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人事院に聞く!ソトの力を得やすくするための取組とは?<前編>

こんにちは!ソトナカプロジェクトの西川・吉井です。

突然ですが、noteをご覧の皆さん、人事院という組織をご存じでしょうか?
毎年夏ごろに、国家公務員の給与や賞与の支給水準について人事院が勧告しているというニュースで、その名前は耳にされたことはあるかもしれません。

人事院は、ひとことで分かりやすくいうと、国家公務員が働くに当たって適用される様々な人事制度を所管している行政機関です。採用試験から給与、勤務時間などなど、国家公務員として働く方には深くかかわっています。

さて、昨年の夏、人事院から、国家公務員の給与に関する勧告とともに、「公務員人事管理に関する報告」というものが公表されました。公務を取り巻く昨今の課題はどのようなもので、その課題に対してどう取り組んでいくのか?ということが示されています。いわば人事施策のマスタープランみたいなものですね。
※概要についてはこちらからご覧いただけます。

課題認識と主な対応。
(出典)人事院HP https://www.jinji.go.jp/kankoku/r4/pdf/4kankokuhoukoku.pdf

その「公務員人事に関する報告」の中で、私たちソトナカプロジェクトが注目したところがありました。それが、

社会環境の急速な変化に的確に対応できる能力を有する人材を確保していくためには、公務部内における人材育成だけでなく、公務と民間との間の人材の流動性を高め、民間の知見を積極的に公務に取り入れていくことが重要である。

(出典)公務員人事管理に関する報告P.81
https://www.jinji.go.jp/kankoku/r4/pdf/4houkoku_jinjikanri.pdf

という部分です!
社会課題の急速な変化に対応するため、積極的にソトから人材を採用していくのだ、という前向きな姿勢が読み取れますね。

実際にソトの人材を採用していくのは各府省になるのですが、人事院としても、各府省での採用が少しでも円滑に進むように、あの手この手で策を講じているようです。

そこで今日は、人事院が具体的にどのような取組を行っているのか、また、制度担当者としての思いなどについて伺うべく、ご担当者に直撃してみました!
非常に多くの取組をされていることが分かったので、前編・後編に分けてお送りします。前編では、採用試験や任用の仕組みなどを所管する「人材局」の佐藤さん、齊藤さん、鈴谷さんにお話を伺いました!

デジタル人材を機動的に採用するために

ソトナカ:最近、民間ではデジタル人材など非常に高い専門性を持った人材のニーズが高まっていますが、これは公務でも同じ状況かと思います。そうした方々をより一層採用しやすくするための取組をなさったのですよね。

佐藤さん・齊藤さん:はい。高度な専門性を持つ「高度デジタル人材」のニーズは公務においても高く、採用数は今後さらに増えていくものと考えています。実際にそうした方々を採用するのは各府省なので、人事院としては、各府省ができるだけ機動的に採用できるように、特定任期付職員の採用手続を見直したところです。

人材局の齋藤さん(左)、佐藤さん(右)。経験者採用などを担当。

ソトナカ:具体的にはどのように見直したのですか?

佐藤さん・齊藤さん:簡単にいうと、人事院が示す所定の要件を満たす場合には人事院の「事前審査」を不要とし、各府省において採用できるようにしました。これにより採用プロセスを約1か月短縮できます。

人事院のご説明内容をもとにソトナカプロジェクト作成。
※大まかに分かりやすく記載していますので、詳細は異なる場合があります。

ソトナカ:従来は2~3か月かかっていたとのことで、これが約半分の時間で採用できるのですね!内定を出せるタイミングも、かなり早くなりますね。引く手あまたで競合が激しいデジタル人材をできるだけスムーズに霞が関に招く仕組みを整備されたことがよく分かりました!
ところで、この見直しはデジタル人材に限った話ですか?

佐藤さん・齊藤さん:いえ、デジタル人材のような特に高度な専門性を持つ人材のみならず、専門性をもってご活躍いただく「一般任期付職員」を本府省で採用する場合についても、同じように見直したところです(※)。これらの措置によって、令和3年度の実績で考えると、各府省限りで任期付職員の採用が可能となる範囲は98.6%になります。
※課長級以下への採用について、人事院による事前審査を不要とした

ソトナカ:つまり、ほぼ全てのケースで、各府省がこれまでよりも機動的に採用できるというわけですね!一方で、人事院による事前審査をなくしたことによって、事前審査で確認していたことが確認できなくなるとか、なにか問題が生じる懸念はないのですか?

