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インビザライン(マウスピース)での歯列矯正について正直に話す

これは2022年5月にX(旧Twitter)に投稿したものなのだが、未だにたまにいいねやブクマがある。

一定程度需要があるというか、希望がある情報なのだろうか。

コロナ禍に入ってから、私はインビザラインで歯列矯正を始めた。
どうも巷では、従来のワイヤー矯正ではないマウスピース矯正に賛否両論あるらしい。

今回はあくまで一個人の視点から、インビザラインの経験とそれに対する率直な感想を述べようと思う。


矯正を始めるまで

矯正をする決意

大人になってから歯並びの重要性を日に日に強く感じるようになった。

子供の頃は、歯列矯正といえば歯に何か銀色のアレがついて見栄えが悪いやつ、という認識。同級生含め皆すっぴんの素材勝負な世界で、一時的とはいえさらに見栄えを悪くさせるような気がしてしまって、やりたくないなと思っていた。

図:歯列矯正といえばコレのイメージ
出典:Jorge Barrios, Public domain, via Wikimedia Commons

しかし大人になってメイクを覚え、髪を手入れして見栄えを懸命に整える中で、歯並びのどうしようもなさに絶望した。
いくら唇を彩っても、口まわりの歪さはメイクではどうしようもない。根本から直す、つまり歯列矯正をするしかない。

奇しくも世界がコロナ禍に入り、人々の口元は皆マスクで隠れるようになった。これが矯正を始める後押しにもなった。

矯正難易度の高い歯並び

まず手始めに、歯列矯正ができる歯科医院を探し始めた。矯正歯科がある歯科医院自体は巷に大量にあるため、通いやすさを重視しつついくつか目星をつけた。

しかし早速壁にぶち当たった。私の歯並びは矯正の難易度がとても高いということがわかったからだ。

私の矯正前の歯並びは、開咬かいこうオープンバイトと呼ばれるものだった。
上下の歯をかみ合わせても、上と下の歯が接しないという特徴を持つ。

図:おしゃぶり長期使用で開咬を発症した3歳児の歯並び
奥歯は上下かみ合っているが、前歯がかみ合っていない。
こういった歯並びを開咬やオープンバイトという。
出典:PFDS, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

私もこれと同じように、ほぼ奥歯でしか食べ物を嚙み切れない状態で、胃への負担増に繋がる。
また奥歯ばかりが摩耗するため、加齢でまず奥歯が割れたりして使い物にならなくなり、入れ歯になる原因にもなる。

このように健康にも悪いが、審美的にも良くはない。だから矯正したかった。

ところが歯科医院を数軒回ってわかったのだが、オープンバイトは歯列矯正難易度が非常に高いらしい。

そもそもやりたがらない歯科医院もあったし、矯正期間が非常に長くなるうえに、やっても数年で後戻りすると思うよと言ってくるところもあった。

そもそも矯正を始めるまでの難易度が高すぎたのだ。

インビザラインの存在に気づく

それでも諦めきれず、鏡で口元を見る度うんざりしながら懸命に矯正ができる歯科医院を探す過程で、初めてインビザラインというものの存在を知った。

インビザライン矯正とは
透明に近いマウスピース型の矯正装置を装着して歯並びを綺麗にする治療方法です。1997年から独自技術の研究と改良を続けています。

インビザライン・ジャパン株式会社公式サイトより引用
https://www.invisalign.co.jp/consumer/

インビザライン矯正の特長
・歯茎に当たらない自然な付け心地​​
・歯科矯正用に独自に開発した素材で高い予測実現性​​
・世界で1600万人以上の実績*​​
*インビザライン矯正とインビザライン Go矯正の合計(2023年9月末)

インビザライン・ジャパン株式会社公式サイトより引用
https://www.invisalign.co.jp/consumer/

要するに、マウスピースを使って行う歯列矯正だ。

従来のワイヤー矯正と異なり、マウスピースなので付け外しが簡単だ。食事中外して、歯磨きが終わったらまた装着ということができる。
ワイヤー矯正中の歯磨きは非常に手間がかかることを知っていたため、衛生的な意味でも手軽さ的な意味でもこれは魅力的だった。

