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社会人による運転免許の取り方、あるいは届出校と認定校の使い分けについて。

TL;DR

地方移住を決めて自動車免許が必要になり、免許を取得しました。
自動車免許の取得には公安委員会が管轄する運転免許試験場に出向いて適性試験、学科試験、実技試験をパスするいわゆる一発試験と、ドライビングスクールに通って取得する通常の二つのパスが存在します。

リモートワークが普及し、地方がクローズアップされる中でこれまで縁のなかった自動車免許を取りたいという方は私以外にもいるのかも知れません。
そんな方のために、記録を残してみます。

結論から言えば、
しっかりと運転技術と知識を習得したい人には通常のドライビングスクール、認定校を通じた取得をおすすめします。
時短で取りたい方には届出校サポートによる一発試験もおすすめしますが、どのようにしてリスクヘッジや運転技術の向上を行うかの考慮が必要になります。
それぞれの状況に応じた免許取得をおすすめします。

経緯

私自身は東京で一発試験による合格を目指した後、本免実技の路上はパスしたのですが、最後の縦列駐車でポールに接触してしまい失格。
運転免許試験場での受験は待ちが長く、結果として移住先で仮免許から再取得することになったのですが試験コースへの習熟難や運転技術の不備を自覚して改めてドライビングスクールに入り直し免許を取得しました。

時間と金銭では大いに遠回りをしたのですが、おかげで両方の免許取得パスを経験することができ、両方のメリットを享受することができたと思っています。
なかなか得る機会のない情報だと思い、どなたかの参考になればとここにまとめておこうと思います。

東京都公安委員会による試験免状

認定校と届出校

一般に自動車教習所、ドライビングスクールと言われている事業者は公安委員会より認定を受けた「認定校」です。
認定校は公安委員会の管轄下にあり、認定されたスタッフが実技試験を行って仮免許、本免許の実技までを認定校で発行することができます。
ちなみに免許取得には二段階あり、最初は路上で練習するための仮免許の取得を目指し、次に本来の免許を取得するための本免許試験の通過を目指すことになります。
免許は認定校をパスして最後の学科と適性のみを公安委員会の運転免許試験場で済ませる通常のパスと、一発試験と呼ばれる、運転免許試験場での試験をパスして取得するパスの二つが存在します。
世間一般で免許取得といえば前者です。

届出校

届出校は一般に知られるドライビングスクールとは違い、免許取得者が自力で公安委員会の運転免許試験場で仮免試験、本免試験を通じて免許を取得する活動を支援する学校のことです。
言い換えれば届出校でなくとも、例えば十分に練習できる敷地やトレーナーを確保していれば、それで事足ります。
届出校は免許取得を目的とした技術訓練をしてくれる事業者ともいえます。
運転免許試験場のコースを借りて仮免実技の練習をすることもでき、また本免実技の流れやコースもわかった上で、それを想定した訓練と合格サポートを与えてくれます。

費用は東京で 20万円程度、認定校の 2/3 程度の金額になります。
金額より有り難いのは時短でしょう。
学科の強制受講が無いため、20時間以上の拘束時間を節約することができます。

試験は地域の公安委員会の運転免許試験場で仮免、本免に対して学科と実技がそれぞれ二回づつあり、最低でも計四回の受験が必要になります。
東京であれば府中か鮫洲の半日で済みますが、私の住む福岡市では実技試験は筑豊運転免許試験が最寄りになり、移動と受験でほぼ一日が消えます。
公安委員会による実技試験は公正なものですが、性格としては路上で運転してはいけない人を弾くための落とすのが仕事である試験と言えます。
そのため一度の受験で本免実技を通るとは思わず、何度かの受験を想定しておく方が妥当な見積もりになるでしょう。

私が免許試験を行っていた頃はコロナ期間でもあり、待ち時間の影響もありました。
実技試験の予約取得が難しく、鮫洲試験場であれば二ヶ月待ちが当たり前になります。
試験場の異動には手続きが必要なので空いている方で、とはなりません。
もし一発試験を目指す場合は運転免許試験場に電話を入れて、混み具合を確認するのがよいと思います。

届出校で免許を取得する場合、学科は自習になります。
実技はコース貸し出しを行っている、東京であれば杉並かさいたまの教習所に送迎して貰うことになります。
また土日に一般開放されている運転免許試験場を使って練習することもできます。

届出校ですが、東京ではそこそこあるものの、地方ではマイナーです。
私も福岡への移転後に調べてみましたが、運転免許試験場までが遠いことに加え、適当な届出校を見つけることが出来ませんでした。
運転免許試験場へのアクセスがよい東京では届出校と一発試験はそれなりに使われているようです。
特に芸能人のような平日土日の境目がなく時間制約がある職種に人気があるようで、どの芸能人がいま練習しているといった話を届出校の講師からよく聞いてしました。

認定校

認定校は公安委員会により認定され指導管轄を受けている自動車教習校であり、その学校自体が認定講師を抱えていて仮免許、また本免許の実技試験までを代行することができます。
一般に想像されるドライビングスクールはこちらの方です。
料金は 30万前後になります。

