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【うちコト写真部・後編】カメラを持って、そとに出よう。自分の好きを、地域の魅力を探して

<うちコト写真部の写真>

相野の花近くの一本桜。うちコトで初投稿した写真で、思い入れのある一枚(立石地区)、撮影者:兵頭さん


加工所みのりのメンバーの皆さん。平均年齢は80歳!ふるさとの味をつなぐ活動を20年以上続けている(田渡地区)、撮影者:久保永さん


時間帯で変わる棚田の表情。数分だけの魔法の時間(御祓地区)、撮影者:兵頭さん


美しい風景、満面の笑顔を捉えている写真部のみなさんですが、ファインダーを通して何を見て感じているのでしょうか。カメラを持つ魅力や撮るようになってからの発見を語っていただきました。


そこには、被写体への想いが溢れるとともに、今に向き合い、今を愉しむ、ヒントがありました。


カメラの話が尽きない「うちコト写真部」のみなさん。左から、山本勝利さん、久保永美沙さん、福岡智美さん、兵頭裕次さん


写真の魅力とはなんだろう


――前編では、写真との出会いをお聞きしましたが、改めて、写真の面白さや魅力とは何だと思いますか?

山本さん:僕、55歳ですけど、僕らくらいの年の目線であったり、若い高校生くらいの目線であったり、いろいろな見方がある。写真というのは、そういういろいろな見方に触れられる面白さがあるかなって思う。


もし、若い子に写真の技術を教える機会があるならば、小田にはこういうところがあるっていうのを教えてあげたいなあっていつも思うんですよ。小田にはこんな桜の名所がたくさんあるんだということを知ってもらってね、それを高校生の目線で切り取ってもらえたらいいなって思いますね。



久保永さん:素敵ですね。一緒に行きたい! なんか、みんなで撮影に行くと楽しいですよね。


兵頭さん:なんでかな?


福岡さん:本当!



久保永さん:後から、Instagramとかでみなさんの写真を見ていたら、確かにいろんな目線があるんですよね。福岡さんはこんなふうに見えるんだとか。


福岡さん:私、カメラを向けている人が大好きなんですよ。カメラで、何か獲物を狙っている瞬間が大好きで。美しい景色の中でも、狙っている人がいたら、その人をもう撮りたくてしょうがなくなリますね。


久保永さん:後で、あ、撮られてるって気づく。


兵頭さん:気配が全然ないから(笑)


福岡さん:野鳥を撮る時みたいに、気配は隠して撮っています!



久保永さん:私、みなさんの写真が大好きで。兵頭さんだったら、見たら笑顔になるっていうか、まちづくりとして地域を元気にしたいという想いで撮られているので、元気になるような写真なんです。そういうのも私も撮りたいなって。


福岡さんは、眼差しが優しいなと思っていて、鳥とか花とか、日常にある、小さな気付かないようなところにも愛情を持って撮っているようなところが素敵です。


福岡さん:なんか優しい人になっているんですけど(笑)


久保永さん:でも素敵だなあと思って。山本さんは、上川の写真をずっと撮られていて、本当に故郷愛を感じる。撮影で何か困ったら、すぐに「巨匠!」って相談できて頼りにしています。


山本さん:いやいや、それほどでもないんですけど。


久保永さん:本当に愛情というか、山本さんも愛情ある写真で、3人とも憧れている部分があって、私もそんなふうになりたいなと思っています。



福岡さん:魅力というと、共有できることもですかね。行かなくても、移動ができない時でも、これが良いと思った瞬間をみんなと共有できる


久保永さん:広報をつくる時に、兵頭さんが、ずっと残るって常々言っているんですけど、あそこの、その瞬間を残せるのも写真の魅力だなと思いますね。



写真を撮ることで見えたこと


――いろいろな視点を知ることができたり、瞬間を切り取ってみんなで共有できる写真の世界。撮るようになって、発見はありましたか?