佐藤さん・齊藤さん:そこは心配していません。そもそも事前審査では、公正な任用であるかどうかを確認していました。今般、この公正性についての基準を予めしっかり示して、それをクリアするのであれば、事前審査を不要としたというわけです。また、事前審査不要とするといっても、人事院が内容を全く見ないわけでは当然なく、事後(採用後)にきちんとチェックします。こうしたことによって、今後もきちんと公正性が確保された採用が行われると思っています。

ソトナカ:ありがとうございます。ぜひ、これからも各府省を強力に支援していただきたいと思います!

より柔軟な官民人事交流を目指して

ソトナカ:ところで、話が変わりますが「官民人事交流」についても伺いたいと思います。公務が民間から人を受け入れる際の基準についても緩和されると聞きました。

人材局の鈴谷さん。官民人事交流を担当。

鈴谷さん:はい。官民人事交流とは、民間と公務との相互理解を深めたり、民間・公務双方の組織の活性化と人材の育成を目的とする制度です。制度創設当初は10人程度だった民間からの派遣人数も、今や300人ほどまでになっています。
企業によっては、許認可の権限などを持つ省庁に派遣いただくこともあります。その場合、これまでは、同じ局(※ソトナカ注:民間でいう事業部門のようなもの)への派遣は「1回あたり原則3年以内」で「連続3回」が限度でした。このたび、同じ局であっても、別の課への派遣であれば「連続」と捉えないこととして、より柔軟な交流ができるようにしました。

ソトナカ:なんと、300人もいるのですね!それだけ、公務でも民間のかたが持つ知見にニーズがあるということなのでしょうね。今回の措置は、活躍の舞台を変えながら、民間の知見を存分に活かしてもらうことにつながるものだと思いました!官と民での交流がこれからますます進んでいってほしいですね。

民間人材採用のこれからについて

ソトナカ:最後に、民間人材の採用全般をめぐる状況について、担当者としてお感じのことがあればぜひ教えてください。

鈴谷さん:組織としての見解ではなく個人的な意見ですが、ソトナカさんのnoteも読みながら思ったのは、いわゆるオンボーディングには課題があるということです。
民間から公務に来ていただくに当たり、受け入れる公務側は、その方々が分からないこと・分かることは何なのかとか、どういう仕事をお任せしたらよいのかといったことが、分かりにくいのだろうなと思います。それは、当然ながら、基本的に役所の中で経験を積んできたからです。
役人こそ、例えば民間企業で勤務をして、そこで自らが異分子として苦労する経験・自らがサポートされる経験をすると、公務のオンボーディングに生きてくるのかなと思います。例えるなら、留学生を受け入れたいと考えるときに、留学したことない人だけで考えているような状況というのもどうなのかな、ということです(笑)。民間の方を受け入れやすくするためには、むしろ公務から民間に行ってみることを推進していくことが重要かなと思っています。

齊藤さん:今、経験者採用試験を担当しています。担当者として思うのは、公務で働くための様々な採用の枠組み(※)があることについて、やや知名度に欠けているということです。今は、「国家公務員になりませんか?」というPRをしていますが、特に専門性を磨いてきたような応募者のかたは、「民間ありき」とか「公務ありき」といった探し方ではなく、自分の専門性を生かせる場所はどこか?という視点で職を探していると思いますので、もう少しその点に配意したPRをしていければと考えています。「このようなジョブがありますよ、それは、新卒で採用試験を受けて採用された人が就くほか、このような試験や選考を経て取り組むこともできますよ」といったような具合です。
一方で、新卒採用者と同じように任期の定めがないポストについては、良い意味で、様々な点において新卒採用者と同じ扱いをしていくことも必要だと思います。そのなかで、バックグラウンドの違い、視点の違いを生かして活躍していただけたらと思います。
このように、活躍の形と、それに合わせた採用の枠組みがあるのですが、このことについての説明・周知がまだまだ足りないと思います。どうしても「経験者採用試験とはこういうもので~」といったような、制度の視点での説明になりがちなので、今後のPRで工夫していきたいと思っています。
※様々な採用の枠組みについてはこちら


人材局の皆さん、大変丁寧な対応、ありがとうございました!
後編では、給与局の皆さんを中心に、お話を伺います!


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