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ぼくとブックラボ。

昨日、妻とふたりで久々にBOOK LAB TOKYO(ブックラボ)を訪ねました。

4月から完全在宅ワークになってから、基本は毎日多摩センターに引きこもっていて、都心に出てくるのは週に1回あるかどうか。

その中でも渋谷方面に来るのは月に1〜2回程度に。

そういうわけで、ブックラボに来る機会はめっきり減ってしまったわけですが、9月20日(日)をもって閉店、とあらば閉店前にひと目見に来るしかないですよね。

ぼくの人生はもはやブックラボなくして語れない、と言っても過言ではないので、備忘録をかねて「ぼくとブックラボ」をテーマにnoteをしたためることにします。

ブックラボとの出会い

BOOK LAB TOKYOは、2016年6月にクラウドファンディングで集めた資金で渋谷・道玄坂にオープンしたブックカフェ。

このBOOK LAB TOKYOのオーナーが、mocchiくんことLabit代表(当時)の鶴田浩之くん。

もっちくんとは縁あって懇意にしていたので、彼のSNSを通じてブックラボの存在を知り、8月に初訪問。

電源・Wifi完備なのはもちろんのこと、カフェを併設していること、雰囲気が抜群に良いことから一瞬で気に入ってそれ以来ほぼ毎朝常連さんのように通っていました。コワーキングスペース的な使い方ですね。

当時運営していたオンラインサロンの活動もすべてブックラボでやってましたし、当初は別の拠点でやっていた渋谷の朝活コミュニティ「朝渋」の拠点もブックラボに移しました。

それくらい、完全にブックラボのヘビーユーザーになっていたのです。

え、ぼくがブックラボの経営者に?

そんなある日、もっちくんから

相談があるんですが、電話できませんか?

というメッセージが。なんだろう?と思ってかけてみたら「7枚目の名刺を持ちませんか?」というオシャレなお誘いが。

その日、ちょうどこんな投稿👇をFacebookにしていて、「これだ!」と直感したのだとか。

ざっくり言うと、BOOK LAB TOKYOの赤字額が大きく、このままだとお店を潰すしかない。抜本的な立て直しが必要なので、ブックラボ愛の強い西村にその立て直しを任せたい、ということらしい。

え?ぼくがブックラボの立て直し?

飲食店も書店も完全未経験のぼくが、ブックカフェのターンアラウンドマネージャーやるの?できるの?

という疑問や不安もないわけではなかったですが、それを上回る圧倒的なワクワクがそこにはありました。

そういうわけで、「やりましょう!」の一声でブックラボ再建プロジェクトがスタートしました。

その顛末については、モリジュンヤさんが素晴らしい筆致でインタビュー記事に仕立ててくれています。

記事の中に

「昔から本や文房具が好きで、いずれは自分の書店や文房具店を持ちたいと思っていました。ただ、それは余生を過ごすフェーズでやれたらいいなと思っていたんですが、期せずして機会が目の前に現れた感じですね」

とある通り、自分の書店を持つことは人生の夢の一つだったので、念願かなって嬉しい限りでした。

一方で、期日までに赤字額を大幅に縮小して、黒字化しないとゲームオーバー。閉店です。なかなかのプレッシャーになる中、急ピッチで再建策を進めていきます。

・イベントスペースとしての使い勝手の良さに着目してレンタルスペースの利用を促進(7月→9月でイベントスペースとしてレンタル利用は5倍以上に)

・「メディアとしての書店」として広告媒体として企業とタイアップ

などの取り組みもありましたが、一番の目玉施策は「コミュニティとしてのブックラボの価値」に着目した「マイクロオーナー制度」だったでしょう。

競馬の「一口馬主制度」からヒントを得たもので、コワーキングスペースとして利用し放題・ドリンク飲み放題・に加えて、BOOK LAB OWNER'S CLUB(BLOC)という著者✖️読者✖️書店員が三位一体になってつながって新たな書店を共創できるコミュニティのメンバーとなり、書店の「一口店主」のように店づくりにかかわれるマイクロオーナー制度を開始したのです。

先着100名までは月額10,000円、というそこそこ強気な価格設定にもかかわらず、100人を超える多くの愛ある方がマイクロオーナーに申し込んでくださった結果、ブックラボの黒字化に大きく近づくことができたのです。

あの時、マイクロオーナーになってくださった方々のことは今も忘れませんし、当時コミュニティの立ち上げ・運用を二人三脚でやってくれた最所あさみさんや、ブックラボのスタッフの皆さんには感謝しかないです。

その後、組織の安定化とさらなる成長のために、CEO就任後はじめて社員を採用することになります。

ずばり、コミュニティマネージャーの採用です。

採用媒体でもないnoteで「いったいどんな人が応募してくれるんだろう?」と半信半疑でしたが、ありがたいことに多くの方が応募してくれました。

その中でも異色を放っていて、書類を見た段階で「この人しかいない!!!」と心に決めた人がいました。

キリちゃんこと押切加奈子さんです。

押切さんはぼくのリクルートキャリア時代の先輩の学生時代からの友人で、ぼくのnoteを先輩がFacebookでシェアしてくれたことがきっかけで応募してくれたそう。

押切さんはその当時のことを後にインタビューでこう語られています。

押切:ちょうど私が主催したイベントで出会ったカップルが結婚報告をしてくれて、「人が集まる場所をつくるとか、人と人をつなげることに向いているのかも?」と感じていたんですよね。そんな時、大学の友達が複業研究家の西村創一朗さんの投稿をFacebookでシェアしていて。「BOOK LAB TOKYO」という、渋谷にある本屋兼イベントスペースのコミュニティマネージャーを募集していることを知りました。初めて聞く言葉だったけど、本は嫌いじゃないし、信頼している子のオススメなら大丈夫だろうなと思って。面接で西村さんに「触れ合う人を笑顔にしたい!」「人と人をつなげられる空間をつくりたい!」という熱意を伝えて、その場で採用してもらいました。

