縊死体 卵 夢野久作

縊死体

会いに来た時の桃割れと振袖姿が、あんまり美し過ぎたので、私は息苦しさに堪えられなくなって、彼女を郊外の××踏切り附近の離れ家に連れ込んだ。そうして驚き怪しんでいる娘を、イキナリ一思いに絞め殺して、やっと重荷を卸したような気持ちになったものである。万一こうでもしなかったら、俺はキチガイになったかも知れないぞ……と思いながら……。

決して恋を恐れているのではない。現実の恋から必然的に生まれる「ある結果」を恐れ合っているからだ……という事までも、透きとおるほどハッキリと三太郎君に理解されて来たのでした。

「オトウサンオトウサンオトウサンオトウサンオトウサン」

卵は三太郎君のミゾオチの処で、大病人のように熱くなっていました。その中から放散する小便のような、腐った魚のようなあたたかい臭気が夜具の中一パイに籠もっています。

……と同時にバッチャリと潰れた音がしたと思うと間もなく、生あたたかい、酸っぱいような小便のにおいがムラムラと顔に迫って来ましたので、三太郎君は、ヨロヨロとあとしざりしながら顔をそむけました。
 空には一面に星が散らばっていました。