届出校と違い、認定校では学科も決められた時間数を受講する必要があります。
基本は来校して現地で受けることになりますが、コロナ影響でリモートの学科受講を認めるところも出てきています。
ただし顔認証があったり、受講中は常にカメラをオンにして、給水すら認められない厳し目なものです。
ただ内職ができるかできないかで言えば… お察しください。

学科も密度は薄いのですが、内容の必然性は感じます。
紆余曲折あって「最短で免許取得」から「免許取得後の無事故」をターゲットに切り替えたのですが、学科受講に意味はあったと感じています。
届出校一発試験と認定校では交通安全やルールに対してこの辺りで差が出ると思っています。

また実技指導も丁寧です。
認定校での実技指導はステップごとに細かな課題設定が行われており、講師の指導レベルの均質化も意識されています。

ドライビングスクールといえば講師の質がひどい、怒鳴る、パワハラ行使するといったイメージがありますが、私の場合はむしろ届出校でその手の講師に当たることが多く、逆に福岡の認定校では一貫して丁寧な対応を受けることができました。

届出校か認定校か

あくまで私個人の経験からいえば、まず認定校の検討をおすすめします。
認定校のカリキュラム自体が安全運転に向けて整備されており、認定校の方が取得後に備えた運転を学べると感じます。
免許を取るのは良いのですが、万が一事故を起こすとそのダメージは図りきれないものになります。
事故率を下げるという意味では認定校の方が安定した指導が期待できると思います。

届出校の利用の方がレアケースだと思い、もう少し書いて置こうと思います。

届出校のアドバンテージ

届出校のアドバンテージは何と言っても時短です。
まず学科受講が不要になり、学科試験アプリで自習して自分でスケジュールを決めて鮫洲か府中にある運転免許試験場に受験に向かいます。
学科で半日、実技で半日、それぞれ仮免許取得と本免許取得で出向く必要があり、最低で四回試験場に通うことになります。
煩雑ではあるのですが、学科が不要になるので時短になります。
実技練習の内容も技能試験通過に向けて絞り込まれており、多少コンパクトになっています。

仮免許取得までの練習は土日の試験場コース一般開放を使うか、杉並区やさいたまにある貸出コースを使います。
移動時間については届出校ごとに送迎ポイントが決められているので、アクセスに必要な時間を見ておくと良いでしょう。
運転免許試験場や貸出コースの方が近い人は現地集合も可能です。

費用は認定校に比べて 30% 程度安いのではないかと思います。
ただ後述しますが免許の取得可否で自己に委ねられる部分が大きくなるのでリスク分の割引と思ったほうがよいでしょう。

届出校のディスアドバンテージ

一番は安定性の問題です。
指導については講師に委ねられている部分が多いと感じました。
人によって左折やクランクの指示が変わってきます。
また車体感覚を得るのも、試験通過がゴールであるため縦列駐車や後退進路転換を目印で覚えるよう指導されましたが、ある程度 WHY を説明しながら指導してくれる認定校の方が、実際に自分で運転する上では困ることのない指導であると感じました。
高速道路の教習も、指定認定関係なくスクールごとの違いもありそうですが、シミュレータで完了してしまうため免許取得した後に実際に高速に乗れるのか不安が残ります。

背景には、認定校は自校で技能試験を行うことができ公安の管理も強いため指導内容が整理されているのに対し、指定校は決められた投資時間で技能試験通過を行うことが目的になるため余裕がないと言える事情があると思います。
運転になれた家族がいるなど、免許取得後に練習ができる状況であれば、最短最安で免許取得にチャレンジできる届出校はおすすめできると言えます。

時短についてひとつ、試験場コースの予約は教習生が行うことが多く、電話でしか受け付けていません。
一時間程度リダイヤルを使った獲得合戦が続くのでリダイヤル用のアプリをインストールしてスケジュール確保することになり、苦痛と言えばここが苦痛です。
また免許取得に際して公安委員会が危険予測講習、人命救助などの学習を義務付けており、免許取得の前後に一日使って民間会社の講習を受ける必要もあります。
免許取得の学科実技試験と合わせそれなりに時間は束縛されることになります。

実技試験に違いはあるのか

公安委員会による実技試験を受けたのは東京、認定校経由で学科試験のみ受けたのが福岡と違いがあるため一様に言えませんが、実技試験の厳しさには多少の差を感じます。
フォーマットは同じで、認定校の試験であっても同じ採点用紙、指示になり緊張感があります。
違いは合格率で、公安委員会試験では合格者を見ないことの方が多いくらいでしたが、認定校では私の試験回は 100% 合格でした。
公安委員会での合格率は試験管によっても変わりそうです。
より厳しい採点を行う試験管というのは、伝え聞く話でですが、存在します。
公安委員会としては事故につながるような運転技術が未熟なものを弾くのが試験なので納得できます。
私の場合は二度路上で落ちて三度目に路上をパスしていますが、いまから思えば不合格にされるに足る技能不足があり、落とされてよかったと思っています。
ちなみに試験の往復時に見本運転が見れるのですが、これが極めて上手なドライビングで、モデルと言える運転を見ることができたのは得難い経験になっています。
鮫洲試験場の試験管には受験生に対する応援とプロ意識の高さを感じました。

