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強く、美しく、後悔せず ~映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』〜

『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』
監督)ニール・ジョーダン
出演)トム・クルーズ、ブラッド・ピット、アントニオ・バンデラス

あらすじ)事の発端は1971年ニューオーリンズ。一帯の農場主だったルイは、妻をお産で亡くして以来、死を望むばかりの絶望の日々の中にいた。自暴自棄で盛り場をうろついていたルイを、美しきヴァンパイア(吸血鬼)レスタトが自らの仲間へと誘い込む。人間としての肉体は滅び、ルイは「不死」のヴァンパイアとして生まれ変わる。

人間の生き血を吸わずには、生きてはいけぬヴァンパイア。 だが、ルイは人間を殺すことをためらい、ネズミや鳥の血を吸って生き延びるが、ある日とうとう少女の生き血を吸ってしまう。そして、その少女はルイの生きがいともいえる存在になるのだった。

ヴァンパイアに変わり果てても、なおも人間の心を捨てきれず苦しみ続けるルイの姿が、200年もの長い歳月にわたって描かれる。現代のサンフランシスコにルイが現れ、記者のインタビューに応じるという形で、定説を覆すヴァンパイアの姿が明かされるファンタジーホラー。

強く、美しく、後悔せず
 400年生きているヴァンパイアのアーモンドは、人間の心を捨て切れないルイに言う。

「人間の魂を持ったヴァンパイア。
 死の情熱を持った不死。
 つまり、君は美しいんだな」

 人を殺すことをためらわず、ルイに「何も考えるな」と言うレスタトとはちがい、ルイは200年経っても、人を殺さずには生きていけない己の身を嘆き、永遠の命の中を彷徨いつづける。そしてルイは、放浪の末に再会したレスタトからも言われるのだ。「美しいな」と。

 この話、ヴァンパイア、すなわち吸血鬼物だが、人間の欲望が妖怪化したのがヴァンパイアと考えるべきか、ヴァンパイアたちが実に人間的で、親近感が持てる。軽薄で、残忍で、どこか陽気ともいえるヴァンパイアのレスタトも、極道に生まれ落ちた人間のようだし、200年懊悩し続けるルイも、やっぱり人間に戻ったとしても悩み続ける男でしかありえない。

 ルイが「美しい」と言われるのは、嘆いたり、罪悪感を持つ高尚な魂を持つゆえにだが(ブラッド・ピットの美貌のせいもあるだろう)、その美しさは彼を200年もの間苦しめ続けている原因であり、痛快ともいえるラストによって、ルイの悲痛な美しさはかき消される。ラスト、夜のサンフランシスコには、レスタトの、不気味さより陽気さの勝る笑い声が響く。
 ルイはもちろんいい奴なんだけれど、最後はレスタトが憎めず、こいつもそう悪い奴じゃないと思ったのは私くらいか。このファンタジーホラー、気楽に観れる娯楽作(血が苦手な人は楽しめません)だが、案外、人間社会に置き換えることもできて、深いといえば、深い。

 そして、特筆すべきなのが、レスタト役のトム・クルーズの演技。ルイを演ずるブラッド・ピッドもよかったけれど、完全に頭があちらの世界(すなわちヴァンパイアの世界)に“いっちゃっている”感じのトムの演技には感激しました。ファンとしては、こんな演技が見たかったっ!!

 『マグノリア』でも、カリスマAV男優を演じ、ふだんの爽やかトムとは違う一面を見せてはいましたが、レスタト役はトム以外には考えられないほど素晴らしくハマっていました。『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の原作者が、当初レスタト役にトム・クルーズというのを聞いて、アイドル上がりの俳優なんて嫌だと言っていたのが、仕上がった映画を観て、トムのレスタト役に大満足したとか。

 実は、長年のファンとしては、近年の主演作『ワルキューレ』『大いなる陰謀』における、いまひとつのトムの姿を観て、ちょっと心配してました。政治がらみのものって、雰囲気を出すのが難しいんでしょうね。。。『ワルキューレ』の軍人シュタウフェンブルクは、興味深い役どころだと思うのだけれど、『コラテラル』の殺し屋役の時と同じく、クールに徹するばかりで何か物足りなかった。ファンとしては、宗教がらみのゴシップや、近年の常軌を逸した行動を聞くにつけても、「トムは大丈夫なんだろうか」と。。。。(余計な心配をするという意味でも、ファン心のとは親ごころみたいなもんです)

 でも、トム・クルーズはやっぱり大丈夫だ~!!

   と改めて感じさせてくれた、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』。なんで、こんな傑作を今まで観ずに平気でいたのだろうか? ファンとして、反省、反省である。
 トムはますます俳優として成熟し、いつかオスカーも受賞することでしょう。どんどん役の幅を広げて、どんどん後世に残る作品をプロデュースしてほしい!
 私はおばあちゃんになっても、本人が死んでも、トム・クルーズを応援し続けると思います。

 アーモンドが口にした「ヴァンパイアとは、強く、美しく、後悔せず」という言葉、ルイは否定しますが、トム・クルーズなら、ぴったりじゃないですか。
「トム・クルーズとは、強く、美しく、後悔せず」

 来日時、小泉元首相に参考書をプレゼントした、あのフレンドリーさ、熱心さがたまりません!!
 トム・クルーズ、私の心のヒマワリ・・・(ファンじゃない人は読まなかったことにしましょう)
   私もトムのように、悔いなく生きよう、そう心に誓った一作でした。

2009年10月5日 DVDにて初鑑賞
(この記事は、SOSIANRAY HPに掲載した記事の再掲載です)

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