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「然もありなん」な話

 偶然の話。必然の話。いや「然もありなん」な話。これまで数多なる偶然に遭遇しているのは皆様同様だが、その中でも忘れがたいものをひとつご紹介。大学を休学し、一年ばかりイギリスに語学留学していた時の話。あっと言う間に時は過ぎ去り、イギリスで出会った欧州の友人を訪ねる旅に出ることにした。

 フィレンツェの駅で友人を待っていた時のこと。なんだか見覚えのある日本人の二人組が手を振っている。よく見たら大学の友人である。イギリスに私がいることくらいしか知らないはずなのに、なぜかイタリアでばったり。もちろん、旅行のことは知らせていない。イギリスで出会すならまだしもイタリアである。

 驚いたのは「いやー、会えるかもしれないとは思っていたんだよね」と平然と放たれた友人の言葉。頭の中が「?」だらけである。なぜそういう思考になるのか考えがまったく及ばない。「狐につままれた」とはこういう状態を指すのだろう。場面の記憶こそ朧げだが、二人組の姿ははっきりと覚えている。

 これほどまでではないものの、数多くのどうにも説明できない偶然に遭遇している。様々な書物を読み漁ったもののこれといった答えは見つからず、今は「然もありなん」ということに収まっている。要は "Anything can happen" なのである。人知が及ばないものの方が比較にならないくらい多いのである。

 パラレルワールドなる考えがあるが、こういった現象に遭遇する時は、まるで別次元から飛び出してきているような様相なのである。「こころ」という不可思議なものが作用しているのは間違いないとは思うが「こころ」同様、どうにも説明がつかないところに導かれるのである。まあ「今ここ」も同じ様なものだが。