兵頭さん:なんか、夕日って、イメージでは良く見ている気がするけど、撮ろうと思ったらなかなか撮れないんだなって気づきましたね。


福岡さん:雲が流れたり、一瞬、一瞬で変わりますね。


兵頭さん:だからこの景色は、一瞬しか見られないぐらいの気持ちで撮るようになったかもしれないです。



山本さん:本当、そう。同じ風景はないと思って、いつも撮りますね。

上川に、世善桜(よぜんざくら)という桜があるんですけどね、桜の習性として1本の樹では、子孫を残すことができないのですよ。というのが自家不和合成という性質があって、別の樹の花と受精することはあっても、自分の花で受精することはないそうです。


世善桜はエドヒガンザクラになるんだけど、エドヒガンザクラがこの地域にあるのは、500年も前に御嶽という山の中に2本の樹が植えられたからなんですね。その樹が交配して、実を鳥が食べて山に落として、それが芽を吹いて、いろんなところにエドヒガンザクラがあるんだけど、どこにあるかは、僕らも花が咲かないとわからない。


でも何気に風景を撮っていたら、たまに写っているんですよね。ああ、ここにもあるんだっていうのが、今になってわかったというのが、写真を撮っていて気づいたこと。だから、山肌の中にポツポツと、桜色のものがあったらちょっと気になりますね。


福岡さん・兵頭さん・久保永さん:すごい!


山本さん:あと、やっぱり撮る時には、歩くことが大事かなって思いますね。歩いていてはじめて気がつくことがよくあるなあって思います。カメラを持って、常に移動しているのは、まあそういう一瞬の出会いというのがあるのを、すごく感じるからですね。逃さないように



福岡さん:兵頭さんが空のことを仰ってましたが、小田は谷なので、すぐに夕日が見えなくなるですよ。夕日は見えないんですけど、沈む向こうの谷は、いつまでも明るいんです。桃色だったり、オレンジだったり、雲の状態でも変わるし、毎日違う色に変わる。だから、一期一会の空


それが半年くらい前に、エヴァンゲリオンに出てくるようなバッテンみたいな飛行機雲の時があって。それを変な雲だなと思っていたら、いろんな人が、今日はこんな雲だったって投稿していたんです。わあ、やっぱりみんな見てる! 同じ空を見ているんだなって気づきました。ここからしか見てないと思っても、いろんな角度から、全国の人が見ているんだなあって、その時、はじめて知ったんですよね。



久保永さん:確かに、一期一会ですよね。広報で取材に行くじゃないですか。兵頭さんと一緒に行って、気付くことといえば、綺麗な風景の裏には、頑張っている地域の人たちがいる、それぞれに。野村だったら、地域の人たちがこの桜を植えようって、もう何十年も活動していることを知るし。


兵頭さん:そうやなあ。



久保永さん:立石とか、野村もそれぞれストーリーがあるというか、なんかその美しい風景の裏に頑張っている人がいるんだなっていうのは、広報で写真を撮るようになって気づきました。


兵頭さん:田舎暮らしのいいところっていうかな、それが景色に現れているってありますよね


山本さん:あります。暮らしがわかるっていうのかなそこで、生きてきた人たちの苦労というかね、そういうのがよくわかると思います。


内子町森林組合の丘の上から見下ろした小田寺村、町村地区。谷筋の奥に上川地区が



山本さん:上川でも、最近、道路の周りの木を切ろうということになって切ったら、石垣みたいなのが出てきて。やっぱり、ああいうのは綺麗にして、今後、見せられるようにしないとって、地域でも話をしているところです。


なので、まだまだ知らないことが地域の中には眠っていると思うんだけど、それを私たちは知り、そして、こういうカメラで撮って残していくということができたら、ええんじゃないかなって思いますね。



久保永さん:本当にそうですよね。そこに、素敵な風景があって頑張っている人たちがいても、写真とか広報紙とか伝える媒体がなかったら、ないものと一緒とまでは言わないけど、あってもないような、知らないとそうなるので。やっぱりカメラっていうのはすごいですよね。つくった人、天才ですね。



カメラ初心者の方へのアドバイス


――カメラを持つことでたくさんの発見があり、世界が広がりますね。この面白さを読者にも体験してもらいたいところですが、これからはじめる人に向けて、これを撮ったらいいなど、アドバイスがありましたら教えてもらえますか。

兵頭さん:僕ら、広報だと、年度始めの4月は、最初に桜を撮るじゃないですか。絶対、毎年撮りに行くので、上手くなったかどうかが分かる(笑)。年々、撮り方が変わってきたりとか。だから同じものを毎年撮るという意味で桜


桜はみんな撮るんじゃないかな。そして、難しいんですよ。最初、僕もブレたりして全然撮れなかった。明るくなりすぎたりとか、白飛びしたりとか。それが、太陽や空、山などがどの位置か確認して、どっちを向いて撮ったらいいとか、だんだんわかってきた。写真を見ながら、年々、成長してるなって(笑)



