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ソメジョと妄想デート(第2話)〜僕の初恋、flyaway〜

皆さん、こんにちは。「ソメジョと妄想デート」へようこそ。ソープールの編集スタッフほそみが、かわいい女の子たちを連れ出して、妄想染めデートをしまくる本企画。「妄想染めデート」ってなに?という方もひとまず、ご覧くださいませ。


(第2話)僕の初恋、flyaway

僕には、物心ついた頃から変わらず、だいすきなひとがいる。


家族ぐるみで仲がよく、兄弟みたいに育ってきた彼女。


いわゆる幼なじみというやつだ。


僕の初恋はもちろん彼女で、彼女の初恋は僕の兄だった。



それから彼女はいくつかの恋をしたが、僕は今もただ一人、彼女だけを思い続けている。


だけど、ひと言も自分の気持ちを打ち明けたことはない。

大人になった僕らは、今でもちょくちょく遊びに出かける。

そのほとんどの誘いは僕からで、クラフト好きの彼女が惹かれそうなイベントを探しては誘い、会う口実をつくり続けている。

そんな今日は、雑司ヶ谷の鬼子母神堂で開催される手創り市にやってきた。



到着して早々、駄菓子屋を見つけた彼女は、夏の暑さに耐えきれずラムネを買った。


「全然、開かないんだけど!」と、

2本の指で開けようとする彼女がかわいくてたまらない。



「何、自分だけ飲んでんの!?ずるい!開けてよ」

と不機嫌になる彼女もまた、かわいすぎてどうにかなりそうだ。

そんな気持ちをうっかり顔に出さないように
いつも通り、呆れた顔をしてラムネを受け取った。


ラムネの栓が開くと、コロッと表情を変え「撮って」と写真のおねだり。

こんな無邪気で、素直でチャーミングな彼女に心を奪われ続けて、
気がつけば27歳。


いつまで、幼なじみを続けるのだろう…。



そんな僕の気も知れず、手創り市を楽しむ彼女。足を止めたのは藍染ブースだ。


そこには、Tシャツやストール、ハンカチ、ポーチ、コースターなど、美しい藍色を纏ったアイテムが並んでいた。

彼女はハンカチが気に入ったようだ。

店主が「このハンカチはスカーフとしてもお使いいただけますよ」と教えてくれた。

店主からスカーフの作り方を教わる彼女。


実際に首に巻くと、ワンピースのアクセントになり、とてもすてきだ。

店主は
「ハンカチの柄は12種類あるのですが、このドットボーダー柄は、折りたたんだ時も柄がキレイ出るので、スカーフにもぴったりなんですよ。すごくお似合いです」

と彼女を褒めた。


さらにご機嫌になった彼女は
「はい、これください!」とイタヅラな顔で僕におねだりをする。


喜んでくれるのなら、買わない理由なんてない。


「まったく」といつもの呆れたフリをしてお願いを引き受けた。


「やさしい彼氏さんですね」と店主が微笑む。

「カップルに見られてたんだね、ウケる」と笑う彼女に合わせて

「だね」と僕も笑った。






たまに考える。



もし、勇気を出して想いを打ち明けたらどうなるんだろう。



一度言葉にしてしまうと、もう元の関係には戻れなくなるのだろうか。





だけど、だけどもし、恋人になれたなら…


彼女「このケーキすごくおいしい!」

僕「へー、よかったね」

彼女「ひと口食べる?」

僕「え、」

彼女「はい、あーん」


僕「////」


なんてことになったり…


僕「クリームついてるよ」

彼女「え、とってとって?」

僕「////////」

とお願いされたりするかもしれない…。






待てよ。




恋人ということは、手を握ってもよいことになる。


…こんな感じか?




いや、こうか?



…分からない。

逆にこういうパターン…、ありかもしれない。


////////////////……。



ハッ!


