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コンサルよ、フレームワークの外で思考せよ

打合せ後にわくわくランチ、のはずが殺気の塊と化したお嬢氏が登場。ヒルズ氏との誤解が解けほっとするのもつかの間、誤解の発信源が副社長であることを告げられる。(前回


しゃぶしゃぶって美味しいよな? すき焼きLoverなお嬢氏の手前、大きな声ではいえないけどすき焼きの100倍好きだ。で、副社長の話な、、、

◆プロジェクトクラッシャー

な、なにを言っているんだ,,,,?

いや、実は少し予想していた。副社長といえば、日報フォーマットを社長に報告した際の華麗なるスルー技術。やりかねんといえばやりかねん。が、なぜだ?

「モチベーションはわかりません」
ただ彼が色んなところでにおわせているのは事実なんです。

「におわ、、、せ、、、?」
はい、副社長ははっきりとは言わないのです。でも、それとなく匂わせることでいつの間にか噂がたつんです。なんか、、、わかります?

あー、、、わかる。
いるよなそういうやつ。
サークルクラッシャーならぬプロジェクトクラッシャー。顔も分からないほど存在感が薄かったはずなのに、いきなりキャラ濃すぎだろうが。

げんなりとした心をしゃぶしゃぶで満たそうとした時だ。


「ところで私、退職しようと思うんですが」


◆サディスティックな優しさ

流れるビル群ーー。佐藤さん運転の社用車が滑らかな走りをみせる。

「いやぁランチ後の迎えまですいません」
いえいえー、お安い御用ですよ。にこやかな佐藤さんに癒されながらヒルズに向かう。

「あ、社長がオフィスに戻られたようですね」
隣で何もなかったかのように話すはお嬢氏。スマホでやりとりする先は我が社の守護神・爆乳総務か。

あぁ、、、なんてランチタイムだよ。
目を閉じ思い返す。


お嬢氏退職宣言が引き起こした動揺は、私のランチを破壊するには充分であった。

「ちょっとヒルズさん!大丈夫ですか!」
全く大丈夫じゃない。この店は紙でできた器でしゃぶしゃぶを仕上げるお洒落仕様なのだが、動揺するあまり器を折り曲げてしまった。中に入っていたしゃぶしゃぶは無残に落下。
同時に私の心も真っ逆さまだ。

「そんな、すぐ辞めるわけではないですよ!」
そろそろ次を探し始めようかなと、、、ヒルズさん、リクルーティングも担っていますし先に言っておいたほうがいいかと思ったんです。

「あ、ありがとう、、、」
少し落ち着いたらゆっくり飲みにでもいって話をしよう、いや辞めたくなる理由は事欠かないからね、だいたい予想はつくんだが、うん、そうだね、うん、、うん、、、

てっきり退職話はないと思った矢先にこれか。落として上げて最後に叩き落とす。どSにもほどがあるぞお嬢め、、、どんよりとした気分をお口直しゼリーと共に流し込んだのだった。

◆緊急事態宣言

「ヒルズさん、、、ヒルズさん!」
おっと、ランチタイム回想に深く沈み込みすぎた。今度は一体何だ?

「わが社に緊急事態宣言が出ています!」
な、何!?

突き出されたスマホ画面を見る。

”社長ご乱心、お戻りの際は気配を消してください”

爆乳総務からの指示だ。気配を消してください、か。私は一体何の職業についているのだ???

「私には何も連絡入ってないですねぇ」
今日は朝からルンルンで出かけていきましたが何があったのかなぁ、佐藤さんも首をかしげる。

「仕事 or 私用」
お嬢氏が横でつぶやく。

「私用を深掘り」
お嬢氏がまたつぶやく。

「私用 → 女 or 家族 or 健康 or 経済問題 or ....」
お嬢氏が更につぶやく。

「女 → 佳乃氏に悪事がばれた or 佳乃2号からのさらなる訴訟 or 佳乃3号に振られた or ,,,」

ヒルズに来て以来、社長行動の予想が当たったことも予想を下回ったこともない。だが様々なシチュエーションをできるだけ想定し、自らのメンタルを守ることは今の私たちができる唯一のことだろう。そう、今こそThinking outside the box(*)である!

「社長、実は社内に彼氏...」
「愛人が実は他国のスパイ...」

ぶつぶつと呟くコンサル二人をのせ、社用車がヒルズオフィスに到着した。

(続く)

(*)Thinking outside the box = 型にはめず柔軟に考えること。というと何の枠組みも制約も持たずにいきなり思考しようとする方が多いが、枠組みを明確にした上であえて枠組みの外を考えるようにしたほうが簡単だったりする。枠がどこにあるかもわからないのに枠の外にはなかなか行けないからな。

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