四之宮早苗

映画が好き 文学が好き 音楽が好き 絵を描いています。

四之宮早苗

映画が好き 文学が好き 音楽が好き 絵を描いています。

最近の記事

カトリーナ

イルマ・ハービー・アーリーン・ブレッド・シンディ、これって何の名前か分かりますか?これだけでは難しそう。では、カトリーナ。これなら記憶にありますよね。2005年にアメリカ・ニューオーリンズを襲ったハリケーン。「カトリーナ」が巨大な勢力をもって襲ってくるなんて、なんだか、それはそれは、私が小さいときに大好きだった「いばらひめ」のソノシートから流れてくる嵐のようで、ドキドキワクワクの幼い私が出会い、記憶の中に積み重ねられてきた物語の断片につながっていく。あの魔女の名前は「カトリー

    • 空には深い海があるよ

      人と人との関係が突然好転することがある。どうしたんだろう。何が原因なのだろう。よくわからなくて不思議な気持ちになる。 人と人との関係が突然悪転することがある。どうしたんだろう。何が原因なのだろう。よくわからなくて不思議な気持ちになる。 私は私で何一つ変わらない。 彼らも彼らで何一つ変わらない。 人と人との間にはたくさんの小人たちがいる。 多くの小人たちは、伝言ゲームが得意だ。 だけど、その中に夢見る小人がいる。 夢見る小人は、いつも空ばかり見ている。 空にはた

      • 私たちは見つめる とめどない悲しみを

        昔 4つの季節はランダムに現れた。 例えば今日は金木犀の香りが漂う。きっと秋なんだろう。この後、どの季節が現れるか正確なことは誰にもわからない。 季節は人々の悲しみの総量によって決められる。 世界の悲しみの総量が半分を下回った時、徐々に気温は上昇し、空気は微かに色を帯び始める。風に追いついた空気が幾重にも重なり合った時、人々は春がやってくることを知る。街ゆく人の挨拶はそれぞれに感じられた空気の色。 「やあ こんにちは。今日は黄緑色のお天気だ。もうすぐ町中に杏の花が降っ

        • 夏 絡まる

          夏が絡まる。 私は海のそばで生まれた。 当時は比較的有名な海水浴場で 夏には売店がたち、飴湯が売られた。おでんが売られた。 桟敷席も作られ、大人たちはビールを飲んだ。 高校野球の熱戦の様子は連日スピーカーから流された。 春には見知らぬ人たちが夏に集う。 秋には金木犀の香りに消え去る人たちが夏に集う。 冬には知らぬふりをしたただの他人が夏に集う。 海は人で溢れた。 夏に集う人々は、同じものを見て、同じ顔で笑うことができた。 大きな船が通ると大きな波に身を委

        カトリーナ

          秋の光が2日戻ってくる

          いつまでも夏のようだと思っていた季節は突然冬になる。もう冬が来たのかと思えば、秋の光がほんの2日戻ってくる。私は金曜日の道を歩いていたのに、私を包んでいたのは土曜日の光でした。時間も季節も何もかもが混乱し、世界は本当は陽炎のような奥行きに満ちていることを私はその瞬間に納得するのです。  私のおばあちゃんは10月30日になくなりました。お葬式が終わり親戚もみんな帰った庭に佇み、私は薄いコートを着て、夕日の沈む空を見つめていました。あれからもう30年近くたちます。その風景とその中

          秋の光が2日戻ってくる

          昔、空には一面の星たちがいたという。

          昔 空には一面の星たちがいたという。 星たちはおしゃべりが大好きだから 遠くの星に「おーい」 近くの星に「ヒソヒソ」 楽しい会話が空一面に黄砂する。 あまりにたくさんの星たちのざわめきは、 やがて流れるように、 積み重なるように、 豊かな階層をもつ音楽となる。 なので地球の人々には 自らが作り出す音は必要なかった。 人々は夜になると星を眺め、 星たちの作り出すメロディーに 身を委ねながら 今を慈しみ、過去を慈しみ、未来を慈しむ。 昔、空には満点の星がいたという。 そんな話は

          昔、空には一面の星たちがいたという。

          「現在はどこだ」友川カズキ断片

          「現在はどこだ!」 私は、私の周辺を漂う透明な過去を凝視する。それらの過去の断片は、夜の闇に光り、私の傍を通り過ぎる。様々な光に反射し、前であるとも、後ろであるとも、右であるとも、左であるとも、すべてでありながら、全てを否定し一つの大きな風景になる。私はその中で、小さく息を吐く。光は私を通り過ぎた人たちだ。彼らはもう微笑むことはない。 「現在はどこだ‼️」

          「現在はどこだ」友川カズキ断片

          蘇るときのしずく

          チューリップの花はありますか 白い花が1本、紫の花が5本、黄色い花が3本あります。 ありがとう お礼を言って受話器を置く。 窓から見える風景に目を移す それらの花が、どんな花々の中に埋もれているのだろうかと 想像した。 紫の3本は入口を入ったすぐそばに 白い1本はテーブルの上に。 黄色い花だけが浮かばない 鳥が飛んでいく。 私の人差し指は唇の輪郭を探る。 これは私の癖なのかしら。 親指は人さし指に絡まり 圧は強く全ての指を連れて頬を押しつぶし、耳を超えて頭上に助けを求める。

          蘇るときのしずく

          安部政権が幕を閉じた

          安倍政権がやっと、やっと、、、、幕を閉じた。 ずっとそれを望んでいたはずなのに、私には5%の安堵と95%の虚無感しかない。 国会中継は見るに耐えなかった。見えすいた嘘の連続。あまりにも酷いこじつけ、論理が破綻したなどという言葉すら使えないほどの絶望的な答弁。理想が地に落ち、誠実さが踏みにじられ、民主主義国家が壊れていく恐怖。政治家も官僚も、国会全体が醜い嘘に包まれた。  コロナ禍が起こり、アベノマスクが配られ、ステイホームで抜け殻のようにペラペラと本をめくる動画が流れ、私は安

          安部政権が幕を閉じた

          山崎正和さんが亡くなった

          山崎正和さんが亡くなった。私はこの方の本も読んでいない。でも教育に関わる役職の中で、光を放つ人だった。 2000年頃、小渕総理の教育再生私的諮問機関から義務教育週2日(もしかしたら3日だったかも)の提案がなされた。学校に行くのは週に2日。そこで基礎基本を学ぶ。あとは地域で学ぶ。チケット制にすることによって、地域の産業も守られる。子どもたちは地域で真に学ぶ。西洋諸国ではすでに行われている。その提案についてテレビでインタビューを受けたのは、山崎正和さんだった。「学校での基礎基本と

          山崎正和さんが亡くなった

          青が好きなのに

          朝晩は随分と涼しくなった。今日もまた蝉の声が鳴り響く。青梅街道を走る車の音。私の部屋は9階にある。道を歩いている時には気にならない車の音が、時に地響きを伴うような音量で私の心を掻き毟る。心はユラユラユラユラ揺れる。右に左に揺れる。ふと思う。心と精神。ん、魂もある。 心、精神、魂 あなたたちは仲良しなの。どんなふうに私の中で動いたり、立ち止まったり、眠ったり、エネルギーをくれたりしているの。そんなことがちゃんとわかれば人の心は壊れないのかしら。私は遠くを走る電車に問いかける。

          青が好きなのに