いけない、いけない。

僕が妄想をしている間に、彼女は別のブースに移動して竹トンボを買っていた。


竹トンボ職人から、飛ばし方のコツを学んでいるようだ。


どうやら、なかなか難しいらしい。



すると、竹トンボ職人が話しはじめた。


竹トンボを飛ばすのは簡単じゃないよ。
どこに飛ぶかも分からない、
浮いたり、沈んだりしてね、
上手にコントロールするのが難しいんだ。
だけど、そこが面白いね。
恋と、おんなじだね。



竹トンボ職人の言葉が、妙に胸に沁みて痛む。



まさに、その通りだと思った。


僕の側で無邪気に笑う彼女をみると、
同じ気持ちなのじゃないかと期待してしまう。


だけど、

彼女が想いを寄せる相手はいつも僕ではない誰かで、

その誰かの言動に一喜一憂する姿を見るたびに、

現実を突きつけられ、胸がキュンと痛んだ。



「俺にしとけよ」



と、言わんばかりの眼差しをこれまで何度送ったことだろう。


だけど、当然伝わることはなかった。


想いは言葉にしなければ、伝わらないのだ。


根性無しの自分に嫌気がさす。


彼女にとって僕は「うん、うん」と相槌を打つだけの、やさしい幼なじみ…。



もう、自分の気持ちにフタをするのは、やめにしたい。



帰り道、先ほど買った竹トンボを飛ばすために公園に立ち寄った。


僕はここで想いを伝えることに決めた。



「あのさ…」


『ん?なに?』



「あのさ、実は…ずっと、ずっと…」




トゥンク トゥンク トゥンク トゥンク トゥンク…



「ずっと、好きだったんだ!

物心ついた時から、ずっと」


彼女は静かに僕を見つめ、少し悲しそうに微笑んだ。



『ありがとう。

そうじゃないかと思った頃もあったんだ。


でも、何年経っても何も言って来ないから、


私の勘違いだと思ってた…』



トゥンク トゥンク トゥンク トゥンク トゥンク トゥンク…



『いつも私のわがままに付き合ってくれて、

話聞いてくれて、

やさしくしてくれて、感謝してる。


ありがとう。


私、大好きだよ』



ドゥンク ドゥンク ドゥンク ドゥンク ドゥンク ドゥンク ドゥンク ドゥンク ドゥンク



鼓動が強く、早くなる。



「じゃ、じゃあ僕たち、つっ」
でもっ


僕の言葉は遮られた。


そして、



「どうしようもないくらい、ルックスがタイプじゃないの」


彼女の言葉とともに、

竹トンボが ふわり と空へ舞う。



僕は空に舞うそれを、目で追った。





そうか…、そうだったか…。




逆に、清々しいじゃない…。



あぁ、竹トンボ、君は一体どこへゆく?



僕も一緒に連れてっておくれよ。



27歳の夏、

僕の初恋はぐるぐると回る竹トンボとともに、

はるか彼方へと姿を消したのだった。



トゥンク トゥンク トゥンク    トゥンク      トゥンク            トゥンク                    トゥンク                              トゥンク         

 ……………ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。


Fin.


今回のデートのお相手は…

笑顔がチャーミングな、あやぬぅ。オシャレが大好き!イケメン大好き!な女の子です。今度、イケメン探しに、一緒に出かけませんか?ご協力、ありがとうございました!

登場ブランド mono-ai

伝統的な型染めと藍染の技法で染めあげた布を使って、ステキなアイテムをたくさん作っています。ぜひ、チェックしてみてください。

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最後まで、ご覧いただきありがとうございます。皆さんもぜひ、染めデートをしてみてはいかがでしょう。まだまだ妄想デートは続きます。

次回、妄想染めデート(第3話)タイトル未定は10月公開予定!お楽しみに!

(第1話)ロックンロールになりきれない僕


〈書いたひと〉
ほそみ

デザイン会社STUDIO UNIで働くコピーライター。チャン・ヒョクが好き。

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