しかし前述の通り、ワイヤーかインビザラインかという話の前に、そもそも私の歯並びの矯正ができる歯科医院が見つからない……。

症例数と専門性が物を言う

しかし諦めなかった。そして、ようやくインビザラインで歯列矯正ができる歯科医院を見つけることができた。

見つける過程で気づいた、重視すべきポイントは以下3つだ。
そしてこれらはすべて両立しているか、どれも満たさないかの両極端なことが多かった。

  1. 専門医がいる

  2. 症例数がとにかく多い

  3. 適正な費用を要する

1. 専門医がいる

今時、いわゆる町医者でもインビザラインができると謳っている歯科医院は多い。しかし、そこにインビザラインの専門医がいるケースは極めて少ない。

歯医者の中にも矯正ができる歯医者、さらにインビザラインの経験豊富で専門性のある歯医者は少ないのだ。

結果的に、インビザラインを専門に行っている歯科医院を探した方が早かった。

2. 症例数がとにかく多い

さらに症例も大事だ。つまり私の場合、インビザラインでオープンバイトを矯正できたという過去の実績がたくさんある歯科医院かどうかを重視した。

これは不正咬合こうごう(歯並びの悪さ)の種類にもよるかもしれないが、オープンバイトはそもそも症例が少ない。インビザラインでとなるとなおさらだ。
だから過去に矯正できたという実績があり、その実績の再現性が期待できるところの方が安心できた。

3. 適正な費用を要する

これは一時期ニュースになった件も絡む。
歯列矯正や美容整形といった審美性を求められる自由診療でありがちだが、妙に安い価格を謳うところがある。
モニター参加無料とか、定価からの異常な値引き率とか。

こういったところは、実際にはいつのまにか高額な費用が必要になったり、ニュースにもなったがいきなりその歯科医院が消えて治療継続が困難になったりとトラブルの元になる。

一時期このようにニュースになっていた。

自由診療とはいえ、人体に手を加えるのだ。技術を磨き経験を積んだ専門性を持つ人間の時間を使ってもらうのだ。それなりな費用が必要になって当たり前だろう。

歯列矯正は100万円前後かかる。あくまで私の感覚だが、80万以下は怪しんで良いと思う。

ついに見つけた歯科医院

なんやかんやで1年近く歯科医院探しに費やした。
そしてついに、専門医がいて、オープンバイトの症例がたくさんあって、まっとうな費用の、インビザラインで歯列矯正ができるところを発見した。

ちなみに、今回病院名を出す気はない。身バレするほどの話ではないと思うが、念のため。
それに各個人相性があるはず。上記を気にしつつ、自分に合う病院を探してほしい。

この歯科医院では、他のところでは一切言われなかった私の歯列の問題にすぐに気づき教えてくれた。
私の歯列の問題は、大きく分けると下記3つだった。

  1. オープンバイトであること

  2. 下の歯が全体的に前に押し出されていること(要するに受け口気味)

  3. 上の前歯がやや斜めになっていること(要するに出っ歯気味)

1つ目は自分でも気づいていたが、2つ目と3つ目は気づいていなかった。しかし写真やレントゲンを撮り、理想的な歯並びと比較して見せられて確かにそうだなと痛感した。

下の歯が確かに全体的に、本来あるべき位置よりも手前にあるのだ。
その結果前歯のほうになるにつれてスペースがなく、より前に押し出され、受け口っぽくなっていたのだ。

つまり、オープンバイトを直すには前歯だけを弄るのではなく、下の歯は全体的に後ろに下げ、前歯も向きを変えることで、ようやく直るということがわかったのだ。わーお大工事。

矯正開始

BeforeAfter

2020年12月にようやく矯正を開始し、2022年5月にはほぼ完了、維持に移行した。

前置きが長くなったが、矯正前と矯正後(保定突入時)を見比べよう。

図:2021年1月時点での私の歯並び
奥歯をかみ合わせても上下の前歯が合わないオープンバイト
図:2022年5月時点での私の歯並び
前歯がかみ合っている

前歯で物が噛める!!!

矯正中、1回もワイヤー矯正をしていない。
人によってはワイヤー矯正を併用しないといけなかったり、外科手術を伴う人もいるらしい。

私の場合はインビザラインのみで可能だった。

親知らずの抜歯

私の場合は親知らずが残っていた。しかも少々埋もれていて面倒な感じだったのと、歯を動かすスペース確保のため抜く必要があった。
逆に言うと、親知らず以外の歯は一切抜かなかった。

歯列矯正をする場合、時として歯を動かすスペースを確保するためなのか、健康な歯を抜歯するという話をよく耳にする。
(実際いくつか歯科医院を回った中で、それを勧められたときもあった)

これは最適な矯正をするにあたり必要な人とそうでない人がいるという話で、親知らずすら抜かなくてもいい人もいるはず。
あくまで私の場合は、まずこの親知らずの抜歯が事前準備として必要だった。

初めてのマウスピース着用

インビザラインを始めるにあたり、当然自分専用の型を取る。
少しずつ形の違うマウスピースを付け替えることで、そのマウスピースの形に合わせて歯を動かしていくという仕組みだ。