その後、店長が退職するなど組織がガタガタしたりしていた中、陰に日向に押切さんが動いてくださったことでいくつもの難局を乗り越えました。もし押切さんがいなければ、間違いなくブックラボは存続できていなかったでしょう。

バイアウトと、バーンアウトと。

そうしてブックラボの業績は一気に改善して、黒字化が見えてきました。

一方で、「その後」のことも考えなくてはいけません。Labit社から経営を切り離して株式会社BOOK LAB TOKYOとしてスピンアウトする方法もなくはないですが、やはり現実的にはシナジーを感じてもらえる他社に事業売却(バイアウト)する方が良さそう。

ということで、BOOK LAB TOKYOの買収に興味を持ってくれそうなところを探さないといけないわけですが、僕が真っ先に思い浮かんだのはBUSINESS INSIDERやlifehackerを運営しているメディアジーンさんでした。

僕が当時BUSINESS INSIDERで連載企画を持たせてもらっていたり、その一環でキャリアイベントに登壇したりしていた中で、「自社でイベントスペースが欲しい」という声を耳にしていたからです。

その後、メディアジーンの今田社長ともっちくんを引き合わせたり、デューデリジェンスを進めるなど、事業売却に向けて着々と話は進んでいきました。

・・・ところが。

2017年の10月下旬頃から徐々にメンタルを崩し、不安と焦燥に駆られて仕事を詰め込みすぎた結果、心身ともに体調を壊してしまい半年近くもの間、ほとんど働けない状態になってしまったのです。

その当時のことはBUSINESS INSIDERでも寄稿させていただきましたが、本当に苦しい半年間でした。

この半年間は、BOOK LAB TOKYOという大好きなお店を存続させるために、メディアジーンさんとの交渉を続ける非常に大切な半年間でもありました。

その間、僕自身全く動けず何の役にも立てなかったことは今でも悔やまれるのですが、関係者のみなさんの尽力もあって、無事に事業譲渡が成立しました。

何も力になれない自分自身にやきもきしつつも、大好きな大好きなブックラボが無事に継続できることになり、心底ホッとしました。

その後、僕の体調も徐々に回復していき、事業譲渡後はアドバイザーとしてかかわりつつ、一ユーザーとして毎日のように利用していました。

今や懐かしい、30歳記念イベントもブックラボでやりましたね。

ブックラボとて、コロナには抗えなかった。

それからかれこれ2年。店長が押切さんから別の方に変わったり、育休中だったスタッフが復帰したり、小さな変化はありつつもお店は安定的に運営されていました。

そんな中やってきたのが、コロナ禍です。

3月から短縮営業、そして4月に緊急事態宣言が出たタイミングで臨時休業。

スタッフの富澤さんが書いたnoteに思わず涙が出そうになったり。

その後、緊急事態宣言が解除されたタイミングで営業を再開するも…

9月20日をもって営業終了の旨が告知されました。

とってもとっても残念ですが、こればかりは仕方がありません。

コロナ禍によって営業自粛を余儀なくされたことに加え、営業再開後も「密」を伴うイベントの開催が困難で、ブックカフェ自体の客足も以前のようには戻らず、売上は激減。

一方で人件費や賃料だけで3桁万円毎月出ていくわけで、先が見通せない中で営業を継続するのは至難の業です。

経営において「損切り」は最も重要な意思決定の一つなので、合理的な判断だと思います。僕が経営者でも同じく「閉じる」決断をすることでしょう。

なので、今回のブックラボ閉店に対して、全くもって不満や不服はないです。

ないですが、やっぱり寂しいのは事実ですね。

「今後は拠点を移し、新しい事業スタートに向けて計画中です」とのことなので、ネクストチャレンジに期待しつつも、ひとまず渋谷・道玄坂のBOOK LAB TOKYOとしてはピリオドを迎えるわけなので、自分自身の備忘録をかねて書き綴ってみました。

ブックラボがなくなっても、ブックラボで生まれたご縁や、ブックラボがあったからこそできたチャレンジは永遠にぼくの中に残り続けます。

・・・ということで、関係者のみなさん、本当におつかれさまでした!そしてブックラボを通じて出会ったみなさま、引き続きよろしくお願いします!

▼昨日、BOOK LAB TOKYO時代に出会った3人と。

追伸:こんな時代だからこそ、リアルビジネスがやりたい。

やっぱりリアルな空間に根ざしたビジネスは尊いよね・・・!

ということで、こんな時代だからこそリアル店舗系ビジネスにチャレンジしたいなーと思ってます。自ら店舗をつくることを見据えつつ、外部人材としてリアル店舗のプロモーションや経営改革をやってみたいという気持ちもあるのでお気軽にお誘いください!笑

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