山本さん:そう、同じものを撮ってみたり、自分が面白いなと思うものちょっと興味があるもの、なんでもいいかなと思いますけどね。撮り方によったら、見え方がちょっと変わってくるので面白いかなと


例えば、このカメラを被写体にしたとして撮っても、どこを表現しよう、どこを撮りたいかっていうので、撮り方も変わってくるし、見せ方も変わってくる。少しずつ工夫をしていったら、ああ、こう撮ったら綺麗とか自分の好みができてくるかなと思います。とにかく、カメラを買ったら、撮りたいものをまずは撮る、でいいんじゃないのかなって思います。



これからも、ここで暮らす。カメラとともに


――今、みなさんが目にしている地域が、10年後や20年後にどうなっていたらいいと思いますか?

兵頭さん:写真のことで言うと、今、素敵な撮れるところがいっぱいあるから、この風景がずっと残って欲しいというのがあります。そのためには、いろんな人がいないと駄目だと思うし、久保永さんが言っていたけど、誰かがそういう暮らしをしているからできている風景とかもあるので、そういうのはずっと守られていったらいいなって思います。


山本さん:今、少子化が言われていますが、子どもも含めて、この内子、小田が、たくさんの人に住んでもらえるような地域になっていたらいいなって思いますね。そのためには、産業や働き先であったり、いろいろな条件が整わないといけないのでしょうけど、やっぱり将来の夢というか、希望としては活気のあるまちになったらいいなって思いますね。



――移住者だけでなく、地元の人も、ここを選んで住んでいると言えるのではないでしょうか。写真でここの魅力を発信しているみなさんにも、なぜ、ここに暮らしているのかお聞きしたいと思います。

久保永さん:私は、小田が地元で、今も実家暮らしなんですけど、1度は大阪に出ました。ずっと田舎にいたから、都会への憧れがあって大阪に行ったんですけど、都会に行ったからこそ、田舎の良さがわかったので、大阪で仕事をするのではなく、こっちに帰ってきました。


ご縁があって、役場で働かせてもらって、それで内子町を知るうちに、どんどん内子が好きになって、人の温かさとか地域の良さにも触れて、ますますいいなと思って、今、ここにいる感じです。



福岡さん:私は、出身は松山市(愛媛県)なんですけど、社会人になって栄養士の免許を取って就職したのが、内子町小田の済生会。小田にご縁があり、老人ホームに就職という形で、はじめてこちらに来ました。当時は合併前の小田町で、夫の職場が正面にあったんですよ。そこで、夫と知り合い、ここに骨を埋めることになりました(笑)


仕事をしていた期間が2年はあったので、地域のことはよくわかった上で、小田に永住することになりました。だから、ここに来て、特に不便も感じなかったし、都会の人が不便と思うことを、このまちの人は不便と思っていないというのが第一印象だったんですよ。Aコープ(スーパー)があるし、当時は3つ4つお店があったので、それが当たり前って思うように暮らしていました。まちの中でいろいろなことが連結して行われていて、買い物もできるっていう感じで。



福岡さん:住んでみたら、人があたたかいっていうのと、何もないっていうことは、何でもできるという雰囲気がいいですね。何かやってみたいんですって言ったら、得意な方が、手伝ってあげるって言ってくれたり、これをやってみたいって言ったら、賛同してくれる人がいっぱいいたりして、人が少ないから見つけやすいんですよね。カメラがやりたいって言ったら、久保永さんや山本さんに教えてもらおうとか。


そして、役場の方が近く感じますよね。小田は、役場の方がすごく身近に感じられて、まちの暮らしのこととか、いろいろすごくいいなと思うから、これからもここで生きていくんだろうな(笑)


山本さん:僕は、生まれも育ちも上川で、もうほぼほぼずっと住んでいます。まあ、後継ぎということもあって、外に出ることもあまり考えずにですね、一度企業に就職したんですけど、そのあと内子町役場の試験を受けて採用になって34年になりましたが、そういう人生を歩んできました。


やっぱり、ご先祖様たちが、守り築いてきたものを絶やしてはいかん。畑でも田んぼでも、一生懸命、守ってきたものを私の代でやめるのはいかんという使命感がありまして、この美しい地域を少しでも守りたいと思ってですね、上川で今、なんとか細々と頑張っております。


