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栗ぜんざいとは?

これは美味しい記憶だが、苦い記憶でもある。

秋といえば栗。

おばあちゃんの家の畑には大きな栗の木があり毎年栗が沢山実る。秋になるとおばあちゃんは栗ご飯、蒸し栗、栗餡のあんころ餅、そして栗ぜんざいを作ってくれた。

私は栗ぜんざいが好きで毎年の楽しみだった。

そんな私が二十歳そこそこの頃、ある男性と初めてのデートで有名なスイーツ専門店に行きました。少し肌寒くなった季節。アイスやパフェよりほっこりするものが食べたくなりました。そんな私がメニューから見つけた栗ぜんざいの文字。迷うことなく頼みました。

そして数分後、店員さんが持ってきたものは…。

普通のぜんざい…?

(あれ…、私栗ぜんざい頼んだよね?)

「あ、すみません。私、栗ぜんざいを頼んだんですが…。」

「??はい、こちら栗ぜんざいです。」

店員が指し示すのはまさに今目の前に来ているこのぜんざい。

そう、ぜんざいの上に栗の甘露煮が一つコロンと入っていた。

(こ、これが!栗ぜんざい!?)

横の男性もまごう事なく栗ぜんざいだねと言っている。そうか!そうなのか!?世間の言う栗ぜんざいとはこれを指すのか!?

というのも…

おばあちゃんが作ってくれる栗ぜんざいというのが、お湯で茹でた栗に砂糖と塩を入れた100%栗で出来ているおぜんざいなんです。

小さい頃から毎年それ食べていた私はそれが栗ぜんざいだと信じて生きてきました。

「お客さま?大丈夫でしたか?」

「あ、はい!大丈夫です!大丈夫です!」

焦りながら答える。今の私はク、クレーマー…と化しているのでは?は、恥ずかしい。初めてのデートでやらかした…。

なんとも言えない気まずさの中栗ぜんざいを食べる。

帰宅後母に早速その話をすると100%栗のぜんざいは普通は出てこないよとのこと。

まじか。

今まで栗ぜんざいとして食べていたものはとても贅沢な物なんだと初めて知った。

毎年おばあちゃんが栗の木に肥料を与え、栗を拾い、何個もの栗の皮を剥き、時間をかけてコトコトと炊き、私たちに食べさせてくれていたと知った。

なんて貴重なものを当たり前のように食べていたんだろう。

こんなに至福のスイーツはそうそう食べることが出来ないだろう。


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