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「自転しながら公転する」を一気に読み終えて山本文緒の宇宙を味わう

山本文緒の小説を読んでると

登場人物の気持ちを心のなかで再現してる自分がいます。

その気持ちはとても迫力があって生々しいのです。

わりと激しい気持ちの持ち主でここまで感情が振り切って

しまうのか?というような描写に思わず引き込まれています。

山本文緒の描く登場人物は必ずしも善良な性格に

収まりきれないアクの強い人物だからこそ

余計に中毒性があるのかもしれません。

常識や固まった価値観をぶち壊してくれるような痛快な

山本文緒の宇宙に浸れるとはなんて幸せなのでしょうか?

なんて大きな口を叩かせてください。

今回図書館で借りて読んだ「自転しながら公転する」の

一番印象に残ってる部分を一箇所だけ引用します。

「不安なの!あたし不安なの!」
彼の目が怯んだのを見て、都は感情が決壊するのを自覚した。

366ページ

主人公の都が貫一に自分の不安な気持ちをどんどん訴えていく場面です。

都が二人暮らしをするのかしないのかその前に

交際相手の貫一の秘密に迫ろうとしています。

結婚や出産の前つまり深い付き合いに入る前に

大きな秘密を抱えながらではなく

はっきりさせたうえで付き合おうとする

都の気持ちのストレートなぶつけ方にとても心が揺さぶられます。

都と貫一がこのまま付き合うのか

それともどちらかが諦めるのか

読んでいてとてもハラハラした場面でした。



文庫で山本文緒の作品を集めていた時期がありました。

思えば一世を風靡した「恋愛中毒」以降、

「叶えられない恋のために」のエッセイ他

図書館から一通り読み集めしました。

手元に本があるとあのページのあの描写が読みたいと

ついついページを開いていた時を思い出します。

ある時期から山本文緒の作品は心の支えと言っても

良いくらいでした。

精神的に苦しい時に読む山本文緒の世界は

非常に自分の気持ちが同調します。


(私だけかもしれませんが)平々凡々な幸せな

時期より今苦しくてもがいてるというような時期ほど

山本文緒の宇宙は自分に訴えてきます。

読書時間中に山本文緒の作品が面白いか面白くないのかで

自分の幸福度が計れてしまうそんな不思議な

私にとっての山本文緒の作品たち。


さてこの「自転しながら公転する」という作品では様々な結婚に

対する価値観(=価値観の宇宙)が描かれています。

機会があればまた別の投稿でその点に触れてみたいです。

この小説を読み終えてあぁ面白かったと思うと同時に

58歳という若さで山本文緒という作家がこの世からお旅立ちに

なってしまったことに寂しくて涙がにじみ出た次第です。


まだ山本文緒の未読の小説をもっともっとたくさん

読んでいたい気持ちは変わりません。

もっともっと長生きして素敵な作品を読みたい

そんな惜しまれる作家としての山本文緒を

推しつつも今回の投稿を〆たいと思います。



ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

ではまたの機会にお会いできますように。


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