田んぼにしてもよくできたもので、田をつくるためには水が必要ですが、昔は今の土木技術がないのに、ご先祖様はちゃんと田に水を引くことができているんですよね。生活をしていくための基盤というのは既に整っているので、私たちはそれを守っていく立場で、少しでも地域を守っていきたいなと思いながら生活をしております。仕事をしながらですけど。



山本さん:1年だけ、愛媛県庁で仕事をしたことがあるんですけどね。その時に、県庁の職員は直接住民と接する機会があまりないけど、役場の職員は地域の人たちと一緒に地域をつくり、守る役割があるというのが、よくわかりました。だから、地域が少しでもよくなるために、できる限りのことは協力する。協力って言ったらおかしいけど、力を出さないといけないと思うようになってですね、それからは、できるだけ頑張っています。


兵頭君も言っていたけど、地域の人たちが喜んでいたり、光り輝くところを残すっていうことをカメラを通してやっています。地域の困ったことがあったり、何か課題があったら、解決に向けて、私たちは取り組んでいかないといけない。それを知るためには、地元にいないとなかなかわからないこともありますから、そういうアンテナを張るためにも、地元でみんなと一緒に活動をしているというスタンスでおりますね。



兵頭さん:僕は、縁もゆかりもなくて、親戚もいなくて、役場に受かったから内子町に来たみたいなはじまりだったんです。はじめての場所で大変だろうなと思っていたんですけど、若い人たちもフレンドリーな人が多くて、仕事面でも友達ができたりしました。


今、広報係で人とつながる仕事だけど、入庁当時は建設課でした。そこでも、まちづくりのような仕事をしていたので、住民の人たちと一緒に協議して、イベントをしたりすることもあったんですよ。その時も若い僕の意見も取り入れてくれたり、一緒に地域を盛り上げようみたいな感じで協力してくれる人が多くて、すごくやりやすくて馴染みやすかった。


年が離れているおじいちゃんくらいの人たちもいるんですけど、大事にしてくれたりとか、おばあちゃんも気にかけていろいろ話してくれたりとか、うちの娘の婿に来てくれんかとか、いろいろ誘われたりとか、あるあるですけど(笑)



兵頭さん:まあ、そういう感じで最初は地域に入っていき、広報係になってもっと感じるのは、お願いした人がみんなすごくいい人ばかりということ。本当に素敵な人ばかりで、まちがこういう素敵な人たちでできているんだなっていうことを多々感じながら過ごすようになりました


僕らもその一員というか、役場の職員として、この良い地域をずっと素敵なまちにしていかないと、あり続けていくようにしないと、と感じていますし、自分が仕事をすることで、それがまちへの恩返しになったら良いなって頑張ろうと思っています。縁もゆかりもないところで、27年間やってこられたのは、本当にまちの人のおかげだなって思いますね。


山本さん:そうそう、本当な。僕も先ほど偉そうなことを言いましたが、ああ言うてもね、地域の人らが僕らを支えてくれているのでやれるというところはありますからね。地域の人には感謝です



前編、後編を通して、カメラはもちろんのこと、地域の美しい風景、それを支える人たちへのやさしい眼差しを感じたうちコト写真部のトークでした。 美しいもの、心動かされたものを捉え、シャッターを切る––。

カメラを持つと、今、この瞬間を大切にすることができるようになるのではないでしょうか。ここで過ごす日々をより味わうために、カメラは魅力的な道具だと言えます。 撮ることでわかる自分の眼差し、人の眼差しを知れば、今まで見えていた世界がもっと輝いて見えるはず。

そして、ここを、今いる地域を、愛おしく思えるようになるのではないでしょうか。晴れた日も、しっとり濡れる雨の日も、カメラを相棒にして、そとを歩いてみませんか。 内子町で撮影した時は、「#うちコト」でInstagramに投稿を。広報係やフォロワーのみなさんがあたたかい目で見てくれています。


Coordinator Mai Oyamada
Writer Mami Niida
Photo Ko-ki Karasudani


うちコト写真部の写真を見たい!


写真部の最後の1枚は、いつもは撮る側の山本さんの暮らしが伝わってくる写真です。

娘さんと一緒に田植えをする山本さん(上川地区)、撮影者:久保永さん


写真部のみなさんの最新の写真は、以下のリンクからご覧いただけます。

ブログ「上川の日常」(山本さん)
Instagram「うちコト
内子町広報紙「広報うちこ


あなたも内子町で素敵なシーンを見つけたら、写真に撮って、「#うちコト」をつけてInstagramに投稿してみてくださいね。