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演奏のお値段

もう10年以上前の話になるけど、あるカフェでのライブの後、数日してからお店のオーナーからメールがきた。

「出演料が高すぎる。みんな時給数百円で働いているのに」

との内容だった。

その日は、5万円くらいの演奏料だったと記憶している。
音楽業界の相場から言ったら、むしろ安いほうだと思うが、
それも人気度やキャリアにもよるので、なんとも言えない。

「2時間の演奏で5万円?
時給2万5千円なんて、庶民感覚からすると高いのでは?」

と思う人もいるかもしれない。
このオーナーもそんな感覚だったのだと思う。

でもすごく分かりやすい説明をすると、

・ライブ当日の前後1日ずつ移動日になるので、3日間の拘束。
・往復の交通・宿泊費で3万円かかっているので、正味2万円。
・3日間の拘束で2万円なら、日給7000円弱。時給にしたら数百円。

なのである。
さらに、移動日には食費だってかかるし、アシスタントを雇っている場合もあるだろう。メンバーが複数いたら、頭割りになるので、3日間で1人数千円だ(だから、みんなツアーを組んで、たくさんライブして、採算が合うように工夫する)。

遠方で、交通費込みで5万円は、実は全く高くはないことが理解してもらえると思う。

それでも、心から感謝して、ありがたく頂戴する。
経費で半分以上なくなってしまう5万円だとしても、主催者にとっては5万円がすごい大金であることだって往々にしてある(チケット制にせず、ポケットマネーでアーティストを呼んだ時や、赤字になって主催者が被ってくれた時など)。
大切なことは、感謝の気持ちを忘れないことだと思う。

お互いに、感謝の気持ちを忘れずに、出演者、主催者、参加者が、
「演奏してくれてありがとう」
「聴きに来てくれてありがとう」
「呼んでくれてありがとう」
の関係でいれば、お金なんて関係なく、幸せなはずだと思う。

そして別の観点から言わせてもらうと、
多くの人が理解しているように、
人がやりたがらない仕事や、誰にもできないような希少な仕事は価値が高まるし、
みんながやりたがる仕事や、誰でもできるような仕事は報酬は安い(ことが多い)。

僕がオリジナル曲にこだわるのは、「僕は僕だから、僕の音楽を奏でる」というただただシンプルな理由だけど、
「仕事の価値」という観点からも、他の人にはできない演奏がしたいなぁと思うのです。



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