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4時間目 十二平均律と純正律

ピアノや電子楽器のほとんど全てが実は「音痴」、つまり音が狂っている状態だと言われたらどう思いますか?

音にドレミ・・・やCDE・・・などの名前を付けてきました。が、実はオーケストラや合唱のドレミとピアノや電子楽器のドレミでは音が違うということを知っていますか?

あまり難しい話をしても仕方がないので簡単なご紹介にしておきますね。

1オクターブの中には白い鍵盤と黒い鍵盤を合わせると12個の音があります。この数は鍵盤楽器以外でもほとんどの楽器で同じです(例えばギターならフレットで区切られていますね)。

十二平均律(じゅうにへいきんりつ)

これらの楽器は1オクターブをきれいに12等分して音程の幅が必ず同じになるように作られています。平均律ともいうのでここからはそう呼びます。

今はまだ何を言ってるか分からない人もいるかも知れませんが、こうすることによってどの音から始っても音階(スケール)がドレミファソラシドとそっくりな形に聞こえるようになっています。これは和音を鳴らすときにも同じ効果が得られます。

平均律ではド♯(C#)とレ♭(D♭)は同じ音です。

ピアノでも同じ鍵盤、ギターでも同じ弦の同じフレットで鳴らすことが出来ますよね?

しかし実はこの音階、本来の音の美しさを犠牲にした合理的・不自然なものなのです。

純正律(じゅんせいりつ)

これに対してオーケストラで使われる楽器や合唱ではドとレ、レとミ、ミとファ・・・のように2つの隣り合った音の間の幅が違うのです。自然倍音から作られる音階なのですが、これを理解するためには細かい知識が必要だったりするのでここでは触れません。

純正律の音は1オクターブを12等分したものとは少しずれています。その本来の正しい音で鳴らした和音というのは平均律の和音よりも遥かに美しい響きを持っています。

さらに純正律ではド♯(C#)とレ♭(D♭)は違う音として区別されます。

オーケストラの楽器はこれらの音を区別して演奏する必要があるため、指板(左手で音程を決めているところ)にギターのようなフレット(区切り)がありません。

ちなみにシンセサイザーや電子ピアノの一部にはこの純正律の音を鳴らす機能を持つものもあります(Cakewalk by BandLabでもTTS-1という音源を使用することで純正律で音を鳴らすことが出来ますし、Cubaseでは純正律で演奏するよう指示するモードがあるようです)。

では実際に純正律で設定したものと初期設定の平均律で設定したものを聴き比べてみましょう。
ここで使うのはカデンツと呼ばれる和音(コード)進行です。
はじめにハ長調(C Maj)。1回目が平均律、2回目が純正律の音です。
1.Ⅰ(C)-Ⅳ(F)-Ⅰ(C/G)-Ⅴ(G)-Ⅰ(C)
さらにイ長調(A Maj)で同じように2回。
2.Ⅰ(A)-Ⅳ(D)-Ⅰ(A/E)-Ⅴ(B)-Ⅰ(A)

比べてみると平均律では純正律にはない「うねり」のようなものを感じられたのではないでしょうか?

このように素晴らしい音が鳴る純正律ではありますが、転調をしてしまうとお聞き頂いたようにとんでもなく汚い音になってしまうので調律をし直さなければならないという大きなデメリットがあります。
このデメリットを克服するために生まれたのが先にご紹介した十二平均律だったんですね。十二平均律では完璧な和音こそ演奏することは出来ませんが、どんなに転調してもそれなりに美しい音楽として聞くことが出来るのです。

ピアノ VS 合唱(人間)

実力のある合唱部、合唱団の演奏でも無伴奏の曲ではこの純正律のハーモニーを聞くことが出来ます。
※吹奏楽やオーケストラも理屈としては可能ですが残念ながら純正律の音程をキープできる団体はかなり限られてしまいます。

このときに起こることを簡単に言うと「誰も歌っていない音(倍音)が聞こえてくる」「人数以上の大きな響きのスケールを感じられる」ということが挙げられます。特に男声合唱は女声もどこかに隠れて歌っているのではないかと思わされるほどの音色、響きになることがあります。
※女声合唱では不可能ということではなく、男声合唱の方が音域が低いために人間の耳で聞くことの出来る倍音の量が多いのです。

ここで重要なことは「無伴奏の」という限定付きなところです。
皆さんの知っている合唱曲のほとんどがピアノ伴奏のある曲だと思います。

ピアノは・・・十二平均律の楽器でしたよね。
本来、音程が違うはずのもの同士が一緒に演奏するのですから、お互いが自分の音階で演奏したのでは音が濁ってしまいます。
ですがピアノはもちろん音程の調整が簡単には出来ませんから、人間がピアノの音に合わせることになります。その結果、純正律の美しい響きは犠牲になってしまいます。

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