難易度にも差があります。
指定校であっても試験で使う車と同じ車種をできるだけ試験でも使わせようとしますが、差分が生じます。
私の場合は試験車のアクセルブレーキが柔らかすぎて加速減速が荒くなり減点を受けています。
認定校は一貫して同じ車種、車体が使われていることが多く、個体差以上の差分を感じることはありませんでした。
また試験コースについても公安委員会による試験コースは練習のそれと違う部分があり、初めて走る道路で信号のない横断歩道での歩行者注意などが求められます。
認定校ではこのコースの違いは無く、寸分ズレのない同じコースを走ります。

問題となるのは再試験です。
認定校は比較的早期に再試験を入れることができますが、鮫洲運転免許試験場では 2022年4月頃で二ヶ月待ち、府中では一ヶ月以上の待ちという状況でした。
再試験までに時間を要すると運転は忘れていくため合格率が落ちます。
指定校も、試験当日にコースを走らせてくれたり支援はしてくれるのですが、回数が重なると追加講習の費用が発生することに注意が必要です。
路上よりも厄介なのが縦列駐車で、仮免許を所持していても練習場所が限られるため指導が記憶から抜けてより合格率が下がります。
6ヶ月経過して仮免許が失効すると、仮免許取得からやり直しになります。
再試験の待ち時間については、コロナ対応のため人数が絞られておりそのため待ちが長くなるといった事情があったため、今は緩和されている可能性があります。
運転免許試験場に電話を入れて確認するとよいでしょう。

自分の取得経路を振り返る

最後に個人的な取得経路を振り返っておきたいと思います。

地方移住を決めて指定校で練習をスタートし、本免実技まで進みましたが不合格、
一度目は運転不慣れもあって減点で落とされ、
二度目は交差点右折直後に配送会社のバンが止まっており、右折待ち中にはいなかった作業者が出てきて作業をしており十分な側方間隔が取れず一発アウト、
三度目は路上はパスしたのですが、縦列駐車で既に半年を経由して手順を忘れており、車体感覚も掴めていなかったため為すすべなくポールに当てて不合格でした。

試験までの待ち時間がせいぜい二週間であれば、十分に合格できていたと思います。
二ヶ月待ちになると感覚が落ちるだけでなく二、三回の試行回数で仮免許が失効するため、コロナが大いに影響を与えたと思います。
一発試験は落ちた場合の再試験までのリードタイム、事後練習の計画が必要です。
知人の協力が得られ、練習や運転感覚が学べる境遇の人に向いていると言えます。

ちなみに学科試験の有効期間は一年で期間内であれば仮免許取得は実技からやり直せます。
転居を伴う場合は学科試験の免状を発行して貰い、転居先の公安委員会に引き継ぐことができます。

福岡に移住して仮免から取り直そうとしたのですが、まず運転免許試験場が遠い。
実技試験を受けさせてくれる試験場が筑豊になり、行って帰るのが朝出て夕方前になります。
車種も古く、コースもやたらと広く、運転から遠ざかった感覚で一発で通る気がせず、諦めて認定校を使うことにしました。

認定校のサイトに記載が無いことも多いのですが、仮免許まで取っていると仮免許所持の教習コースが選べる場合があり、時間と費用の節約になります。
運転になれた試験場を走らせてくれる友人がいる場合は一般開放日に練習を繰り返して仮免許取得までしてしまうのもアリだと思います。
仮免の学科と実技は自主練習で十分に通過できます。

認定校に通い始めた後も普通に生活している中で事故に巻き込まれ中断するトラブルがあり、一瞬の軽い事故でも障害が残り、多大な時間と金銭が失われる経験を否応なく味わいました。
事故は生涯もうこれきりにしたいと強く思っています。

事故から回復する頃には在校期限が迫っていたため、有給を使って詰めに詰めて取りました。
その気になれば二週間足らずで本免許の学科と実技のカリキュラムが終わります。
4/19 が二段階目(本免)実技練習の初回、
4/30 が実技試験日、
5/01 には公安委員会の試験場で学科試験を受けて免許交付を受けました。
講習期間中はキャンセル待ちを狙い一日の乗車限度である三時間まで実習を詰め込み、夜はリモートで学科を消化しました。
時間的に最短、最小リスクとなるのはこの認定校を使ってキャンセル待ちも使いスケジュールを詰め込む方法だと思います。
数万円より時間が大事になる社会人であれば、この方法が一番かも知れません。
奇特な友人がいる場合は仮免許の自前取得とも組み合わせられます。

認定校での実習の質も極めてよく、仮免取得後の実習では事故の低減につながる経験と学習を重ねることができました。色々遠回りしましたが後悔はありません。
事故をひとつ起こすだけで数十万円、数十時間とは桁の違う、あるいは時間やお金では交換できない致命的な被害が自他の人生に及ぶというのを自分自身が知ったので良い練習代金を払ったと思っています。

本記事がこれから免許を取る人のお役に立てば幸いです。