ちなみに、このマウスピースのことをアライナーと呼ぶ。
アライナーを付けたときの見た目はこんな感じだ。

図:アライナー装着状態

遠目だとわかりにくいが、近くで見ると普通の歯には無いテカりというか、光沢感がわかると思う。
ただ当時は皆マスクをしていたので、言わない限りは気づかれなかった。

アライナーつけたてのときの一番の違和感は発音、活舌だ。
どうしても舌先がアライナーにあたるため、最初はいつも通りの発音ができず、サ行がシャ行っぽくなってしまう。
少しすれば慣れるのだが、最初は意図せず舌っ足らずになってしまって恥ずかしかった。

このアライナーを数日に1回、少しずつ形の違うものに交換していく。
その少しずつの違いに合わせて、歯が少しずつ動くという仕組みだ。

ゴム掛け

少しすると、歯の移動をサポートするためにゴム掛けを行う。
上の歯と下の歯に小さな輪ゴムをひっかけて引っ張るのだ。

図:ゴム掛けしている状態

このように、歯にでっぱりをくっつけ、その出っ張りにゴムをひっかける。

これは少しだけ痛みを感じた。まぁ普段かからない力を歯にかけて引っ張るので当然と言えば当然。
ただこれも少しすると慣れるし、ゴムも食事中は当然外すので、四六時中痛みに苦しむわけでもない。普通に我慢できるレベルだった。

光加速矯正装置の導入

光加速矯正装置、オルソパルスというものがある。
これを使うと、インビザラインの矯正期間を短くする(歯の移動を早める)ことができる
この動画で見た目や使い方含め紹介されている。

近赤外線のエネルギーを利用して歯の周りの組織を活性化させます。その結果、歯の動くスピードが速まり、痛みを和らげます。この近赤外線エネルギーは、ワイヤー矯正やマウスピース矯正といったどんな治療でも効果があると臨床的に証明された方法です。

OlthoPulse. (2014, Oct 23). OrthoPulse® How to Use and Care[Video]. Youtube. https://youtu.be/2F1FV9n6W_U?si=IAVnFcLjN3AlJxSe

私の場合、普通に歯列矯正をするとワイヤーでもインビザラインでも4~5年はかかると言われていた。これはどこの歯科医院でも言われた。

しかしオルソパルスを使ったところ約2年で済んだ。アライナーを1週間に1回交換の予定を、3日~4日に1回交換というハイペースに出来たのだ。
だから確実に効果は合ったのだと思う。

使った感じとしては、じんわり暖かくなる感じ。特に違和感も何もなく、加えているだけなので負担は無かった。

これはオプションで料金がかかるものだったが、2年以上の時間を買ったと思えば十二分に価値があったと思う。

医療費控除の申請

歯列矯正をする人は必ず知っておきたい費用関連のこと。それが医療費控除だ。

その年の1月1日から12月31日までの間に自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。

No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除) 概要
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

要するに、一定程度高額の医療費がかかった年は、確定申告で医療費控除申請をすると、一定程度の金額が戻ってくる。

歯列矯正は100万円以上することがザラなので、ぜひこれは申請すべき。

下調べが大事

整形よりは先のほうが良いと思う

歯並びに悩んでいるならば、早めに歯列矯正をすることをお勧めしたい。審美性もだが健康に関わるからだ。

もちろん費用が必要な話ではあるが、顔の他の部位の整形に手を出すよりは優先して良いと思う。
歯は顔の下の方にあるいわば土台であるため、歯が動くと口まわりはもちろん、それより上のパーツの位置も多少変動する。

私の場合、口元がすっきりし、顎のラインが変わり、顎の梅干しのような皺が消え、やや顎が短く見えるようになり、鼻先が若干だが以前よりも下向きになった。

良い影響ばかりかどうかも人による。
矯正を始める前に言われたのが、歯が後ろに下がるぶん、ほうれい線が少し出やすくなるかもしれないとは言われた。
実際、確かに多少は変化した。だがそれ以上に歯並びが良くなったことにメリットがあったし、もし今後ほうれい線が心配になったら、それはそれでケアを考えることにする。

もしどうしてもやりたい整形があるならば、カウンセリング時に歯列矯正も検討していることを伝えて、おすすめの順番を確認したほうが良いと思う。

歯科医院選びは慎重に

繰り返しになるが、症例数と専門性が物を言う。
症例はその歯科医院のサイトを調べれば出てくるはずだ。自分の歯並びに近い症例があるかどうかを確認すると良い。

手法にとらわれない

私の場合、結果的にインビザラインで矯正ができた。
しかし中にはワイヤー矯正のほうが合っている人もいるだろう。これは人による。インビザラインかワイヤーかは専門家が判断することだ。
手法にはとらわれるべきではない。


これを読み、少しでも多くの人が自分の歯並びを気にせず笑顔になれることを祈る。

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