターン中はターンドラッグでスピードが落ちますが、バンクを緩めるとドラッグが減って加速するのでそれも見越して。

ちゃんとトリムが取れて、左ラダーも決まっていて、パワーとコンフィギュレーションを変えなければ、飛行機は70ktを維持しようとします(正確には、その飛行機の持つ固有の静・動安定の性質によって70kt付近をグラグラしながら飛びます)。

練習方法は、ベースからファイナルまでほぼ手放しで70ktで飛べるようになるまでセットアップを練習して、それ以外の出来は捨てることです。早めにゴーアラウンドか、そもそもサーキットではなくエリアに出てひたすらセットアップ練習でもいいです。

2. ベース=高度(フライトパス)

1.ができるようになったら、速度から今度は高度(フライトパス)へ注意を向けます。

どのスクールでも、地上にだいたいの目印をとり、その上を何フィートくらいで通過するようにしましょう、とファイナルの目安を教えてくれると思います。しかし、ここでは高度計に頼らず、できるだけRWYの見え方から「いい角度」を目測できるようになるよう、「目のセンス」を養う努力をしてみてください。RWYに90度角度がついているベースレグが、最もフライトパスを読みやすいのです。

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高度計はあくまで目安です。

また、この高度の判定は、今までの20倍くらいの頻度でやるようにしましょう。ベースを飛んでいる時、外を見ながら連続的に高いか低いかを自問し、パワーで微調整しながらファイナルターンまでに「絶対に」いい位置に入るように努力しましょう。

今までが例えばベースターン後、ベースの途中、ファイナルターン途中の3回くらいのタイミングでフライトパスをチェックしていたとしたら、これを60回やるイメージです。そのくらい頻繁にパスをチェックすると、だんだんずれを早く発見することができるようになります。

「高度計を60回見ろ」ということではないですよ、外の見え方を判断するその自分の意識の頻度を60回、ということです。外の見え方、特にベースからみたRWYの見た目、とくに四角いRWYのひしゃげ具合をよーく観察してください。その高いか、低いか自問する頻度を60回ということです。これをやるためにも、1. でスピードを確実に決めて、飛行機に速度を維持してもらうことが大事です。

3. ファイナル(センターライン)

1. と2. がうまくいけば、ファイナルターンまでにエナジーマネジメントが完了しますので、あとはファイナルをまっすぐ降りることに注力できます。ファイナルターンをバッチリ決める方法は、前回のnoteを参照してください。

サーキットのようなスローフライト時は、方向安定(Directional Stability)が減っているので、アドバースヨーが顕著に出ます。このため、減った分の方向安定を、パイロットが足で補ってあげる必要があるわけです。ラダーをしっかりと使えないと、ファイナルをまっすぐ降りることはできません。

例えば、センターライン上を意識して飛んでいるときに、左にずれたとします。

右にいきたいので右エルロンで傾けて直そうとしますね。すると、アドバースヨーで左にノーズがヨーイングするので、飛行機自体はなかなか右に曲がってくれません。そのうち、飛行機が右に横滑りし始めます。

横滑りによって(曲がりなりにも)センターラインに戻ったとしましょう。そのタイミングでコントロールコラムを元に戻すと、今度は逆方向にアドバースヨーが出て、センターラインの右側にノーズが飛び出します。この、エルロンを戻した時のアドバースヨーはびっくりするくらい大きく出ます。

これを繰り返すと、左へ、右へと、まるで落ち葉のように狙ったラインを挟んでひらひらと飛行機が踊ってしまうのです。

これを防ぐには、左右に踊るノーズをラダーで捕まえます。右エルロンなら右ラダー、左エルロンなら左ラダー。つまり基本のコーディネーションです。特に、エルロンを戻した時のアドバースヨーは意識してみるととても顕著に出ますから、ノーズをよく観察し、動き出した瞬間を足で捕まえましょう。

ラダーを全く使えていない学生に対しては、あえて足を強調するために「ノーズを足でねじ込んでいくように意識しよう」とアドバイスすることがあります。タッチダウンしても「センターラインの上を歩き続ける」感じです。

しかし、これはその人がどの程度ラダーとエルロンの調和が舵の使い方ができているかによるので、一般的にアドバイスすることはできません。あくまでそういうことが起こっている可能性があるという参考情報にとどめ、インストラクターを乗せた状態で少しずつ試してみてください。

足を意識しすぎるあまり、ラダー先行でターンをしたり、コーディネーションが崩れてしまうと本末転倒です。特にファイナルターンの内側ラダーの踏みすぎには十分注意してください。低空での「Skidding Turn」は非常に危険です。

大事なのは、1、2、とわけて仕事をきっちりと片付けることで、ファイナルに入る時点でエナジーマネジメント(速度と高度の管理)が完了させることです。どちらかの仕事をファイナルに持ち越すと、ファイナルが途端に難しくなります。そうなった場合は、潔く早めにゴーアラウンドしてもう一度やり直しましょう。

まずはゴーアラウンドありきで情報をあつめる

風の強い日などは、あえて最初のアプローチでゴーアラウンドを計画し、風の様子を見てから2本目で着陸しても良いでしょう。1本目では、ベースでの追い風や、クロスウィンドの強さ、地表近くの風の巻き具合やウィンドシアを観察します。ここでこうなる、とわかってからアプローチをかければ、成功率が上がります。

このように考えると、普通のアプローチでも周りの状況がよく見えるようになり、常に対策を考えながら飛ぶことができるようになります。訓練の初期から、ゴーアラウンドすることへの心理的抵抗を取り除き、いつゴーアラウンドするべきかの基準をしっかりと持つことは、大変重要です。

がんばりましょう!

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